日本のメガバンクの利回り全体像を推計する
メガバンクの業績を簡単に確認しておきたいのですが、ここは簡単にいきます。リストラやM&Aの影響などで業績が変動していますが、そもそも銀行の収益がどの程度、効率的に稼がれているのかを確認するために、各社の経常収益(=売上)を総資産で割った数値を算定してみます。
少し乱暴ですが、金融機関が保有する莫大な資産、このうち多くは私達の預金ですが、これがどんなふうに運用されているか、ある程度想定することができます。
固定資産などは直接、金融投資に向けられているわけではありませんが、これらの金融機関において固定資産はそれほどの金額的重要性はないので、ここはそのあたりを無視して、ざっくりと計算してみます。
以下の決算短信情報をベースに算定してみましょう。
単位:百万円
三菱UFJフィナンシャル・グループ:
24年3月期 経常収益 4,951,095 総資産 218,861,616 2.26%
23年3月期 経常収益 4,528,933 総資産 206,227,081 2.19%
三井住友フィナンシャルグループ:
24年3月期 経常収益 3,945,282 総資産 143,040,672 2.75%
23年3月期 経常収益 3,845,861 総資産 137,803,098 2.79%
みずほフィナンシャルグループ:
24年3月期 経常収益 2,715,674 総資産 165,360,501 1.64%
23年3月期 経常収益 2,716,791 総資産 160,812,006 1.69%
意外と差がでましたが、顧客からあずかっている資産を運用して、利益をあげるのが銀行、金融機関であるとすれば、日本のメガバンクは1.6%から2.8%程度の中でその運用をしていることとなります。
○平成24年3月期決算短信 三菱UFJフィナンシャル・グループ
http://www.mufg.jp/ir/fs/backnumber/2012mufg-mar/pdffile/all1203.pdf
○平成24年3月期決算短信 三井住友フィナンシャルグループ
http://www.smfg.co.jp/investor/financial/latest_statement/2012_3/h2403_1_01.pdf
○平成24年3月期決算短信 みずほフィナンシャルグループ
http://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/tanshin/data1203/pdf/fy.pdf
参考までにゴールドマン・サックスは、以下リンクのP.100、101からデータを拾えます。直近は3.1%に落ち込んでいますが、業務収益、純利益はかなり落ち込んであとの数値です。通常時であれば、やはり最低4%、できれば、それ以上の利回りがゴールドマン・サックスにとっても必要でしょう。いいかえればこれができないとゴールドマン・サックスといえど十分な利益が確保できないということです。
In: million
FY2011
Net revenues, including net interest income 28,811
Total assets 923,225
3.1%
FY2010
Net revenues, including net interest income 39,161
Total assets 911,332
4.2%
FY2009
Net revenues, including net interest income 45,173
○Goldman sachs annual report 2011
では日本のメガバンクの利回りを日本国債の利回りと国債の保有状況をみておきましょう。25年以上の国債ですと、1.8%程度になります。一方で、国債の大半が10年以上の長期で保有されていますから、金融機関の多くは長期の国債を保有しているケースが多いでしょう。
○国債金利情報(平成24年10月4日)
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/jgbcm.htm
○国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成24年6月末現在)
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/2406.html
まとめると、業務収益÷総資産の計算で1.6%前後のみずほは、黙って国債を買っているよりも利回りを稼げていない計算になります。
三菱UFJフィナンシャル・グループは国債を単純に買っているよりは0.4%、三井住友フィナンシャルグループは1%程度、運用利回りで上回っている計算になります。しかし、消費者金融をグループ内に抱え、銀行の本来的な業務であるビジネスへのリスク融資の存在を考えると、この利回りで十分とはいえないでしょう。繰り返しになりますが、ゴールドマンサックスはこの2年間で業務収益が半分くらいに落ち込んでいるにもかかわらず、3%を確保しています。
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