IPOを実現するためにするべきこと
では、こういう会社はどうしたら良いかという話ですが、一つはもっと稼ぐということです。10億円あれば十分上場のメリットを生かせるということであれば、10億円以上になるように稼いでいく。あるいは、上場以外の作戦をとる。非上場で頑張って行こうという作戦をとっていく。こういう形になっているのかと思います。
非上場会社の中で、特に日本のマーケットの中で今2億円3億円稼いでいる会社が、この延長線上で10億円稼げるようになるまでには、時間があれば済むというものではありません。正直無理、うちのビジネスではここまでが限界、というビジネスもたくさんあると思います。M&Aをしている会社もあります。利益を稼ぐためにはM&Aをしていく。M&Aの資金がなければ合併、合併で会社が大きくなっていくというケースというのもあると思います。変動が激しい環境の中では、耐力がないとなかなか乗り切っていけませんので、IPOのハードルが高くなっていくということによって合従連衡は増えてきているということは言えると思います。
あるいは、上場しなくても生きていけるような施策というのを取っていく。もう一つ言いますと、これも先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、もうかっていても相続税対策をそれ程する必要がないというビジネスが増えてきている部分があると思います。かつては、もうかっているビジネスはほとんど製造業でしたので、設備投資が多いわけです。お金を借りて、工場のラインを作って、しばらくの間少しずつそれを回収していくというビジネスモデルが多かったわけなので、ビジネスがとても重かったのです。ビジネスが重いというのは、設備投資が多い、固定資産が多い、借入金が多い、そうやらないと成り立たないビジネスモデルだということです。これはビジネスモデルの違いです。
NTTは非常にもうかっています。何十年にも渡って非常にもうかっていて純資産が10兆円ぐらいあります。それでも借り入れをしなければなりません。というのは、それだけ設備投資をしなければならないビジネスであるわけです。あれ程もうかっている会社であったとしても、お金を借りて設備投資を続けていかなければ商売にならない。あれが重いビジネスです。最近のいわゆる起業家、スタートアップビジネスでうまくいっている方のビジネスは、あまり重いビジネスはありません。100億円調達して、どこかに工場を造って、10年ぐらいで回収するというようなことを言っている方はいません。IT系で言えば、利益が出ていても設備がとても軽い。人はたくさんいらっしゃると思いますが、人はバランスシート上、資産には上がってきませんので、とても軽いバランスシートで経営をされているというケースが多いです。ですから、純資産がたくさんある、純資産がたくさんあるということは、要するに過去に稼いできた利益が膨大にあるということですが、純資産が多くあった場合、普通キャッシュがあります。お金があります。
つまり、あまり相続税のことを考える必要がないのです。会社にお金があれば、廃業してしまえば良いわけです。あるいは長いことをかけて、退職金などで株主に還元してあげても良いですし、給料を少し多めにして少しずつ還元するなど、会社にお金さえあれば方法はいくらでもあります。明日までにやれとなると結構厳しいですが、5年間ぐらい計画を立てていくと、やりようはいくらでもあります。
かつては、どうしてこのようなことができずに面倒な上場を選んでいたのかというと、メーカーが多かったので、純資産がとても厚くても、それと同じかそれ以上に借入金があって、固定資産がたくさんあって、それにお金を回さなければいけなかったので、キャッシュがあまりない、そういう会社が多かったのです。会社の価値は大変高いのですが、会社にはお金がない。会社にお金がないので、これをオーナーに還元することもできない。したがって、相続税の負担ができないという形で、上場を選択せざるを得なかったということです。
今は、長い目で相続税のことを考えても、ビジネスがとても軽い会社が多くて、過去に渡ってずっともうかっている会社は、その分キャッシュを持っている会社が多いので、わざわざ上場する必要がなくなってきた、相続税対策のためにわざわざ上場する必要性のある会社が少なくなってきたということは一つあると思います。それが環境の変化です。最低それぐらいは稼いでいかなければいけない、というお話でした。

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