7.キャッシュ・フロー計算書を実際に読み解く
では、今度はキャッシュ・フローの計算書の読み方、分析の仕方について説明していきます。キャッシュ・フローの計算書とは一体何なのかということと、どのように読んでいったらいいのかという目標はBSとPLと同様です。
キャッシュ・フロー計算書というのは何なのかというと、損益にとらわれない資金の動き、キャッシュの動きだけを示している表です。PLは、必ずしもお金の流れとは一致していません。一番分かりやすい例で言うと、3月31日決算の会社があったとします。3月31日にものすごい大きな商売があって、1億円の売り上げをしました。物はお客さんに納めました。売り上げは、間違いなく問題なく立てられます。ただし、通常、1億円のビジネスを現金で取引するというケースはあまりないので、お金が入ってくるのは3カ月後ですという状況というのはありがちなわけです。
PLで言うと、3月決算の会社が3月31日に、1億円の売り上げを上げましたから、売上高にその1億円は含まれているわけです。だから、利益にもなっているわけです。ただし、金庫を見ると、まだ1億円は入ってきていないわけなのです。そうすると、会社がつぶれるかつぶれないかというのは、利益が出ているか出ていないかではなくて、お金があるかないかなのです。お金さえあれば、人件費は払えるし、取引先にも対価を支払えるし、税務署にも税金を払えるしということなので、会社はつぶれないのです。会社がつぶれるのかつぶれないのかということを見るためには、お金の流れを見ておかないと、どうしてもいけないだろうということで、大昔は、このキャッシュ・フロー計算書というのはなかったのですけれども、BSとPLだけを見ていると、急につぶれてしまう会社がよく出てきたのです。お金の流れも見ておかないのと危ないよねということで、純粋に資金の流れだけを示す表も別途作ろうじゃないかということで、キャッシュ・フロー計算書というのが出てきました。
キャッシュ・フロー計算書を見るのは、結構簡単で、実際のキャッシュ・フロー計算書を見ると、細かい項目がいっぱいあるのですけれども、要素しては三つしかないのです。営業活動によるキャッシュ・フローと、投資活動によるキャッシュ・フローと、財務活動キャッシュ・フロー、この合計額が要するに、その期間に一体幾らお金が増えたのか、減ったのかということを示しています。
それを三つの大きな区分に分けているだけなのです。これは、世界共通です。ほぼどの国にいっても、この区分になっています。
営業活動によるキャッシュ・フローというのは本業です。本業で、一体お金を幾ら増やせたのか、減らしてしまったのかということを示していますので、ここである程度稼いでないとかなり厳しいわけです。
次に、当然投資活動というのが必要となってきますので設備投資。設備投資というのは、固定資産に対する投資ですけれども、事業投資ということもありますね。子会社をつくっていく。あるいは自分の支援先にお金を入れていくという事業投資もありますけれども、そういったものが、投資活動によるキャッシュ・フローの中に入ってきます。ですから、通常はマイナスなのです。マイナスということは、自分の会社の金庫から出ていったというイメージですから、設備投資をするときには、ゼネコンにお金を払わなければいけない。あるいは事業会社に投資するのであれば、その事業会社にお金を払い込んであげなければいけないということなので、金庫から出ていくイメージなので、投資活動によるキャッシュ・フローというのは通常マイナスです。
望ましくは営業活動によるキャッシュ・フローはプラスでありたいです。本業で預金を少しでも増やしておきたいです。もちろん、調子が悪ければ営業活動によるキャッシュ・フローが赤になることも、マイナスになることもあり得ます。
投資活動によるキャッシュ・フローがプラスになることもあって、例えば、固定資産を売ったと。含み利益のある土地を売りましたということだと、お金が大量に入ってくるので、プラスになる場合もありますし、投資をしていた関連先というのを、どこかの会社に売却をしましたと。あるいはその会社が上場しましたというようなところで、株を売って大幅に、投資活動によるキャッシュ・フローがプラスになることというのがあるわけです。通常は、投資ですから、マイナスです。
