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5%ルールを機能させるには、誰が保有しているかを見えるようにするのがスタート

5%ルールを機能させるには、誰が保有しているかを見えるようにするのがスタート

太陽誘電株を買い集めた米ファンドが、5%を超えた後も期限内に大量保有報告書を提出していませんでした。報道によると、ファンドは6月29日に保有比率が5%を超えましたが、報告書を提出したのは8月12日でした。関東財務局は、期限内に提出しなかったことは金融商品取引法違反にあたるとの見解を示しています。

この問題を「罰則が軽いから起きた」とだけ捉えると、対策を誤ります。大量保有報告制度は、保有者本人が報告する自己申告制度だからです。当局がすべての株主の保有状況をリアルタイムで把握し、5%を超えた瞬間に未提出を見つける仕組みではありません。納税と同じように、まず本人が申告し、その後に記録や情報を確認して違反を調べます。

自己申告である以上、未提出を事前に完全に把握することはできません。問題は、違反が起きた後に、誰がどれだけ保有していたかを確認し、違反を立証し、処分できるかです。

名義だけでは実質的な保有者が見えません

株式の名義人と、投資判断を行い、経済的な利益を得る実質的な保有者は、必ずしも一致しません。複数の口座や関係主体に保有が分かれていれば、個別の名義だけを見ても、同じ主体が実質的にどれだけ保有しているか分からない場合があります。

誰が資金を出し、誰が運用を指図し、誰が議決権を行使するのか。こうした関係をたどれなければ、複数の保有を合算すべきか、共同保有者にあたるかを判断しにくくなります。実質的所有者の把握と開示は、未提出をその場で自動検知する仕組みではありません。しかし、事後調査で保有の実態を解明し、報告義務違反を立証するための土台になります。

厳罰化だけでは抑止になりません

報道によると、大量保有報告書などの提出遅延は、2019年から2022年まで平均で年約1,500件ありました。一方、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令の勧告に至った事例は、2019年以降2件にとどまるとのことです。

この数字から、すべての遅延が悪質な違反だとは言えません。ただ、報告遅延が相当数ある一方で、課徴金勧告に至る事例がごく限られているなら、制度がどれだけ違反を把握し、処分できているのかは検証が必要です。

課徴金を引き上げれば、違反が見つかった場合の負担は増えます。しかし、違反を発見できず、処分にも至らないのであれば、罰則を重くするだけでは抑止力は限られます。違反によって得られる利益や、違反が見つかる確率を考えれば、制裁が実際に科されると市場参加者に認識されることが重要です。

把握と制裁を一体で設計します

制度の実効性を高めるには、二つの対応を組み合わせる必要があります。

第一に、実質的所有者をたどれるようにします。大口保有や海外ファンドについて、資金の出し手、運用者、議決権行使者などの情報を確認できる仕組みを整えます。すべての投資家の保有情報を常時集約するのではなく、必要な記録を保存させ、疑義が生じた場合に当局が関係者へ照会できるようにすることが現実的です。

第二に、違反が確認された場合の制裁を強化し、確実に執行します。課徴金の引き上げに加え、故意や反復、違反期間、保有規模などを踏まえて処分します。海外主体についても、国内で連絡や書類の送達を受ける窓口を確保し、調査や処分が届く制度にする必要があります。

実質的所有者の開示だけでも、厳罰化だけでも足りません。誰が保有しているかを事後に確認でき、違反が判明したときには制裁が実際に科される。その組み合わせによって初めて、「報告しなくても分からない」「見つかっても大したことはない」という期待を崩せます。

大量保有報告制度は、自己申告を基本とする以上、違反を完全になくすことはできません。それでも、実質的所有者の透明性を高め、事後調査と処分の確実性を上げれば、今より実効性を高めることはできます。問われているのは、ルールが存在するかどうかではありません。ルール違反を発見し、立証し、処分できる制度になっているかです。

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