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M&Aの具体的な進め方

M&Aの進め方ということで、きょうは時間がそんなにふんだんにあるわけではないので、全体の流れだけをお話ししたいと思います。このM&Aの実際の具体的な進め方というのは、お手元の資料の中にチラシがあって、「M&Aアドバイザー開業・養成講座」という講座があります。これは2日間の講座ですが、M&Aの進め方を1日かけてやらせていただきます。それは実際の契約書に記載する内容とか、そこで気をつけなければいけないような内容、交渉のときに気をつけなければいけない内容。あるいは、企業価値の算定の具体的な方法も含めてですけれども、ご説明をさせていただきます。

きょうは、かいつまんでそのさわり的な部分、概要だけをお話したいなと思います。中小企業のM&Aで最も活用される手法としては、株式譲渡です。株式譲渡は一番ポピュラーですよね。対象会社の株を売ったり買ったりするという話なので、皆さんが想像されるM&Aというのは、これが一番多いのではないかと思いますけれども、中小企業でやろうとした場合に、事業譲渡が思ったよりも多いです。

事業譲渡というのはどういうものかというと、一部門だけ切り取って譲渡できます。例えば、飲食店が分かりやすいので飲食店の例ばかりになってしまいますが、イタリアンとフレンチと和食の3店舗をやっている会社があったとします。和食の店舗だけ売りたいです、あるいは逆に買いたいですとなった場合に、株式譲渡だとまとめて3店舗売らなければいけなくなってしまいますね。事業譲渡の場合は、この和食の店舗だけ切り取って売ることができます。ですから、ここに部門売却とか買い手が欲しいものだけを買い取ると書いてありますけれども、これは、メリットはそれだけではありません。

何だと思いますか。

デューデリジェンスというのをお聞きになったことはありますか。キーワードだけはお聞きになったことがあるかと思いますけれども、デューデリジェンスというのは株式の譲渡をするときに、最後に身辺調査をするようなものです。M&Aが結婚だと思っていただいて、縁談が進みました。デートも重ねました。この人でいいのではないかという話になりました。最終的に、あいつは本当に大丈夫か身辺調査も一応しておこうということで、身辺調査を第三者に頼むことだと思ってください。その第三者というのは、会社の身辺調査なので、法的な面だったら弁護士であったり、財務の面で言えば会計士、税理士といった人たちに頼みます。

そこで、いろいろなことを見ますけれども、これから先、あるいは今の段階で法的財務、あるいはビジネス的にどんなリスクがあるのかというのを洗い出す仕事です。結構、大変です。資料を全部ひっくり返したり、現場を見たり、経営者にヒアリングしたりとかで、結構大変です。それでも、全部見つかるとは限りません。売り手なりオーナーがひた隠しに隠していれば、短期的には分かるわけがありません。そういったものは契約で一応はフォローします。「うそをついたら後で損害賠償ね」と、簡単に言うと、そういう契約を一つ一つ巻いていきますが、事業譲渡の場合というのは、それはあまり要りません。なぜなら、株式譲渡の場合はこの会社全体を買いますという契約になってしまいます。仮にですが、簿外債務があっても会社を買ってしまったので、それは付いています。

事業譲渡の場合というのは、これとこれだけを買いますという契約になります。例えば店舗の契約であれば、賃貸の賃貸借契約を引き取ります。店舗で5人働いているとしたら、この5人の雇用契約だけを引き取ります。あと、取引先の契約が10社あるとしたら、その10社の取引先の基本契約だけを引き取りますとか、什器、備品の中の、これとこれだけ引き継ぎますとリストアップをして譲渡します。ということは、簿外債務はリストに書いていませんから、絶対に付いてきません。そういう面も含めて、デューデリジェンスにそんなにコストをかけなくて済むという面もあって、事業譲渡を取るケースが意外と多いです。ほかにいくつかメリットがあるのですけれども、中小企業同士のM&Aという意味で言うと、事業譲渡は意外と使い勝手があるということです。

大手の場合になぜやらないのかというと、一つは面倒くさいからです。お店が1店舗くらいだったら契約とか雇用計画を全部洗い出していってもいいですけれども、5000人いる会社、取引先が2万社ある会社、固定資産が、固定資産台帳ベースで50万件ある会社は、全部契約書に落としていくのは、なかなか大変ではないですか。ですから、株式譲渡という形態を取るケースのほうが多いということと、事業譲渡は規模が大きいと株主総会で決裁しなければいけません。
父ちゃん母ちゃんでやっている会社であれば、株主決議と言っても父ちゃん母ちゃんがオーケーと言えばあとは書類1枚を作っておけばいいわけですけれども、上場会社で株主総会をやろうと思ったら、いくらかかるか分からないわけです。ですから、そう簡単にできないので、その2つの理由で上場会社あるいは大きな会社は株式譲渡を使うケースは多いわけです。

