1.監査法人を徹底的に理解して監査対応を効率化させる(実践編)
ではよろしくお願い致します。きょう講師をさせていただきますオオハラでございます。よろしくお願い致します。
内容と致しましては前回の続編という形になりますけれども、監査法人を徹底的に理解して監査対応を効率化させる実践編ということでこれからお話をさせていただきたいと思います。手前どもも監査法人をやっておりますが、大手の監査法人の中には当然われわれが一緒に仕事をしたメンバー等もまだ残っております。私は1998年合格ですので今で15、16年目になります。ですから、大手の監査法人に行ってかなり早い人ではパートナーになっているくらいです。大体はマネージャーかシニアマネージャーをやっているという世代になります。彼らと議論をしていて思うことは、一つは皆さんもお分かりの通り大手の監査法人というのは非常に厳しいです。ここに来て急激に業績が良くなってきているんですが、大手の監査法人でも2、3年前に下手をすると大赤字、あるいは保険金の取り崩し等で利益を何とか出したという状況だったのですが、今はかなり業績は良くなっています。単純にいってリストラなのです。皆さん監査法人の決算書ご覧になったことはありますか。有限責任監査法人になってからは大手の監査法人は決算を公表しています。監査法人のホームページを見ていただければ大手の有限責任監査法人の場合は全て決算書が載っています。新日本有限責任監査法人、トーマツ監査法人、あずさ監査法人は現在有限責任監査法人です。ついでに監査を受けなければいけないので、おのおの監査法人の監査を受けて改修をしています。
監査法人の数字を見るとどうでしょうか。皆さん、監査法人の経費の中で一番多いのはどう考えても人件費だと思うのですが、人件費以外に何かこれって監査法人ってお金がかかる、逆に言えば皆さんが監査法人のリストラをしなければいけないという立場になったときに、人件費以外で思い付くものというのはありますか。なかなか難しいと思うのですが、よく皆さんにこのようなご質問をさせていただいておっしゃっていただくのは賃料、儲かってる場合はいいのですが、儲かってないとあまりいい所に事務所を借りなくてもよいのではないかというような感想をお持ちの方は多いと思います。それは正しいのですが、賃料はそうでもないのです。そんなに大したことはないのです。なぜならば賃料監査法人というと従業員が5000人か6000人ほどでだいぶ減ってはいますが、4000人以上はいると思いますが、結構簡単で席が4000個もないのです。たぶん3分の1ほどしかないと思います。というのは、ほとんどの監査をやっている現場の方というのはお客さまのところに伺って仕事をやらせていただいているので席がいらないのです。ですので、従業員のわりにはそんなに賃料は大したことはないのです。
では、あとは何か。取りあえず人件費は割けましたので内訳の話を少ししたいと思います。それ以外はロイヤリティーです。新日本監査法人というと横に何かつながります。アースト・アンド・ヤングと書いてあります。あずさといえば今はKPMGです。大抵横文字が付いているじゃないですか。あそこにロイヤリティーをかなり払わなければいけないのです。これくらいなのです。人件費に関していうと一つは古い世代の方々には早期退職をしていただいています。ですから、かなり力がある方でも定年後にしばらくいるということは最近では見なくなってしまいました。定年前に早期退職の制度を利用して退職をされる先生も結構多いです。もしかすると皆さんの会社の担当の先生も早々に退職をされた方もいらっしゃるかもしれません。これによって彼らは一つのコスト削減を達成をしました。これはそんなに大きな問題ではないのです。もっと大きな問題というのは現場なのです。現場の方々の給料、特に管理職になる前の給料というのは当然のごとく基本給とほぼ残業代となっているわけです。賞与手当については日本の企業のご多分に漏れずといいますか、もともと福利厚生は弱い業界ですので、もともと大したことはありません。そして業績が悪いのでなおさら厳しくなっています。ですから、基本給プラス残業代でここはこう成り立っているという状況です。