オリンパス第三者委員会報告について
オリンパスの第三者委員会から報告書が提出された。本文は以下のリンクのとおり。本文では調査報告書要約版を「要約」、調査報告書を「報告書」と記載する。
【資料】
http://www.olympus.co.jp/jp/info/2011b/if111206corpj.cfm
要約は非常によくまとまっている。要約に記載されている内容を会計監査と関連する部分を要約する。詳細は報告書で約200ページ程度の内容に詳しい。そこで、ここでは事実関係を誤解を恐れずにざっくりとまとめることとする。
オリンパスは、1990年代の財テクの失敗ででた損失をとりあえず、ファンドに飛ばすこととし、資金面などをやりくりしてなんとか連結外しをした。この間、ファンドに飛ばしを実施する際にオリンパスの保有する預金を担保にファンドへの出資をおこなっているが、この担保提供の実態から飛ばしが判明する可能性があったが、ここでオリンパスはLGT銀行へ担保提供については記載する必要なし、として工作をしている(筆者注:これが報道された預金による粉飾に該当するのではないか)。
その後、会計基準の変化の過程で、ファンドの連結外しも難しくなってしまい、一部は現あずさ監査法人の指摘もあり、ファンドを中途解約するなどして損失計上を余儀なくされている。
その後、オリンパスはファンドをつかって損失隠しをしていたが、ファンドへは実際に資金を出す、あるいは担保供与をして融資を引き出すなどしており、最終的にはこれを資金的に決済する必要があった。そこで、M&Aの対価として、またアドバイザーフィーとして決済することとし、結果としてそれはオリンパスののれんとして計上されることとなる。
ここでジャイラスがM&Aの売り手として候補になるが、あずさ監査法人はこの対価およびフィーが高すぎると指摘、監査役会に報告したが、監査役会は形式的な第三者によるオピ二オン(2009年委員会報告書)を入手、これをベースに無限定適正意見を出している。これに対し、第三者委員会は問題なしとはしていない。一方で、監査役会の動きがにぶいとみたあずさ監査法人はこれに関与した菊川、山田、森三氏の退陣まで言及し、事実上解任されている。
その後、新日本監査法人が会計監査人として就任、引継ぎでは2つの会計上のイシューがあったと回答したのみである。その後、非公式な会談の中で、両者の中で問題は解決したこと、そして、その過程であずさから菊川当時社長への失礼な発言があり、同氏が激怒したことなどが伝えられた。
新日本監査法人への交代後、ジャイラスの配当優先株の買い戻しにあたり、高額なFA報酬をのれんに計上すべきかどうか、より慎重な判断が必要であった可能性がある。しかし、リーガルオピニオンをとり、審査会にてE&YのIFRIC解釈指針に対する見解も考慮し、会計処理を認めている。
以上が、私なりの会計監査に関わる部分の要約である。
以下に私の意見を述べる。
現時点で規定されている監査基準において、あずさ、新日本ともその職責を果たしている。あずさはさらに一方踏み込んで、経営者の辞任を訴えており、会計監査人の職域を超えた。これはビジネスマンとして正しい行為と思う。
一方で新日本も会計監査人としてやるべきことをやった。しかし、ビジネス実態をよりつっこんでいくスタンスはとっていない。これはスタンスの問題であり、会計監査人としていずれが正しいとは評価できない。
しかし、世間、そして第三者委員会はあずさのようなスタンスを求めているようである。これは、あずさも最終的にはオリンパスの2009年委員会報告書をベースに無限定適正意見を出した点は第三者委員会は評価していない点からも見える。
本件については、第三者委員会も指摘、私も以下で言及したとおり、引き継ぎの際の実態開示をより明確にすべきであり、そして何よりも会計監査人がよりビジネスを理解し、世間の期待も理解し、その場その場で適切なジャッジができることだろう。アルテ監査法人はそういった高い目標を達成するために一歩づつあゆみを進めるつもりである。
http://blog.livedoor.jp/ohhara_cpa/archives/51867674.html
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