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経営者が「新しいことを考えろ」と言う会社 経営者が答えを出さず、現場に考えさせることの危うさ

経営者が「新しいことを考えろ」と言う会社

経営者が答えを出さず、現場に考えさせることの危うさ

 

「新しいことに取り組まなければ、世の中についていけない」

これは間違いではありません。AIを含め、環境が変化している以上、企業も変わり続ける必要があります。

しかし、ここで極端になると、かえって会社は動けなくなります。AIを導入する、新規事業を始める、業務を変革する。そうした活動自体が目的になり、何のために行うのかが曖昧になるからです。

特に問題なのは、経営者が現場に対して「新しいことを考えろ」と指示することです。

現場は、顧客や業務に近い立場にあります。現場から改善案や新しいアイデアが出てくることはあります。しかし、会社として何を目指すのか、どの制約条件を受け入れるのか、どのリスクを取るのかを決めるのは経営者の役割です。

経営者が答えを出さないまま、現場に「考えろ」と迫る。これは、経営者が担うべき判断を現場に外注している状態です。

本来の役割分担は明確です。

経営者が目的と方向性を示し、現場が実行可能な選択肢を出す。経営者が決め、現場が実践する。そして、現場から結果が返ってきたら、経営者が判断を更新する。

この循環が経営です。

ところが、経営者が答えを持っていない状態で現場に発破をかけると、現場は成果ではなく、活動を示すようになります。「調査しました」「議論しました」「計画を作りました」というレポートが増えていく。

外部のコンサルティング会社に依頼すれば、見栄えのよい報告書と第三者のお墨付きまで得られます。しかし、肝心の「何を決めるのか」「誰が責任を負うのか」は残ったままです。

レポート作成には時間がかかります。会議も増えます。忙しく働いている印象は出ます。しかし、決めていない以上、会社の状況は変わりません。「やった感」が、経営の代わりになっているだけです。

さらに危険なのは、活動しているように見せても業績が上がらない場合です。目標未達を認められない組織では、次第にKPIの操作、進捗の粉飾、数字の付け替えが始まる可能性があります。

不正会計は、個人の倫理観や内部統制の問題として語られがちです。もちろん、それらは重要です。しかし、その前段階には、経営者が答えを出さず、現場に実行だけを求める構造があるのではないでしょうか。

答えがないこと自体は問題ではありません。経営において、最初から確実な答えが存在することは少ないからです。

問題は、答えがないまま決めないことです。

経営者は、現時点で持っている情報に基づいて仮説を立て、目的、制約条件、選択肢、撤退条件を明らかにしたうえで決めなければなりません。決めた結果が間違っていれば、修正すればよい。

現場に必要なのは、「何か新しいことを考えろ」という曖昧な指示ではありません。経営者が示した判断を理解し、実践し、結果を返すことです。

AI時代に必要なのは、AIを使うことそのものではありません。何のために使うのか、どこまで試すのか、いつやめるのかを決める判断OSです。

経営者が決める。現場が実践する。結果をもとに、経営者がまた決める。

この役割分担が崩れたとき、レポートや会議が増え、「やった感」が組織を覆います。そしてその先には、経営の失敗を数字で隠す誘惑が待っています。

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