上場した後の「適時開示」の難しさ
これまで繰り返し申し上げてきましたが、適時開示のビジネス視点の厳しさ、いろいろな情報を上場会社は起きた瞬間に公開しなければなりませんということを申し上げてきました。これがそのリストです。これも、適時開示、東証の検索で見ることができると思います。少し字が小さいですが、1番は新たに株式を発行する場合です。3番は資本金の減少、5番は自己株式を取得する、9番はストックオプションを付与する、10番は配当する、11番は合併等の組織再編行為、14番は事業の全部または一部の譲渡または譲り受け。事業を譲渡したり事業の譲り受けをされたりする場合です。これなどはきつくないですか、新製品または新技術の比較。業務上の提携または業務上の提携の解消。固定資産の譲渡または取得。リースによる固定資産の賃貸借。これは分かりますね、上場廃止。これはどうですか、新たな事業の開始。人員削減等の合理化。黙ってやりたいですよね。でも全部開示しなければなりません。これをまじめに開示しないと、そこにいちいち突っ込まれてくるわけです。定款の変更。
定款の変更は、ソフトバンクがこの間やって、いちいち総会で決めてリリースしていましたね。太陽光発電ビジネスをやりますというようなことなど、そういうものを全部入れないといけません。リストラも入れなければなりません。決算期の変更も入れなければなりません。災害が起きたときに起きる損失となどもです。主要株主、筆頭株主の異動。株主が変わったということもリリースをしなければならないわけです。いろいろあります。12番は取引先との取引停止。14番は資源の発見。エネルギー関係のビジネスですと、新たな鉱山を発見するとか、そういったところも出さなければいけません。17番は固有有価証券の含み損。21番は有価証券報告書、四半期報告書の提出遅延。期限が決まっているのです。それに遅れると、どうして遅れたのか、いちいちリリースしなければなりません。遅れるということは、確実に問題があるわけですから、その段階で普通はおとがめがあるか、株が下がるわけです。全部言わなければなりません。当然、決算情報は言わなければなりません。先ほども申し上げたように業績予想。業績予想が変わりましたということも開示しなければなりません。
今までは親会社の話です。子会社でもいろいろ起きると言わなければなりません。子会社で組織再編が起きましたということも言わなければならないわけです。先ほどありましたが、固定資産の取得や譲渡、リースでの固定資産の賃貸借のようなこともリリースをしなければなりません。「子会社における新たな事業」の開始というのも言わなければなりません。ぜひ黙っておきたいビジネスですよね。結構これは難しいです。新規のビジネスというのは、大体うまくいきませんから、「このビジネスを始めます」と言って、半年ぐらいたって、何もなっていないとたたかれるわけです。普通は黙っておきたいですよね。新しいビジネスというのは、やってみないと分からない部分があるのですが、これも全部出していかなければなりません。
親会社だけのことを考えても、かなりいろいろな情報を出さなくてはならないというつらい状況の中で、子会社、グループ会社の中でいろいろな問題があった、変化があったというときにも、情報を出していかなければならないという点が結構つらいところです。
全体的に申し上げると、IPOに対するハードルの高さ、難しさというところにフォーカスが置かれていると思います。私が意識してお話をしているというのもありますし、実際そう変わってきています。どんどん厳しくなってきています。厳しくなっているからこそ、結果として新規上場する会社は減っています。それは、この影響によるものなのです。東証が厳しくなったとか、誰かが厳しく言っているからとか、ネガティブなことばかり言っているから新規の上場会社が減っているわけではなく、ハードルがどんどん高くなっているからです。規制がどんどん強くなってきています。そのことによって、メリットとデメリットを比較考慮してIPOをしていくという選択肢を取る会社が少なくなってきたということです。かつては、利益が1億円ぐらい出るめどが立ったときに、みんな上場を目指しました。2、3年後に2億円3億円ぐらいになったら十分上場できる、というイメージでみんな上場を目指していたのが2000年の204社上場している時期であったのです。実際に伸びた会社もありましたが、伸びないけれども勢いで上場してしまったという会社もたくさんあります。今は、上場した後のハードルが高いので、少し調べればよく分かりますし、上場した後も継続してコスト負担していかなければならないということも分かりますので、結果的に上場を、IPOを選ばない会社が増えてきているというのが現状です。
ここまでをまとめますと、実態としてIPOの件数が減ってきており、その理由は規制の強化によるもの、ということが一点。もう一つは、資金調達が最大のメリットではあるが、そのメリットをうまく使っている会社というのはないわけではないです。上場の最大のメリットである資金調達を最大限利用している会社というのはあるわけですので、やるのであったらそこを目指していくべきだということです。とは言ってもIPO、上場というのは一つの手段ですので、IPOをせずにビジネスを続けていくというような方法も考えるべきでありますし、IPOを使わずにビジネスをやめるということであれば、自分の代でそのビジネスをクローズさせても構わないでしょう。場合によっては売却するという選択肢も持っておくことが必要なのかなと思います。ですから、選択肢を狭めないということが大事だと思っています。
上場するという目標をしっかり設定する。これは良いことです。それに対するメリット、デメリットをしっかり押さえておく。その後はタイミングですから、どんなに良い会社であってもタイミングを逃したら上場できなかったり、条件が悪かったりすることはあります。ですから、上場をするとしたらこういうタイミング、こういうメリット、デメリットがある。一方で仮にそれができなかった場合にどんなやり口があるのかということを常に考えて、上場のことをしっかりと理解、IPOのメリット、デメリットをしっかり理解しておくということだけではなく、それ以外の手法にも目を向けていっていただくという、2軸で考えていただけると良いと思っています。
きょうは時間が限られていましたので、適時開示の項目と、実際に上場するときに必要な書類の一覧は省きました。東京証券取引所のリンクを持ってきているだけですので、気になる方はそちらのほうを見ていただけると良いと思います。
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