M&A News

M&Aニュース

日本のMBOに日本のファンドが少ない理由 問題は人材ではなく、資本の規模にある

日本のMBOに日本のファンドが少ない理由

問題は人材ではなく、資本の規模にある

 

光通信とMBKパートナーズ、NECキャピタルソリューション系ファンドは、レオパレス21の非公開化に向けたTOBを開始しました。買収総額は最大2,676億円、TOB価格は1株1,000円です。

光通信の出資比率は34%、MBKとNECキャピタルソリューション系ファンドがそれぞれ33%を出資します。日本企業と日本に関係の深いプレーヤーが組み合わさった案件です。

日本のMBOでは、外資系ファンドの存在感が大きくなっています。しかし、実際に案件を発掘し、経営陣と交渉し、買収後の企業経営を支援しているのは、日本人であることが多い。Exit先も、日本企業であるケースが少なくありません。

そう考えると、日本のMBOに外資系ファンドが多く参加する理由を、人材不足や日本企業への理解不足だけで説明することはできません。

大きな要因は、そもそものファンドの資産規模、そして資金調達力の違いにあるのではないでしょうか。

外資系ファンドと日本系ファンドの資金規模

MBKパートナーズは、韓国、日本、中国に投資対象を集中させるアジア系の大手ファンドです。運用資産は約330億ドルとされています。1ドル150円で単純換算すれば、およそ5兆円規模です。

ベイン・キャピタルについては、2025年にアジア向けで105億ドルのファンドを調達し、日本の中堅企業向けにも20億ドル規模のファンドを設けたと報じられています。グループ全体の運用資産は約2,250億ドルとされています。

これに対し、日本系ファンドも決して小さいわけではありません。ポラリス・キャピタル・グループの第五号ファンドは、組合出資総額が1,500億円です。インテグラルについては、第四号ファンドが1,238億円、ファンドシリーズ全体では約2,500億円の出資約束金額とされています。

もちろん、これらの数字は完全に同じ基準ではありません。外資系についてはグループ全体の運用資産やアジア向けファンドの調達額、日本系については特定ファンドの出資総額が含まれています。

それでも、代表的な数字を並べるだけで、外資系ファンドの資本調達力が日本系ファンドを大きく上回っていることは分かります。

2,000億円規模の案件で差が出る

レオパレス21の買収総額は最大2,676億円です。

この規模の案件では、買収価格だけでなく、買収後の追加投資、借入金の返済、事業再編に伴う費用も必要になります。実際に必要な資金は、TOB価格を上回ります。

仮に1,000億円台のファンドが2,000億円を超える案件に取り組めば、一つの案件に資金が集中します。複数の投資先に分散することも難しくなります。

一方、数千億円から数兆円規模の資金を運用するファンドであれば、2,000億円規模の案件でも、ポートフォリオの一部として扱うことができます。

大型案件では、案件を見る目や経営支援力だけでなく、どれだけの資金を継続的に集めているかが、入札への参加可能性を決めます。

日本人の人材は外資系ファンドにいる

日本のファンド産業について、投資人材の不足を指摘することがあります。しかし、これは本質ではありません。

外資系ファンドの日本チームには、日本企業の経営や金融に詳しい日本人が多数います。案件の発掘、デューデリジェンス、経営改善、金融機関との交渉、Exit先との調整も、日本人が中心になっていることが多いでしょう。

つまり、日本にMBOを実行する人材がいないのではありません。

その人材が、十分な資金を調達できる外資系ファンドに所属しているのです。

日本人の投資人材が外資系ファンドに集まり、日本企業を買収し、日本企業に売却する。資本の入口だけが海外にあるという構造です。

日本のファンドが大型化しにくい理由

日本系ファンドが大型化しにくい背景には、国内の資金供給者であるLPの問題があります。

日本には、年金、保険会社、金融機関、事業会社など、運用資金そのものは存在します。しかし、それらの資金が日本のPEファンドに十分流れているとはいえません。

ファンド投資では、成功すれば高いリターンを得られますが、失敗したときには、なぜそのファンドに投資したのかという説明責任が発生します。

日本の機関投資家は、

高いリターンは欲しいが、目立つリスクは取りたくない

という行動になりやすい。結果として、実績のある外資系ファンドには資金が集まり、新しい日本系ファンドには資金が集まりにくいという循環が生まれます。

外資系ファンドは、世界中の年金基金、政府系ファンド、大学基金、保険会社から資金を調達できます。日本系ファンドは国内投資家からの調達に依存しやすく、ファンドの規模を一気に拡大しにくい。