中小企業の場合は、それも、総会を開く必要がないわけではないですけれども、簡単に開けます。デューデリジェンスも簡単にできるということで、事業譲渡を採用するケースが結構あると思っていただけるといいかと思います。

今うちで扱っているケースですけれども、会社全体は売却できないので、一部の事業しかそもそも売却するつもりがないので、今事業譲渡の予定です。ただし、すごくもうかっています。とてももうかっているので、それなりの値段が付いています。でも、譲渡する資産、負債というのはあまりないです。負債はそもそも引き継ぐつもりはありませんけれども、資産はあまりないです。

となると、仮に1億円で売りたいとすると、1億円という値段はそんなに不思議な金額ではありません。なぜかというと、キャッシュ・フローが出てもうかっていますから。それに対して、その事業譲渡で譲渡する資産は1000万円しかありません。ですから、1000万円の簿価に対して、1億円付いているわけです。この9000万円はのれんです。

のれんは、買ったほうの会社が税務上償却できますから、損金になります。そうなると、株式譲渡の場合は1億円で買ったら、この1億円は損金になりませんよね。投資勘定ですから、投資有価証券です。絶対に損金になりませんけれども、事業譲渡の場合は、これは損金になる可能性があります。となると、投資した金額を償却ができるのですから、これは結構効率がいいですよね。もうかった分は当然計上できていくわけなので、タイミングさえ合うと、事業譲渡というのは売り手にとっても買い手にとってみても、非常にいい結果になることもあります。

大企業ばかり言っていると、事業譲渡というものが面倒くさいし、手間がかかるし、総会を開かなければいけないみたいなことで、完全に眼中からなくなってしまいます。けれども、そうではないケースがあるということだけ押さえておいていただけるといいかと思います。

企業評価ですけれども、たぶん理論的に一番正しいのは、DCF法だと思います。DCF法というのは、ここでそんなに簡単には説明できません。DCF法のやり方だけで500ページくらいの本が何冊もあるくらいですから、ここではそんなに細かくはご説明できないのですけれども、要素としては二つあって、将来この会社がいくら稼ぐかを見積もるわけです。それを今の価値に引き直そうという二つの要素しかありません。

今の価値に引き直そうというというのは極めてテクニカルな問題なので、ご興味がある方はぜひそういうテキストをひもといていただければと思います。もっと難しいのは、将来のキャッシュ・フローを見積もることです。

この先うちの会社がいくら稼ぐかを客観的に申し述べよと言われても、そんなことはできない会社というのは多いじゃないですか。実際にやろうと思うと、理屈は分かるけれども、結構難しいです。しかも、売り手、買い手が納得しないといけないです。これは、なかなか難しいです。なので、簡便的に言うと下のような方法を一つの目安とするケースがあります。時価純資産ですけれども、これを時価に直さないといけないです。含み益、固定資産とか在庫とかにもろもろの含み益とか含み損があると適正な内容評価になりませんから、それをいったん時価に直して、それにのれん分、のれん相当を乗せます。

時価純資産で売買をしてしまうと、会社を今つぶしたとしたらいくら残りますかというのが時価純資産に相当する金額ですから、そうなると、将来全然稼がないと思っているわけです。将来全然稼がないと思われているというのは、続けた方がいいと思いますよ。それだと売るほうが売ってくれないので、のれん代を乗せましょう。営業利益とか経常利益を3年から5年分実際に乗せましょうというケースが、一つの目安になってくるかと思います。

ただし、今の市場で言うとIT系、ゲームを作っているような会社とか、iPhoneのアプリを作っている会社という意味でのIT系意味ですとか、飲食店というのは足が速いですよね。足が速いというのは、3年後とか5年後とかは、そう簡単に見込めません。ですから、ここが最大3年ぐらいになっているケースが多いです。実際に、2年ぐらいで成約しているケースも比較的多いです。これは、そのビジネスの形態によるのかと思います。

