HSBC、平安保険集団株の売却は米中関係の悪化か欧米金融機関の痛みが原因
HSBCが保有する平安保険集団株の売却について報道がされている。
◯HSBC、平安保険集団株の売却検討 金融規制強化に対応
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2003U_Q2A121C1FF1000/
***以下、引用***
【上海=土居倫之】英金融機関大手HSBCは中国保険大手、平安保険集団の株式15.6%の売却を検討していることを明らかにした。売却額は約740億香港ドル(約7700億円)に達する見通し。非中核事業のリストラで金融規制の強化に対応する狙いがある。買い手としてはタイの財閥グループが浮上している。HSBCは中国平安保険の筆頭株主で、「第三者から買収の提案を受けて、現在交渉中」としている。中国平安保険は20日、「進展を注視している」との内容の公告を発表した。
HSBCは買い手の名前を明らかにしていないが、香港紙は売却先としてタイの大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループが有力候補と伝えている。CPグループは農業と食料品を中核に金融や情報通信を手掛けるタイ最大の複合企業で、中国でも流通業などを展開している。中国平安保険は中国の民営金融グループで傘下に深セン発展銀行などを抱える。
中国平安保険の売却を決めた背景には、2013年から段階的に導入される銀行の新しい自己資本規制「バーゼル3」があるとみられる。主要国・地域の金融機関当局からなる金融安定理事会(FSB)は1日、経営不安に陥れば世界的な金融システムリスクを引き起こしかねない世界の28巨大金融機関について、「バーゼル3」が定めた自己資本に1~2.5%の上乗せ幅を求めた。
HSBCの上乗せ幅は2.5%と、28金融機関のうち最も大きい。08年の金融危機や欧州債務危機を受けてユーロ圏で進む金融取引課税の導入や投資銀行業務の規制強化も一因となったもようだ。HSBCは五大国有商業銀行の一つである交通銀行や上海銀行の大株主でもあり、市場では将来売却するのではないかとの観測が浮上した。
米シティグループも3月に保有していた上海浦東発展銀行の持ち株2.7%をすべて中国保険大手の太平洋保険グループに売却した。
***引用、ここまで***
シティによる上海浦東発展銀行株売却もバーゼル3の影響によるものではないかという報道がされている。もともと中国の金融機関は外資からのノウハウ提供を進めるために、基本的にはマイノリティ出資で欧米の金融機関からの出資を受け入れてきた。
バーゼル3については自己資本比率をさらにあげる必要のある規制であるため、HSBCは自己資本を充実する必要がある。記事によると議決権比率が15.6%なので、持分法も適用していない、純粋な投資となっていると思われる。平安保険集団が大きな損失をだして大幅減損処理でもされていなければ、HSBCが平安保険集団株を保有しつづけていても自己資本には影響がないはず。仮にそのような状況であっても、売却してもその損失が実現するだけで、あらたな資本注入なしには自己資本をあつくすることはできない。
1つの可能性としては、中国の金融機関と欧米の金融機関の関係が悪化しているか、欧米の金融機関の自己資本をあつくするために含み益を持つ中国金融機関の株式を売却をはじめたか、あるいは両方の理由によるものか、と見るべきだろう。
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