IPO

割高なJALの再上場株価

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2012年9月19日、JALが再上場を果たしました。リリースによると売り出し価格が3,790円、発行済株式総数である181,352,000株を乗じると約6,873億円の評価になります。

 

ヤフーファイナンスによる先週の金曜、2012年10月5日のJAL株の終値は3,730円と、売り出し価格とほぼ同額を維持しています。

今日はこれが割安か、割高を考えてみたいと思います。

 

 

◯株式売出しに関する条件決定のお知らせ

http://press.jal.co.jp/ja/bw_uploads/MjAxMjA5MTCBaY/wjI+MiJLogWqDioOKgVuDWC5wZGY.pdf

 

◯ヤフーファイナンス

http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=9201.T

 

まず直近の決算ですが、リストラの効果もあり、大幅増益です。売上12,048億円、営業利益2,049億円。なんと営業利益率17%です。破綻前は営業赤字でしたので、とんでもない回復です。一方で純資産は4,138億円です。

 

◯JAL財務ハイライト

http://www.jal.com/ja/investor/highlight/

 

 

問題はこの業績が継続するかどうかです。当期の業績見込みをみてみましょう。

売上12,200億円、営業利益1,500億円の減収、営業利益率は12%です。ちなみに当期純利益は1,300億円。

 

◯平成25年3月期の業績予想について

http://press.jal.co.jp/ja/bw_uploads/lb2QrDI1IJROglKMjor6gsyLxpDRl1yReoLJgsKCooLELnBkZg.pdf

 

さらに中期計画では、以下のような数値です。営業利益は11%を維持すれば御の字で売上も何とか微増、というのがJALの描いている将来像と理解しました。これはANAが最近営業利益率を5-7%程度であることを考えるとかなりチャレンジングな数値であるといえます。以下の中期計画と比較すると、現在はその中期計画を少しうわまわる業績見込みのようです。しかし、足元では中国便減少による収益減なども見込まれるところで、右肩上がりの業績を見込むのは難しいでしょう。

 

 

収支・財務計画のサマリー

金額単位:億円

2012年度

2013年度

営業収入

12,170

12,400

営業費用

10,790

11,000

営業利益

1,380

1,400

営業利益率

11.3%

11.3%

経常利益

1,300

1,310

当期純利益

1,130

1,150

自己資本比率

40.7%

47.4%

 

 

◯JALグループ 2012~2016年度 中期経営計画を策定

http://press.jal.co.jp/ja/release/201202/002027.html

 

◯ANA アニュアルレポート(抜粋)

https://www.ana.co.jp/ir/kessan_info/annual/pdf/12/12_21.pdf

 

 

まとめていきます。

今後のCFを見込んでいきましょう。

今年度の純利益が1,300億円、来期以降、利益率も下がるますので、1,000億円程度でみておきます。

 

連結CFから減価償却費812億円、設備投資が986億円です。

BSから運転資本はかなり少ないことが分かりますので、運転資本の増減は考慮しません。

 

また、特筆すべきは税金負担です。以下のP.29の税金資産の明細を見ると、繰越欠損が392,221百万円。実効税率39.7%で割返すと1兆円ほど繰越欠損がある計算になります。当面、税金支払はほとんどないものとみなして計算できます。しかし、本当にこんなに税務上の繰越欠損金があるのでしょうか?かなり驚きました。

 

◯平成24年3月期決算概況

http://www.jal.com/ja/investor/library/information/pdf/h24_4q.pdf

 

 

簡単にCFを計算してみると、利益1,000億円に減価償却800億円加算、設備投資を減価償却より少し多めの1,000億円減算します。結果、年間800億円程度のCFが当面見込めます。これに対し、上場時の時価総額が6,873億円、有利子負債がリース債務含み2,065億円、手元のキャッシュが2,724億円です。6,873億円ー0円+2,065億円ー2,724億円=約6,000億円がCFで支払い、回収していく金額になります。ここでは税引前当期純利益ー税金相当額+減価償却費ー設備投資額±運転資本の増減、でキャッシュ・フローを算定しています。

簡単な割り算で8年間程度で返済可能、ということになります。航空会社のような装置産業では8年間で投資額を回収するのはかなりよい投資です。いいかえると割安であるといってもいいかもしれません。

 

しかし、問題はこの年間800億円のCFがどこまで継続できるかです。さきにも述べましたが、ANAの営業利益率は5-6%、JALが10%の高い営業益率ではなく、5-6%程度の営業利益しか出せないとすると、年間のCFは300-400億円程度で、この場合15年から20年間回収にかかります。また、10年後には税金の支払いも必要になります。

さらに今後、LCCとの競争など環境的には非常に厳しい航空業界で、現状のCFを維持するのは並大抵ではありません。よって、中期的には年間のCFは300-400億円程度とみるのが妥当と考えます。したがって回収に15-20年かかり、さらに将来の業績向上に思い当たる具体案がみられないため、ここでは割高、という判断をしたいと思います。

 

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