最後に財務活動によるキャッシュ・フロー。これは主に株主。特に金融機関との貸し換えです。営業活動によるキャッシュ・フローというのは、当然プラスのほうがいいではないですか、投資活動によるキャッシュ・フローも早々望みませんけれどもプラスになるに越したことはないですね。ただし、財務活動によるキャッシュ・フローは、プラスになればよい、クエスションマークを三つ付けているのですけれども、必ずしもプラスになればいいとは限らないのです。営業活動によるキャッシュ・フローが大幅にプラスになった場合、これは、内訳をきちんと見ていかないと分かりませんが、多くの場合、金融機関からお金を借りているのです。金融機関からお金を借りれば、会社の金庫、あるいは会社の預金帳簿にはお金が増えていくではないですか。財務活動によるキャッシュ・フローで、お金がガーントプラスになっている場合というのは、無理くりしてお金を借りて一時的に、会社の金庫の残高を上げているという可能性があるので、そこは、注意をしたほうがいいかなと思います。営業はプラスで良くて、投資もプラスに越したことはない。財務は必ずしもプラスがいいかというと、そうでもないですので、その点だけ注意をしておいていただけるといいかと思います。
これ、プラスマイナスありますけれども、合計をしてみると、その期間に、一体会社のキャッシュが幾ら増えたのか、減ったのかという金額が出てきますので、それに期首のキャッシュの残高を足すと、当然期末に一体幾らキャッシュが残っているのかということを表現しています。キャッシュ・フローの計算書というのは、これだけなのです。
では、具体的に実際のキャッシュ・フローを比較するときに、どんなやり方なのかは、PLと同じように考えていただければいいのですけれども、営業と投資と財務に分けて数字を入れていってみていただきたいと思うのです。
この数字を入れていって、この2社の具体的な数字で言うと、右側の会社というのは投資活動によるキャッシュ・フローがすごく大きいのです。絶対枠で見ても80に対して280。営業活動によるキャッシュ・フローよりもマイナスですからお金を使っています。では、これ一体どんな投資をしているのだろうかというような内訳に、これを見た後に入っていくと。この違いを把握した後に入っていくと。
財務活動によるキャッシュ・フローは、これはプラスになっているのです。営業活動によってもうけたキャッシュよりも多く使っていますから、足りなくなった可能性があります。逆に、左側の会社というのは、100しか営業活動で稼いでないけれども、設備投資も、そこそこ押さえておいて、財務でマイナスになっていると。お金を返し始めていると見たほうがいいのかなと思います。
というように、この三つの区分を見るだけでも、結構いろいろなことが読み取れると。それで、内訳に入っていていただければいいのかと思います。BSとPLと一緒です。初めからか細かい内容を見ていくと、この項目の意味が分からないから、次の項目にいけない。次のページに進めないというのは、少しもったいないかなと思うのです。
では、どんな部分に注目をしていかなければいけないのかなというのを、項目別にご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローというのは、支店としてはきちんと本業で稼いでいるのかというところを見ていくわけなのですけれども、ここが結構重要なのです。
営業活動によるキャッシュ・フローは内訳がいっぱいありますけれども、よほど、素養のある人以外はキャッシュ・フローを自分で作ったことがあるとか、そういう方以外は、中身を深入りしないほうがいいと思います。あれは、作り手側の都合で、キャッシュ・フロー計算書をどうやって作っているのかというと、キャッシュ・フロー計算書のように会計処理していないのです。BSを使うのです。BSを使ってBSが期首と期末でどれだけ増えたのか減ったのか、この差額をPLに加減算することによってキャッシュ・フローを出しているのです。理論的にこういうお金の流れになっているはずだという、調整をして作っているのですけれども、営業活動によるキャッシュ・フローの内訳というのは、その調整項目なのです。なので、いきなり減価償却かプラスで入ってきたりですとか、売上債権の増減額とか、減少額ということで、金額がプラスマイナスになったりしているので、一般的なビジネスマンからすると、何を見ているのかよく分からないはずなのです。