インフラ系をやっているとか、官公庁系をやっているとか、建設業をやっているという案件があれば、もう少し長くなっているのかなと思います。例えば、この間聞いたお話ですと、北陸の建設業というのは、これからしばらくはバブルだそうです。北陸新幹線というのがありますね。北陸新幹線に納める関連の商売というのは、しばらくはすごくもうかるらしいです。でも、その後が全く読めないので皆さんはいろいろと考えているみたいです。
その北陸新幹線は、いつからいつまで動くというのは決まっています。そうなると2年とか3年ではなく、きっと5年後の、今からこれぐらい売り上げがあってもうかるというのが、ほぼそれに近い数字になります。ですから、そういう特殊事例は当然考慮してこの年数を決めていかなければいけません。
備考として言うと、ここです。過去の実績をベースにするために、今、客観性が高いわけです。こちらのDCF法の場合は、ゼロベースで将来どのくらい稼ぐかということをいちいち考えていかなければいけないので、「言いたいことは分かるけれども、そんなことを言われても」と話がうまくまとまらないケースもあります。

一つの例として、こんな数字をここではあげています。株主価値と事業価値のところでさらっと違っていますが何が違うのかというと、株式譲渡の場合は経常利益になっています。時価純資産プラス経常利益の何年間分です。事業譲渡の場合は、ここは営業利益になっています。これもケースバイケースで使い分けていただきたいのですが、一応、前提として、株式譲渡の場合は会社を丸ごと譲渡されるわけですから、当然借り入れも引き継ぎます。営業利益と経常利益の違いは、中小企業の場合は、ほとんどが支払利息です。

ですから、当然こちらは支払利息を負担した後に何年間か分ののれんを付けてあげましょうという発想で、こちらの事業譲渡の場合というのは、これは借り入れを引き継がないとした事業譲渡を想定しています。

借り入れを引き継ぐ事業譲渡というのは当然可能なので、その場合はそれに対応する利息を負担させてやらないと変なことになってしまいますので、その場合は経常利益を使うなど、時と場合に応じて使い分けていただくといいかと思います。
もう一つの要素として、実質があります。実質営業利益、実質経常利益という、実質というのが付いていますけれども、利益が出ている会社であれば、普通節税対策をしています。保険を買ったり、役員報酬が異常に高かったりします。

役員報酬が異常に高いのは、トータルで節税になっているかどうかは非常に疑問です。所得税のほうが多く払っているのではないかという説も中にはありますが、これは、会社は譲渡した、例えばですけれども、オーナー系の会社が上場会社の子会社になりますとなった場合に、この社長はすごくもうかっているから、3億円もらっています。上場会社の子会社を買って、子会社の社長で3億円取ることは、ほぼ100パーセントないわけです。子会社の社長であれば、ほぼ金額は決まっていて、仮にそれが2000万円だとすれば、2000万円でやるわけです。その3億円と2000万円の差というのが、ここの実質営業利益に入っていきます。

3億円というのは、ものすごくもうかっているから会社で、税金を取られるくらいだったら全部自分のところの給料にしてしまえとしているわけで、どこかが買い取って社長の仕事をする人をどこかから連れてきて仮に2000万円でできるのであれば、2000万円で計算します。それがこの実質の意味です。お金が余って利益が出てしまっているから保険を買って利益を繰り延べしようというのも、それは本当の力で言えば保険を買う前の金額です。そこにいったん直しましょうというのが、ここの実質の意味です。

そうですね。すごく節税がうまいところというのは、ほとんどずっと続けていっているわけですから、全然利益が出ていません。そうすると、本当はすごく利益が出ているのに、「営業利益は毎月ゼロですね」と言ったらのれんなしで、「今、会社をばらしたとしたら、いったいいくらかという金額で売りますか」と言ったら、「ばかか、お前」といわれて終わりじゃないですか。この実質というのは、大事です。まず、ここをつかまないといけないということです。企業譲渡をするとすれば、バリエーションですね。

大きな流れですけれども、こんな感じになっています。アドバイザーと契約みたいなところはどうでもいいですけれども、ここにネームクリアというのがあります。これは、皆さんがアドバイザーをやる場合は当然、すごく気を付けていただかなければいけないことですし、あるいは、アドバイザーを使うとなった場合でも、これをちゃんとやる業者なのかやらない業者なのかというのを、ぜひ、注意して見ていただきたいと思います。

これは何かというと、売り手の情報を買い手に出すときに、いちいち確認を取るということです。「どこそこのこういう会社に、売り手であるおたくのこういう情報を出します。いいですよね」ということを、いちいち確認することです。これをネームクリアあるいは、ネームクリアの確認と言っています。

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。
                                                                                                                                                                                                  
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