基本給は少しずつ下がっています。私がこの業界に入ったのが約15年前ですけれども、そのときの大手の監査法人の初任給というのは450万円から500万円弱ぐらいでした。かなり恵まれている状況だったわけですけれども、これが今は400万か400万を切るぐらいになっています。ですから100万円下がっています。世間一般並みに追いついたといえば追いついたわけですけれども、もっとシリアスなのが残業をほとんどしていない、できなくなってしまっているということです。なぜなら人が余っているからです。人が余っていて業績が悪化しているので、若い衆に残業をさせて残業代を湯水のごとく出すという余裕がなくなってきているわけなのです。ということは、基本給だけの400万なのです、That’s all。これからなかなか抜け出せないのです。もちろん何も知らない、何の実務経験もない、試験に合格したばっかりの人間が400万もらっているのは高いと思います。ですから2年も3年もたつとかなりできる人間とできない人間に分かれてきて、3年間真剣に今の厳しい環境の中で監査をやって400万しかもらえないというのはかなり厳しいです。このしわ寄せが徐々に監査の実力に表れてきています。どの業界もそうだったかもしれませんけれども、監査の仕事というのはある程度経験も必要です。経験が必要ということはどうしても時間も必要なのです。僕らのときというのは通常の執務時間と残業時間が大体同じぐらいでした。休日、土日、毎日ずっと出てますぐらいには普通になってしまいます。逆に言えばそれくらい仕事をやらせてもらっていたのですが、今は9時~5時です。ですが監査法人は実際は10時~4時半、5時ぐらいです。なかなか始業直後に皆さんの会社にお伺いするということはできないので、始業して少し落ち着いた9時半だとか11時ぐらいにお伺いするということが多く、就業を少し過ぎたぐらいには失礼させていただくというケースが最近は特に多いです。若い方々はその経験値を全然積めなくなってしまっています。ただし、平均像でいうと今の公認会計士の合格年齢は大体24歳ぐらいです。3年たっても27歳じゃないですか。27歳で普通に仕事をやっていて、監査法人以上に給料を取れる人や会社があるのかというとやはり難しいのです。では皆さんの会社で転職してきた月給30万円の人に500万円を払おうと思ったら、当然管理職をやってもらわないと困りますよね。経理課長代理だとか、少なくとも経理課の主任ぐらいで4、5人のチームはまとめてもらわないと困ると思います。ですがなかなか払えないですよね。給与体系には多少差があるのかもしれませんけれども、では監査法人で3年間やってポンッと外に出てきた人の中でどれぐらいの人がその仕事ができるのかというと、経験値も少ないですしなかなかできないのです。今、これが監査法人を取り巻く環境になってきてしまっています。前は皆さん結構辞めていったのです。上がどんどん辞めていくのできっちりと頑張っている人たちというのはどんどん昇進できたのです。仕事はきついですが昇進ができましたし、責任もありますが待遇面でもそれなりに報いられて昇進してきたのですが、最近はそのストックがもうないなのです。20代からそのふたが閉まってしまっているような状況になってきているというのが現状だと思います。
きょう事前にいただいているご質問の中にも含まれているんですけれども、ここでご説明したほうが流れがいいかと思いますので先にご紹介してしまいます。決算早期化を目指すにあたって監査を短縮するとともに日程を早めないといけないのです。決算早期化ですから、決算発表を早く出さなければいけないわけですから、まず自社の中の決算業務というのを早くしましょうということです。それで監査を受ける期間を短縮しましょうということですけれども、さらに監査を始める期間を前倒しにしないと決算発表は早くなりません。早く終わらせて手待ちしていても仕方がないのです。大手の監査法人と監査契約をされているという場合、日程の変更というのはフレキシブルに可能なんでしょうか、不可能なんでしょうか。大手の監査法人の場合4月の早い段階での人数というのは監査法人の高い大手のクライアントから先に取られているのではないでしょうか、という旨のご質問がありました。