そういう意味合いでいっても、よほど素養のある方以外は、内訳を深入りしないほうがいいと思います。本業で一体幾らキャッシュで稼いでいるのかを見ていっていただければいいのかなというところです。
次に、投資のキャッシュ・フローです。
一つの視点としては、営業活動によるキャッシュ・フローの範囲以内での投資なのか、それを超える投資なのかというところを見ておいていただきたいなと思います。
営業活動で稼いでいる範囲内で設備投資をしていれば安全です。今の日本の大企業は結構このパターンに陥ってしまっています。ただし、企業が右肩上がりに成長していくときというのは、それでは、なかなか大幅に成長していけないので、お金を借りて設備投資をしていくというケースというのはあります。ですから、営業活動によるキャッシュ・フローの範囲以内でいいか悪いかと。エネルギー活動のキャッシュ・フローの範囲以内で投資をしていればいいか悪いかという判断はできないですけれども、一つの目安として安全策をやっているのか、ある程度積極策に転じているのかなというくらいは、そこを見れば分かっていくので、ひとつ気を付けていっていただきたいなと思うのです。
あとは、固定資産とか投資有価証券なども売却がある場合は、投資回収がありますので。大幅にプラスの金額が増えていく場合もあるので、そこを見ただけではなくて、一応内訳も確認をしておいてください。そこがプラスマイナス、ネットして結果幾らだということになってしまいますので、ぜひ、そこも確認をしておいていただければいいかなと思います。
財務キャッシュ・フローについては、先ほども申し上げたとおり、プラスであれば安全なのかというと、必ずしもそうではないケースが多いですので、借り入れをいっぱいすれば財務活動によるキャッシュ・フローというのはプラスになりますから、なぜ、財務活動によるキャッシュ・フローが最終的にプラスになったのか、あるいはマイナスになったのかというとことは、見ておいていただきたいなと思います
営業投資財務の合計額というのが、変動学ですので、要するに、トータルで一体幾らキャッシュが増えたのか、減ったのかということを示しています。
期首、期末です。当期の変動額に期首の金額を足せば、当然期末に幾ら残っているのかという金額が出てきます。これは、BSの分析とかかわってくるところなのですけれども、手元のキャッシュ合併場合によっては多過ぎるのではないかという場合もあります。お金が余っている会社というのは、キャッシュがだぶついていて、うまく投資に回っていないという部分もありますので、これは、BSの分析のところに含めるべきですけれども、あらためて、こんなお金を持っているのだという企業が分析対象になったとすれば、そんなにお金持っていていいのと。本当は、他に使うべきではないのとか、配当すべきじゃないのかというような、次の分の洞察もしていただけるといいのかなと思っています。
キャッシュ・フローの分析の流れも、やり方自体はBSとPLと一緒です。ぜひ、数字をいったん分かりやすいように、営業と投資と財務に分けて数字を並べていってください。同業と比較をしていってください。できれば、3年から5年以上のデータを比較していっていただけるといいかと思います。
キャッシュ・フローの場合は、あまり比率分析をしても、意味がないかなと思います。キャッシュは事実ですので、一体幾らお金を持って、それがどんなで原因で稼いできているのか使っているのかというところを分析していますので、比率分析はPLまででいいです。ゆえに、キャッシュ・フローの分析はそんなに突っ込んでやる部分というのは、そんなにないです。
ただ、営業、投資、財務の大きな三つの項目できっちりと分析をして、時系列で並べていった場合、あるいは同業と比較した場合に、すごく特徴とか違いとか変化がある場合には、一体どんな理由で、その変かとか違いが起きているのかというのを調査をしていっていただきたいと。結果的にそのキャッシュ・フローの動きというのは、一体何が原因で起きたのか、その企業にとっていいのか悪いのか、今後どうすべきなのかというところの分析につなげていただけるといいのかなと思います。
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