ソフトバンクによるスプリントネクステルの買収への算段
ソフトバンクによるスプリントネクステル(以下、スプリント)の買収については、さまざまな報道がされているが、2012年10月13日現在、すでに報道されているもののうち、以下に記載されているスプリントの発行済み株式の3分の2以上を1兆5千億円で買収する場合のシミュレーションをしてみたい。
これ以外の要素については、今後明らかになるリリースをまってその都度検討をしたい。
**2012年10月15日に正式に買収のリリースがソフトバンクよりあったため、以下加筆**
当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について
http://webcast.softbank.co.jp/ja/pdf/20121015_01/20121015_01.pdf
上記の正式リリースによって明らかになった点は以下のとおりです。
1)投資額が約201億米ドル(約1兆5,709億円)に決定
2)70%の議決権をソフトバンクが持つ
3)スキームが明確になった
4)新役員10名のうち4名はスプリントから出す
これによって、財務分析の結果は変わりませんが、4)については、その他6人はソフトバンクから出すことになるわけなので、完全にソフトバンクが支配することになります。またスキームについては、複雑ですが、基本は諸々の許認可を得るまでの暫定処置でしょうが、上記リリースのP.3にある以下の記載です。
==以下、引用==
新スプリントは、米国持株会社に対して、無償にて、5年間、新スプリントの株式約55百万株を1株当たり5.25米ドルで取得する権利(以下「本ワラント」)を割り当てます。
==引用、ここまで==
この点で、結果としてソフトバンクのどの程度影響があるかについては引き続き状況確認をしていきたいと考えています。
**2012年10月15日加筆ここまで**
ソフトバンクが米携帯3位買収へ 総額1兆円超 顧客9000万規模、日本最大に
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121012/biz12101201100001-n1.htm
まずは今回のターゲットとなるスプリントを財務数値をみていく。昨日(2012年10月12日)に開けなかった以下のスプリントのHPを今日はきちんと見ることができた。
財務情報は上記サイトにあった以下の10-K、2011年12月31日現在のものを確認する。
http://investors.sprint.com/Cache/12818751.PDF?D=&O=PDF&IID=4057219&OSID=9&Y=&T=&FID=12774388
P.70以降に同社の連結決算書が掲載されている。
ざっくり内容を確認すると、以下のとおりである。なお1ドル=80円として簡便的に日本円表示をしておく。
総資産 約500億ドル(4兆円)(有形固定資産約140億ドル、FCCライセンスその他200億ドル)
純資産 約110億ドル(8,800億円)
借入金 約200億ドル(1兆6,000億円)
資本金 約500億ドル(4兆円)
累積損失 約400億ドル(3兆2,000億円)
売上 約330億ドル(2兆6,400億円)
営業利益 約1億ドル(80億円)
その他の費用の内訳として、支払利息10億ドル(800億円)、持分法による投資損失17億ドル(1,360億円)
当期純損失 約30億ドル(2,400億円)(包括利益に含む年金未認識数理計算上の差異含む)
営業CF +約37億ドル(2,960億円)
投資CF ー約34億ドル(2,720億円)
財務CF 約 0億ドル(ー)
現金及び現金同等物約54億ドル(4,320億円)
上記の情報をまとめると、上場するなどして集めた資金4兆円に借入1.6兆円で、設備に約1兆円強、FCCライセンス等2兆円弱を投資。その結果、売上は2兆6千億円の規模になるも、ようやく営業損益がトントンに、支払利息、持分法による投資損失負担が重く、約2,400億円の最終損失となったのが昨年。
フリーキャッシュ・フローはトントン。手元のキャッシュが4千億円以上あるので、本当の目先の資金は当面持つ。
さて、問題はソフトバンクが、これを仮に1兆5千億円で買収しようとした場合だ。この場合、すでにスプリントのキャッシュが4千億円以上あるため、ネットして1兆1千億円の資金が必要である。1兆5千億円で買収した会社に4千億円のキャッシュがあるため、こういった計算をした。
これにスプリントの借入1兆6千億円を加味すると、2兆7千億円。20年間で回収するとしても、年間1千億円のフリー・キャッシュ・フローが必要となる計算。現在はほぼゼロだ。しかし、利息負担を除けばそれで8百億円のキャッシュ・フローが稼げるわけだ。
約2兆円でボーダフォンを買収したときよりは総額は大きくなく、ソフトバンクならやるかもしれない。しかし、市場がそう思わなかったのは、2012年10月13日に1日で2,881円から2,395円まで下げた昨日の株価下落で明らかだ。これは時価に換算すると5,380億円の価値である。
ソフトバンクならやるかもしれない、といったが、ギャンブル的な要素は残る。しかし、これが仮に失敗してもおそらくソフトバンクが倒れることはないだろう。また1兆円くらいはヤフー株の売却等で最悪ひねりだせるからだ。
しかし、もっと考えるなら、スプリントを買収し、業績を上向かせたあたりでIFRS適用とともに海外市場の上場、激しく資金調達をして、一気にこれらを返済してしまう、という手がある。資金調達額次第では新興国の企業もさらに買収可能な範囲となりうる。また、自己資金を調達してスプリントの借入を返済してしまえば、利息負担がなくなる。今このままでも年間800億円程度のCFを稼げる計算になる。
それを狙うためにも国内だけではなく、海外でボーダフォンをみがきあげたような実績が必要とされているのではないだろうか。
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