JTによるエジプト水タバコ会社の買収
JTが海外での買収を加速させている。ここでは以下の点についてこの買収について考えてみたい。
- JTの海外売上比率
- この買収の影響
○JT、エジプトの水たばこ会社を買収
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/ma.aspx?g=DGXNASDD160IU_16112012TJ0000
***以下、引用***
日本たばこ産業(JT)は16日、エジプトの水たばこ会社、ナハラを買収すると発表した。買収金額は200億円前後とみられる。同国のたばこ市場の3割は水たばこで、中東と北アフリカ地域の需要も多いことから成長が見込めると判断した。水たばこ事業、エジプトでの事業ともにJTでは初めてで、将来は同国で紙巻きたばこも販売する。
水たばこは液体状の糖分などを混ぜた葉たばこを、細長いつぼ状の専用機具で熱しながら煙を吸引する。中東、北アフリカでは現在でも人気が高い。ナハラの国内事業と海外事業を手掛ける2社の株式を保有する持ち株会社のバタタ(ルクセンブルク)から、2012年度中に全株式を取得する。買収資金は手元資金と借り入れでまかなう。今期業績に与える影響は軽微という。ナハラ2社の11年12月期の税抜き売上高は88億円。エジプトのほか中東、北アフリカの85カ国で水たばこを販売し、前期の販売量は紙巻きたばこ240億本に相当する2万4000トン。JTはサウジアラビア、レバノン、アルジェリアなどで紙巻きたばこを販売しているが、エジプトは手つかず。同国の紙巻きたばこ市場は伸びており、ナハラを足がかりにシェア獲得をめざす。JTは今年8月、手巻きたばこなどを製造・販売するベルギーのグリソン社を4億7500万ユーロ(約462億円)で買収したばかり。国内市場が縮小するなか、海外事業の強化を加速する。
***引用、ここまで***
まず、JTの海外売上だが、状況は以下のとおり。
○JT 平成25年3月期 第2四半期決算短信〔IFRS〕(連結)
http://www.jti.co.jp/investors/release/result/pdf/B.S.20121030_J.pdf
***以下、引用***
***引用、ここまで***
業績見込みで通年ベースでいうと、売上2兆円のうち、すでに海外で1兆円、国内は7千億円を割っている。
海外打ち上げが主力の状況がすでにできている。これを加速すべく、各国でのM&Aを進めているうちの1つが今回の買収とみていいだろう。
今回の対象会社は、 エジプトの水たばこ会社、ナハラで、売上が88億円。買収金額は200億円程度、とのこと。上記で海外たばこビジネスの売上高とEBITDAの比率は30%程度なので、これを採用して試算してみると、売上88億円に30%をかけて、約25億円。200億円であれば8年間。
EBITDAはよく使われる比率であるが、ここでおさらいしておくと、Earnings Before Tax, Interest, Deprecaiton and Amortizationの略で税金、利息、償却負担前利益のことで、要するに金融機関への返済原資と近似値である。また、設備産業などで償却負担が重い企業などの場合には、実際の利益よりも業績をよくみせかけられるので使われる。実際には税負担、利息負担は必要なわけで、EBITDA8年分で投資額を回収する計算にはなっているが、実際にはもう少しかかるはず。簡便的に2倍かかるとすると16年間での回収となる。あらたにエジプトで会社を立ち上げ、16年間かけて収支がトントンになっているかというと正直、なんともいえない。まさに時間をカネで買う、というM&Aのメリットを活かしている。
最後に、この買収によるJT全体への営業であるが、対象会社の売上88億円に対して、JTの海外たばこ売上が1兆円あるので、大勢に影響はない。しかし、エジプトやベルギーなどの会社を買収し、シェアをとっていき、売れる場所で売れる体制を構築している。一方で総資産3.6兆円に対し、有利子負債はおよそ3千億円。総資産のうちのれんが1兆円以上あるが、現時点で負債過剰とはいえない。新興国での実績を残し、IFRSの早期適用も視野にいれていることから、各国市場での上場も視野にいれていることだろう。
なお、本件に関するJTからのリリースは以下のとおり。
○当社グループによる大手水たばこ会社の買収について
http://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2012/pdf/20121116_03.pdf
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