ここには、人材ではなく、資本市場の厚みの差があります。

レオパレス21案件が示すもの

今回のレオパレス21案件では、光通信が事業面を担い、MBKとNECキャピタルソリューション系ファンドが資本面を補完しています。

光通信は、レオパレス21が管理する約54万戸の入居者・法人顧客に対して、電気、通信、オフィス商材などを販売する可能性があります。単なる財務投資ではなく、光通信の営業力を組み合わせた案件です。

一方で、最大2,676億円の買収資金を光通信単独で負担するのは容易ではありません。そこで、複数の投資主体を組み合わせています。

この構造は、日本企業に事業シナジーがあり、日本系ファンドにも案件実行力がある場合でも、案件規模が大きくなると、単独ではなく共同投資になりやすいことを示しています。

問題は「外資か日本か」ではない

日本のMBOに外資系ファンドが参加すること自体が問題なのではありません。

外資系ファンドが、日本人の投資人材を使い、日本企業を理解し、日本企業に売却しているのであれば、経済的な活動の多くは日本国内で行われています。

問題は、日本の資金が日本のファンドを通じて、十分に日本企業のMBOへ向かっていないことです。

日本のファンドが外資系ファンドに劣っているのは、案件を見る目や経営支援力ではありません。大きな案件を継続的に引き受けられるだけの資金調達力、つまりファンドの器の大きさで差がついています。

日本人が日本企業を買い、日本企業に売却している。
それでも、その資本の入口を外資系ファンドが握っている。

この構造を変えるには、投資人材の育成だけでは足りません。国内の年金、保険会社、金融機関などが、日本のPEファンドに長期資金を供給し、日本系ファンドが1,000億円、2,000億円規模の資金を継続的に運用できる環境をつくる必要があります。

日本のMBO市場の課題は、人材の不足ではありません。

日本人が持つ案件実行力に見合う資本の器が、まだ十分に育っていないことです。

大原達朗が行うBBT大学での講座
93%が満足と回答したファイナンスドリブンキャンプ
本講座では、短期間でCFO(最高財務責任者)への第1歩を踏み出すことを目指します。大量の決算書に触れ、大量にアウトプットし、大量のフィードバックを通してファイナンスという武器を手に入れられます。ブログでは話せない「ライブ講義」も充実しています。まずは無料説明会を受講してみて下さい。

本誌について
本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。
                                                                                                                                                     
M&A仲介・アドバイザーを事業としたい方・既にされている方へ
セミナー・サービス名詳細金額時間
誰にでもわかるM&A入門セミナー会場開催の詳細とお申込み

オンライン講座の視聴
無料2時間
M&A実務スキル養成講座会場開催の詳細とお申込み

オンライン開催の詳細とお申込み
M&A実務スキルの詳細
198,000円2日間
JMAA認定M&Aアドイザー資格取得およびJMAA会員に入会資格詳細とお申し込み入会金33,000円
月会費11,000円(1年分一括払)
-
案件サポート制度JMAA会員が初めてM&Aアドバイザリー業務に取り組む場合、あるいはすでに何度かアドバイザリー業務に経験があっても、難易度が高い案件の場合のための、JMAA協会が会員に伴走して案件成約に向けて協力する制度です。 お申し込みは当協会ご入会後にお知らせします。JMAA正会員の関与する対象案件の成功報酬の50%-
買収を検討されている企業団体様へ
セミナー・サービス名詳細金額時間
誰にでもわかるM&A入門セミナー会場開催の詳細とお申込み

オンライン講座の視聴
無料2時間
M&A実務スキル養成講座会場開催の詳細とお申込み
オンライン開催の詳細とお申込み

M&A実務スキルの詳細
198,000円2日間
買い手様向けセカンドオピニオンサービスM&Aセカンドオピニオンサービスの詳細 33,000円
追加相談サービス 33,000円/1時間
1時間〜
売却を検討されている企業団体様へ
セミナー・サービス名詳細金額時間
誰にでもわかるM&A入門セミナー会場開催の詳細とお申込み

オンライン講座の視聴
無料2時間
M&A実務スキル養成講座会場開催の詳細とお申込み

オンライン開催の詳細とお申込み

M&A実務スキルの詳細
198,000円2日間
売り手様向けセカンドオピニオンサービスM&Aセカンドオピニオンサービスの詳細 33,000円1時間〜

M&A実務を体系的に学びたい方は、M&A実務スキル養成講座


メルマガ登録はこちら
ファイナンスドリブンキャンプ
生成AIキャンプ

大原達朗の経営リテラシー-自ら考え、行動しよう-