答えは当然イエスです。彼らもビジネスですからお金をもらっているところから先に出していくに決まっています。当然そうなってきます。これに対応してどういうことをやっていく必要があるかというと、監査法人にもメリットを与えてあげないといけないということでしょう。一つは監査報酬を単純に上げることです。監査報酬を単純に上げるというのは能がないですから、監査の効率を上げてあげればいいのです。例えば単体の監査を受けるのに決算の締めって実は今まで本社に来て2週間かかってしまっていたというところを1週間に変えてあげて、監査報酬据え置きでいけば彼らは実質収益性2倍じゃないですか。このようなメリットを与えてあげれば全然ウェルカムで日程の変更にも応じてくれるのではないかと思います。決算の日程を早くしたい、でも実際ふたを開けてみると毎回できません、まだ何もできていません、また来週来てください、このような対応を続けていると監査法人との信頼関係というのも失われてきてしまいます。なかなか思った通りに向こうが動いてくれないというケースも多いと思います。
そういった話をしていく中で、私がアルテ監査法人を作ったきっかけにもなっているのですが、監査法人というのは百貨店だと思います。かつての百貨店です。そこそこ高いですよということです。監査報酬が下がったといっても決して安くはありません。皆さんの監査報酬がいくらか存じあげていませんが、監査報酬以上に給料をもらっている役員の方というのはたぶんそんなにいらっしゃらないですよね。下手すると社長ぐらいではないでしょうか。そうなると非常に給料が高いわけです。副社長や専務より払っているわけですから、ある意味副社長か専務以上に働いてもらわないとコスト的に合わないわけです。それほどの給料をもらっています。監査報酬が高いから百貨店なのです。下がったといってもそこそこ高いのです。ただ大手の監査法人というのは上はソニーだとかトヨタだとか新日鉄だとかそういったところから、上場会社を含めていっても売り上げが10億円にいっていないような会社まで含めて監査をやっているわけです。彼らに対する単価表、要するに彼らの考えている単価というのは変わらないのです。
少し分かりにくいかもしれませんが、このような例を出したいと思います。人それぞれだと思いますが、そんなによそ行きではない普段着のワイシャツ、あるいはブラウス、カーディガン、セーター、何でもいいのですが皆さんはそれをどこで買われますか。これは答えていただく方を間違えるとこの先うまく話が回らないのですが、たぶん20年あるいは30年近く前は大半の方はデパートに行ったのではないかと思います。今の感覚でも物価はそんなに変わっていませんから、5000円や6000円だとかのワイシャツなりブラウスなり、あるいはセーターなりカーディガンを買っておくとそれなりにどこに行っても恥ずかしくないと思います。そこそこの格好はできるような感じになります。もっと気合を入れておしゃれをするときはブラウスショップへ行かれたりというようなこともかつてはあったと思いますが、今はそれに代替するものとしてユニクロやシマムラで買いませんか。全部が全部ではないと思いますが、かなり増えてると思います。要はユニクロやシマムラが専門店なのです。そして伊勢丹や高島屋などが百貨店なのです。百貨店の業績というのはご承知の通り、もうここ10年ほどずっと右肩下がりで来ています。数字を取って見ると面白いことに、百貨店とダイエーやヨーカドーや西友などのスーパー等の衣料品の売上合計がずっと右肩下がりで下がっているのですが、その合計とシマムラとユニクロの売り上げの伸びというのは大体同じぐらいなのです。ですから、国内の衣料品の需要というのはかなり緩やかに右肩下がりに下落しているのですが、内訳が百貨店から少しずつ専門店に変わってきているというような形になっています。これはどの業界でも一緒だと思います。
