事業承継について

事業承継を考えるにあたって【第3回】

「事業承継」について3回シリーズで解説をさせていただいていますが、今回がいよいよ最終回となりました。前回までで「事業承継」とは「財産権」、「経営権」そして「人材」を次世代に受け継ぐことであり、単なる「財産権」の承継である相続よりもより厄介なものであること、また、事前準備としてビジネスの整理、帳簿の整理、そして資産・負債の整理が必要なことをご説明しました。最終回の今回は、事業承継に時間がかかる理由、具体的には、自社株の扱い、資金の準備、そして後継者の育成、従業員の理解についてふれていきたいと思います。

 まず、自社株の扱いという点です。これが事業承継の最大の問題といっても過言ではありません。苦労して作り上げてきた皆さんの会社ですが、設立時のことを思い出してください。なけなしの資本金をいれて会社を作られたはずです。そのときの資金が仮に 300 万円だとしましょう。この時点での会社の価値は 300 万円でした。それから長い間、商売、また人脈を、そして会社の財産を作り上げてこられてきたはずです。その結果、本社ビルもお持ちかもしれませんし、会社名義で取引先の株式も持っているかもしれませんし、社用車もあるかもしれません。もちろん、手形や売上債権や仕入債務などいろいろなものがあるはずです。事業承継を考えるにあたっては、まず、皆さんの会社の価値を一定のルールにしたがって計算しなければなりません。そして、会社を後継者に譲るときにその会社の価値によって相続税や贈与税がかかってきます。そのため、事業承継が気になり始めたという方はまず、ご自分の会社の価値がいくらなのか、ということをしっかり算定する必要があります。

 次に資金の準備です。資金が必要になってくるのは、納税=税金を納めるときです。事業承継というのは財産権の譲渡ですから、税金がかかってきます。また、株式を譲り受ける後継者、これはご親族の場合もありますし、場合によっては親族ではない役員、もしくは第三者であるケースもあります。これらの方が株式を買い取るためにも資金が必要になってきます。どれだけよいスキームを考えついたとしても先立つ資金がなければ何も実行できません。金融機関からの借り入れを含め、事業承継に必要な資金をきっちりとシミュレーションし、実際に準備する必要があるのです。

 そして、最大の問題の後継者の育成、社員の理解です。これはそう簡単な問題ではありません。多くの中小企業では社員は社長についていっているのではなく、たとえば今の社長である田中社長という個人を信頼してついていっています。会社を立ち上げた、あるいは中興させたような経営者はある意味でスーパーマンです。

1人で多くのことを同時に処理できる方です。だからこそ社員ががんばってついてきてくれた、とも言えるわけです。後継者もスーパーマンであればよいのですが、そうめぐりあわせのよいケースばかりとは限りません。後継者は大きく分けるとリーダーシップがあってグイグイ社員をひっぱっていけるけれど慎重さが少し欠けるタイプと、慎重だけれどもリーダーシップにかけるタイプの2つのタイプに分かれます。現社長はいずれの後継者候補もなんとなく頼りない部分を感じていらっしゃるのが通常です。それではどうすればよいでしょうか?

この機会に分業を進めてみてはいかがでしょうか。現社長は両者の役割をおひとりでやってこられたかもしれません。しかし、みなそんなスーパーマンではないのです。どちらかを社長に、そしてそれをサポートできる方を副社長もしくは専務として、しばらくの間、できれば5年間くらい会社の方向が定まるまでは、現社長に会長や相談役として後継者を見守っていただきたいのです。そして安心して会社を任せられるようになるまでしっかり会社を見守っていただきたいと思います。そして、従業員の方も安心して後継者を認めることができるような環境を、時間をかけてでもしっかりと作っていただきたいと思います。

 このように事業承継には事前の準備、そしてかなりの時間、お金がかかります。そのスタートはまずご自分の会社の価値をしっかり把握することです。ぜひここからスタートしてみてください。最後になりましたが、これまで3回にわたりご愛読ありがとうございました。皆様の円滑な事業承継に少しでもお役に立てれば光栄です。読者の皆さまの益々のご発展を祈念しております。ありがとうございました。

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