IPOを取るべきか、M&Aで会社売却を選ぶべきか
ですから、IPOはとても良いです。やはり、上場会社はとても良いです。皆さんのイメージとも合っていると思います。信用度も上がります。社長の個人保証も外れます。非上場会社と比較すると、確かに人も採用しやすいです。特に管理部門はとても採用しやすくなります。ですが、IPOは終わりではありません。IPOでは会社は上場会社として続いてしまいます。そこから引退するとなると、自分の株を売るということを考えないといけません。それは、どこかの法人に買ってもらうのか、長いことをかけて一般株主に買ってもらうのか、というようなことも合わせて考えていかないといけません。
ですから、IPOはとても大事ですが、IPO以外で株を第三者に買ってもらう方法とすればM&Aですので、両方ともにらみつつ、良いタイミングで。タイミングが合えばIPOをしたほうが良いと思います。IPOをした後にM&Aをされるというやり方もあります。IPOをして自分の会社が伸びていれば、M&Aでさらに良い会社を買収していくという戦略もあります。IPOをしたけれども、結果としてうまくいかなかったら、M&Aでどこかに売却するという選択肢も常に持っておいていただきたいと思います。どの方法が一番良いかはケース・バイ・ケースです。IPOをしたいということは、とても大事なことだと思いますが、IPOだけを目的とするのは結構危険です。逆に言えば、今回はIPOのセミナーですのでM&Aについては申し上げませんが、M&Aで売却するということだけを考えているというのも本当はもったいないと思います。上場するぐらいの力がもしあれば、両にらみで持っておくべきかなと思います。
今まで、大まかにIPOのメリットとデメリット、コスト負担というところのお話をしました。
これが、先ほどお話をしましたけれども、IPO新規上場の企業の推移です。一番良いときは200件ありました。それが、去年大体50件です。今年も50件ぐらいです。一番ひどいときは19件になっています。10分の1になってしまったというときもあるのですが、これくらいになっています。リーマンショック後というのは、その影響を引きずっていましたが、そこからだいぶ回復しています。東証も1万5000を回復している中でこの推移があまり変わらないわけですので、今後も恐らくこれくらいの推移でいくのかなと思います。この辺は、赤字で上場した会社が結構ありました。ゾンビのような上場会社が結構あります。この辺で上場して、何10億円資金調達した会社というのは結構あります。
そういう会社は、まじめにビジネスをやっても年間に1億円か2億円赤字を垂れ流しているというケースもあります。毎年2億円赤字を垂れ流している会社でも、40億円お金を持っていれば20年持ちます。そんなに単純ではありませんが、それで持っている会社はまだ結構あります。それで息絶えてしまった会社も結構あります。やはり、審査をしているほうの証券市場や証券会社の立場からしても、「あれは上場させたらだめだった」と反省していることは結構ありまして、規制が厳しくなります。審査が厳しくなるという形で、IPOの件数が減ってきているというのは実情です。新規で上場する会社がこれだけ減ってきていますし、合従連衡する会社やつぶれてしまうという会社も多くなっているので、上場の会社の件数というのは減ってきているということです。
IPOをすると、結構良いこともあります。表に出てくるようなこと、先ほどお話を申し上げましたが、社内の管理体制とか、外から見て分かりやすさのようなところは、上場会社のほうが確実に良いです。上場会社の場合は、上場するときに証券会社と証券取引所の審査を受けなければなりませんから、かなり面倒くさいことをやらなければいけません。上場した後も3カ月に1回監査法人の監査を受けて、少なくとも数字面については第三者がああでもない、こうでもないという監督の体制をずっと受けているわけです。やらなければならないことはいくつか決まっていますので、それを面倒くさいけれどやらなければなりません。そのことによって、透明性はかなり上がってくると思います。そういう副次的なメリットも当然あると思います。
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