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経営者が知っておくべき事業承継(事業継承)とM&A(2017年8月10日改訂)

 経営者が知っておくべき事業承継(事業継承)とM&Aいうテーマについて説明します。このコンテンツはとても大切なものですので、随時加筆・修正し、最新版を皆様にお伝えします。事業継承という言い方もありますが、事業承継と同じ意味です。一般的には事業承継ということが多いので、事業承継で統一して説明します。

 まず、1つ目ですが、“社長が激しく自覚すること”これが第一です。
現在、日本人の経営者の平均年齢は59歳になろうとしています。59歳というと、大きな病気をしていない経営者であれば、非常に元気であると思います。これから先10年間ぐらいは本人が経営していくことになると多くの方が思われています。
ただし10年たって経営者が70歳になった時に、体調が悪くなってきて急に後継者を探そうとしても難しいわけです。

 みなさんが10年・20年・30年・40年かけて作り上げてきたこと(事業)をたった1年や2年で引き継げるような人は、みなさんの周りにいますでしょうか?
仮にいたとしても、皆さんがこれまで培ってきた技術・経験・人脈というものを1年や2年で引き継げるものでしょうか?そんな簡単ではないです。
それは、経営者の皆さんご自身が良く分かっているはずです。まず後継者候補を見つける。「この人だ!」といった人に対して、キチンと引き継ぎをしていく。この作業はどう考えても1年や2年で終わるような作業では無いはずです。
仮に「10年後に引退しよう」と考えている経営者の方がいたとしても、60歳である今から動いても遅くはありません。
これはタイミングの問題ですので、1年や2年で良い後継者や引き継いでくれる会社が見つかるのであれば、その時に引退する(引退の前倒し)というのも手だと思います。まだ「引退するのには早すぎる」と言うのであれば、10年後に向けてどのような形でその後継者(個人・会社)に引き継ぎをしていくべきかと考えておくべきです。まだ若いからと言って、これから10年間は後継者について考えなくてもよいというのは、考えが浅いと言わざるをえません。
まずは、社長がこのようなことを“激しく自覚すること”が、事業承継を成功させるための第1の事だと思います。

 2点目は、“準備を万端にして頂きたい”ということです。
事業承継は1年から2年では済む問題ではないということです。事業承継というのも様々はパターンが有ります。詳しく説明しますと“親族内承継”と“親族外承継”という2つに分かれます。
親族内承継というのは、その名も通り“親族の中で事業を承継していく”ことです。息子や娘に承継してもらう。過去には、この親族内承継が主流であったのですが、現在では親族内承継はあまり行われておりません。20年前では非常によく行われていたのですが、現在では親族内承継は半分程度になっております。
それだけに“親族外承継”というオプションも考えておかないといけないと思います。

“親族外承継”というのは、要するに娘さんでも息子さんでもない、或いは親戚でもない全く血縁関係のない方に事業を継いでもらうことです。これを一般的にM&Aと呼んでいます。そういう意味では勿論、“従業員の方々に事業(ビジネス)を継いでもらう”というやり方もありますが、それにはいくつか問題が起こる可能性が有ります。一番大きい問題は、“株式を売却する”という形になりますので、従業員の方が“その株式を買うだけのお金が無い”ということです。
また、この問題をクリアしたとしても社長である自分がいなくなった時に、副社長あるいは専務(社長の右腕として支えていた方)が、「社長としてやっていけるのか?」と考えると、首を傾げざるを得ない社長が多いと思います。

番頭・専務・副社長がダメだったら、“親族内承継”を考え「息子・娘で社長をできるやつがいないのか?」と真剣に考えて、相談をする期間も必要だと思います。さらに“親族内承継”がダメだとなり、「従業員もダメだ」となった場合は、“外部の第三者に事業を引き取ってもらうか?”ということを考える必要があります。
第三者もダメであったら、みなさん(社長さん)の代で会社をクローズ(閉鎖)するといったことも考えなければならないかもしれません。
ただし、会社を清算(閉鎖)するといっても、これには多少の時間が掛かります。あとは経営者の皆さんが“自分の会社を清算する”という決断をするのにも、時間が必要だと思います。
親族内でもない従業員でもない“第三者”に対して会社を売るとなると、少し考えただけでもお分かりになると思いますが、時間がかかります。
これは、1年2年で済む問題でないのです。まずは、“準備を万端にしておく”という事を念頭に置いておいて頂ければと思います。

 次に3つ目です。これは一番大事なのですが“親族外承継のマーケットが脆弱なため、汗をかいて相手を探さなければならない”という事です。
事業承継を検討されている経営者の方が、最初は“不動産と同じように”と考えられていることが多いです。例えば不動産の場合、「東京都千代田区に80平米ぐらいのマンションがほしい」といったリクエスト出せば、インターネットで調べても物件が出てくる(見つけることができる)と思います。
 レインズのような不動産業のデータベースを見ただけでも沢山物件があるわけです。よほど条件面を厳しくない限り、現在販売中の物件がいくつかは見つかるはずです。また、この1年2年間の間にどれぐらいの金額で不動産が売れたのかということも、比較的容易に調べることが可能です。
つまり、不動産では簡単に相場を調べることができるのです。しかも、通常は複数の案件を比較することが可能です。
 例えば、「東京都千代田区に80平米ぐらいのマンションを4000万円から7000万円で買いたい」と言ったら、いくつか出てくると思います。値段が高いところもあれば、安いところもある。駅から近いところもあれば、遠いところもある。築年数が浅いところもあれば長いところもあると、こういう物件の中からみなさんは選ぶことができますが、“親族外承継”の場合は、残念なことに“そこまでM&Aマーケットが無い”というのが現状です。

「自分の会社を売りたい」・「こういう事業を買いたい」と考えたとき、それならば“そのような会社がどこにあるのか?”と探して、1つ1つあたっていかなければならない。“親族外承継”のM&Aマーケットは、このような地道な作業が必要な状況なのです。
たまたま運よく、知り合いのツテなどで、苦労することなく事業承継をしてしまった(出来てしまった)というお話を聞くことがあるかも知れませんが、それはむしろ例外のケースだと思われた方がよいということを知っておいてほしいです。
 この”親族外承継“のマーケットというのは、我々M&Aアドバイザーが必死になり作り上げている途中ですが、現時点での現実をお伝えしておくと「不動産のようにきちんとマーケットが出来ているわけではありません。」
まだまだ、皆さんが主体となって信用できるM&Aアドバイザーと一緒に相手(買い手候補先)のリストアップをしてから、個別にあたっていく。
この作業は、本来はアドバイザーが行うことですが、経営者のみなさんのご協力が無ければこのような地道な作業は進みません。そのようなことも、是非自覚しておいて頂きたいと思います。

最後にまとめです。
 1つ目は、“時間がかかる”ということ。

 2つ目は時間がかかるという事を念頭に置いて頂いて、経営者のみなさんが、“激しく自覚をしておいてもらう”こと。

 3つ目は、非常に残念ではありますが、まだまだ“親族外承継を扱うマーケットが小さい”といこと。これらの3つを知っておいて頂き行動に移す・尽力して頂くことだけでも、事業承継の中でも特に“親族外承継”の成功確率が飛躍的に上がってくると思います。

その他、事業承継については、以下にいくつかのコンテンツを準備しています。ご参考にしていただければ幸いです。

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事業承継が進まない理由と解決のために必要な3つのポイント http://ma-japan.info/archives/6202

経済産業省から提示された事業承継ガイドラインからのメッセージは「早くやれ」 http://ma-japan.info/archives/6018

事業承継を経営者はどう考えるべきか http://ma-japan.info/archives/1807

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