事業承継について

事業承継を考えるにあたって【第2回】

「事業承継」について、前回から3回シリーズで解説をさせていただいています。その前回は「事業承継」とは「財産権」、「経営権」そして「人材」を次世代に受け継ぐことであり、単なる「財産権」の承継である相続よりもより厄介なものであることをご説明しました。相続ですら、いざ、その時になると親族内でも揉め事が数多く発生しますし、土地や建物などの固定資産に資産が偏っている場合には、納税資金の準備をしておく
「必要があるなど、事前の準備には念を入れていれすぎることはありません。

それに加えて、「経営権」や「人材」をも受け継がなければならない事業承継はさらにいろいろと準備をしておくことがあります。その中で今回は
ビジネスの整理、帳簿の整理、そして資産・負債の整理の3点についてふれてみたいと思います。

まず、ビジネスの整理という点です。長年、ビジネス(=商売)を続けてこられた社長にとってはいろいろと整理しておくべきことがたくさんあると思います。ビジネスのノウハウはもちろんのこと、長年の積み重ねで構築されたお取引先との信頼関係など、プラスの要素が挙げられるでしょう。これらを次世代の後継者に継承しやすいように整理しておかなければなりません。一方で、昨今の不況の影響で、累積の損失やこれに伴う金融機関からの借入が増えてしまっているかもしれません。また、金融機関担当者や支店長との関係もしっかりと整理しておかなければなりません。そして、こういった整理をした結果、最終的に「事業承継」をしないという判断もありうることを事前に念頭に置いておいていただきたいと思います。冷静に考えて、あまりにも負債が多く、構造的不況に陥っているような企業の場合、どんなに優秀な後継者がいたとしても、その後数十年間、ビジネスがなりたっていかないだろうと予想される場合が残念ながらありえます。このような場合、負の遺産を次世代に引き継がない、という勇気ある決断をすることが必要な場合もあります。非常に重要な判断ですから、冷静に客観的に、必要に応じて専門家の意見も慎重に聞きつつ、意思決定をする必要があるでしょう。

次に帳簿の整理、という点についてご説明をします。帳簿の整理には2つありまして、1つは物理的な帳簿をしっかりと整理しておくことと、もう1つは帳簿の内容をしっかりと整理しておく、という点です。まず物理的な帳簿をしっかり整理しておく、という点からいきましょう。長年、ビジネスをされてきた経営者の皆さんにとって、経理や決算数値はなかなか他人任せにできない仕事の1つであったと思います。それだけに慎重にご自身で管理をされてきたことでしょう。しかし、長年1人で支えてきた業務というのは他人からみると往々にしてわかりづらいことがよくあります。次世代への引き継ぎへの準備として、ご自身で管理してきた経理に関する資料をきちっと整理して、誰がみてもわかりやすい、管理しやすいようにしておいてください。これが帳簿の整理ということです。会計帳簿がきちんと整理されていないと、後継者が引き継ぐべき資産や負債がいったい何なのかを整理するだけでも膨大な時間がかかり、効率的な事業承継の妨げとなります。また、会社が組織として継続する、という基本的な条件を確保するためにも経営者しか知らない、ということを少しずつ整理しておかなければなりません。

そして、帳簿の整理の2つ目、帳簿の内容の整理する、という点について説明します。帳簿の内容とはずばり会社の資産、負債をきちんと整理するということにあります。まず、気をつけておかなければならないものは、経営者から会社への貸付金です。もちろん、返済のめどがあり、順調に返済が進んでいれば大きな問題にはなりませんが、返済がいつになるか分からないような場合には注意が必要です。この貸付金は貸付主(=多くの場合、オーナー経営者である皆様)が死亡し、相続が起きた際に相続税がかかってしまいます。ただでさえ苦しい資金繰りをさらに悪化させる可能性がありますので、十分な注意が必要です。また、長年にわたって回収できていない売上債権や販売見込みのない商品・製品在庫、あるいはほとんど利用されていないような土地・建物などの遊休資産などは、事業承継を前にきちんと整理しておくべきです。後継者が使う見込みがないものを承継するだけでなく、これらによって必要のない税金を支払うことになるからです。次回最終回は、事業承継に時間がかかる理由とその対策について説明していきます。

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