では一方で百貨店の中に生き残っていくためには何をするのかというと、1社では残れませんので合併を重ねています。合併をして何ができるかというと、比較的簡単なのはリストラぐらいなのです。要は間接部門が二つあるので、社長が2人いるから1人いればいいじゃないですかということです。財務部門も二つある必要はありません。総務、人事部門も一つあればいいのです。営業所が東京に二つあるのも一つでいいのです。これは比較的容易にできることです。まずそう簡単に売り上げというのは上がっていかないのです。この中で売り上げを上げていこうと思ったら非常にとがった百貨店ぐらいしか業績を伸ばしていけません。例えば阪急うめだのメンズ館だとか、新宿伊勢丹のメンズ館ぐらいとがっていないと業績というものは伸ばせないのです。
少し監査法人から話がずれましたが、これから伊勢丹だとか、あるいは阪急うめだのメンズ館のようなところというのは大手の監査法人がやっていきます。そこでしかできない仕事というのをやっていきます。なぜならトヨタだとかソニーの監査をうちでやってくれって言われても、ひっくり返ったってできません。そもそもやるつもりもありません。私もやるつもりがあれば大手の監査法人に戻ります。これは伊勢丹なり阪急なり、監査法人の業界では新日本なりあずさなりトーマツなりがこれからもっともっと気合を入れてやっていかなければならない部分だと思います。ただ、まず普段着を買っておけばいいというような状況の企業さんに対して阪急と伊勢丹と同じ単価で商売をしていて採算が成り立つわけがないと私は思っています。話が長くなりましたが、そういったところに特化する専門店である監査法人が必要になってくるのではないかという話をしました。大手の監査法人でパートナーをやっている私とほぼ同世代の人間(####@00:17:39)。返ってきた答えは「そうするしかないよね」ということです。彼らもそう思っています。もう無理なのです。スペックだとか性質だとかコスト体質が全然違います。特にアメリカに上場しているような会社というのは間接費が非常にかかります。まず当然のことながら横文字の会社からついてきます。新日本監査法人の中であればアースト・アンド・ヤングから内部監査が入りますが、これはかなり厳しいです。アメリカに上場していればアメリカの証券取引委員会、SECが来ます。あるいはアメリカの公認会計士協会から来ます。表には出てこないですけど彼らは相当厳しいチェックをしています。当然ながらそれに対応できるような体制だとか、あと監査をした証拠を取っておかないといけないのです。これは目には見えないものですが非常に高いコストがかかっています。しかもそれに対応できなければアメリカで上場し続けられないわけですから、会社がそれを望んでいる以上やらなければいけないわけなのです。これを彼らはもっと磨いていかなければならないのです。
一方で日本国内で上場を当面維持していこうというような考えであればそこまでは必要はありません。ですから大手の監査法人に依頼をしていると、もはやToo muchなやり過ぎの体制で監査を受けざるを得ないというようなことが現状です。これはやむを得ない状況です。彼らがセブン―イレブンのフランチャイズに入っているのであれば、そこまでやらなくたっていいのにと思っていても、セブン―イレブンのスーパーバイザーが来てOKをもらえなかったらセブン―イレブンの看板を出し続けられないわけです。ですから、皆さんが属していらっしゃるのは普通の業界とは違うので、ある意味では遅いのですがこれから先おそらくはそのような形で少しこの業界はそのような方向に変化していくのでないかと思っています。ですので、社内で対応できることなどこれからきょうもその参考にして頂きたいお話を差し上げますが、それももちろん重要です。ただし、将来的に監査法人の業界がどのようになるかは分かりませんけれども、私の話も少し参考にしていただきながらすぐにということはできないと思いますし、すぐ業界が変わるわけでもないですが、例えば5年後だとか10年たたないうちにその兆しが出てくると思いますので、そのときにうまくスイッチができるようであればスイッチができるような準備だとか心構えといったものは今からしておいていただけると御社、皆さんの会社にとってもみてもメリットがあるのではないかと思っております。では内容に入っていきたいと思います。
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