本当に役立つ「月次決算データの見方と使い方」

6.仮説の検証

 今度は「仮説」を検証することとなる。「仮説」はあくまでも限られた情報を元に短時間で立案するものであるから、実行するにあたっては検証が必要となる。検証するときに重要なのはよく言われることであるが、なぜを繰り返すことである。ここでも例をあげて考えてみよう。A部門の業績の営業立て直しが急務であるが、それが本当に正しい戦略なのか、担当者にヒアリングをしてみる。

(なぜ1)A部門の売上が昨年と比較して落ちたのはなぜか?
(答え1)売上が減少したうちの7割程度が、甲製品であった。
(なぜ2)なぜ甲製品の売上が落ちたのか?
(答え2)中国メーカーが得意先に入り込み、当社よりも3割程度安く勝負をかけてきたからだ。
(なぜ3)なぜ、当社も甲製品を3割安く販売できないのか?
(答え3)そんなこと聞かないでくださいよ。赤字販売になっちゃうじゃないですか。
(なぜ4)なぜコスト削減ができないのか?
(答え4)勘弁してください。中国の会社に勝てるわけないじゃないですか?
(なぜ5)なぜ中国企業に勝てないのか?
(答え5)それが常識じゃないですか。

 この常識じゃないですか、のように一般論の回答しか出なくなった時点で質問は終わることが多い。一般的にはなぜを5回繰り返すと本当の答えがでてくることが多いとされており、そのためかトヨタでは「なぜなぜ」を5回繰り返す習慣があると聞く。皆さんに必要なことは上記のやりとりを数値で検証することだ。上記の例でいえば、本当に競合会社が30%も安い提案をしているのか、できれば見積書を入手して確認する。これは難しい場合が多いので、例えば他の営業マンにもヒアリングしてみる。こうして裏をとっていく。続いて本当に30%のコスト削減をできないのか、あらゆる手段を講じても不可能なのか、原価計算数値を元にシミュレーションしてみることである。こういった検証を怠ると、担当者の思いこみでビジネスが進んでしまう。この思いこみ排除こそが問題解決手法の目的といっても言い過ぎではないので丁寧に進めてほしい。

 月次決算を組んで、ここまでのレベルまでの分析をしなければ次につながる展開は期待できない。皆さんの会社の月次決算はいかがだろうか?受け身の体制で、数字を集計し、せいぜい前期比較、予算比較での差異を説明しているだけはないだろうか。ここまでの簡単な例でもおわかりになるように、そのスタンスでは「会社の業績をあげる」ことはできない。この後、「会社の業績をあげる」ために月次決算で留意すべき点を説明していくが、問題解決手法についてもう少し説明を追加しておこう。さきほどの例で、結局は中国企業の勢いに負けてしまっているという現象があるということが分かった。ここでいう問題点はどこにあるのだろうか。コスト競争力である。相手が中国企業であろうとなかろうと、コストでライバルに勝てないのが問題である。これが本質的問題といってよいか。まだ不足している。

問題解決策の立案:
 本質的問題とはその裏返しが問題解決策になるようなものであるため、コスト競争力がないというのでは本質的問題というには十分でない。例えばコスト競争力がない製品しかなく、これ以上のコストダウンが無理、ということであればこの企業の本質的問題は、競争力のある製品がない、というのが本質的問題となる。裏を返すと、競争力のある製品を何とかして作る、あるいは他社から仕入れるなどして競争力のある製品を導入することが問題解決策となる。繰り返しになるが、このように限られた情報の中から論理的に導き出されたものが「仮説」である。実際にはこの「仮説」立案と検証を繰り返し、本当にインパクトのある問題解決案を立案することになる。

 次に、具体的に「仮説」を立証していく必要がある。実際にビジネスで上記に関する対応を行うとすれば、競争力のある製品を作る、他社から仕入れるなどではアクションにはつながらないため、より具体的な行動案を作る必要がある。製品であれば、どんな原料をつかうのか、どのような加工をするのか、開発にどれだけ時間がかかるのか、そもそもどんな製品であれば、売れるのか顧客にインタビューするなどして、具体的にどんな製品を作ればウチの売上はあがるだろう、ということをすべて事実に基づいて作り上げる。これが売上をあげるための解決策にかかる仮説である。次は、この仮説を実際に検証する試作品を作ってコストは当初の見通しどおりいきそうか、原料の仕入れは納期通りか、また試作品をテスト販売して意見をモニターしてもらうなどして、当初の仮説が正しかったのか、修正すべき点がなかったのかを検証する。このように仮説を検証して、より詳細により顧客の声や現場のオペレーションも加味して、磨きをかけていき、その結果より詳細な問題解決策を作り上げる。

解決策の実行、見直し:
 このように磨き上げられた解決策を今後は実行していく。いくら磨き上げられていても、実際のビジネスの場面ではすべてが目論見通りいくことなどほとんどない。したがって、この実行フェーズにあたり、当初の目論見と齟齬がないのか、あるとすればどのような点なのか、ということを調べ、調査し、経営者や関係者が異変に気付き、それを修正するためのきっかけをあたえ、見直しをすることをサポートしなければならない。これが月次決算の役割である。

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