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ニデックの意見不表明 決算を出しても監査できなかった理由

ニデックの意見不表明 決算を出しても監査できなかった理由

ニデックは2026年3月期に5,646億円の最終赤字を計上しました。大きな要因は、6,322億円の減損損失です。しかし、今回の決算で問われているのは、赤字の大きさだけではありません。監査法人のPwC Japanは、連結財務諸表について監査意見を表明しませんでした。

「意見不表明」とは、決算が誤りだと監査法人が断定したという意味ではありません。決算が正しいかどうかを判断するための十分な証拠を得られなかった、ということです。

監査法人が確認できなかったこと

有価証券報告書の監査報告書には、主に二つの問題が記されています。

一つ目は、不正に関与した役職員への対応です。

第三者委員会の調査では、売上の早期計上や引当金の過少計上、棚卸資産の過大計上、減損の回避などが確認されました。監査法人に不正確な情報を伝えたり、関連文書を隠したり、改ざんした記録を提出したりした事例も記載されています。

ニデックは、こうした不適切な会計処理を決算に反映し、関与した役職員の特定や人事上の是正を進めています。しかし、監査報告書によると、その措置は一部が完了していません。不正に関与した役職員の一部が、引き続き財務報告の責任ある立場にあり、後任者が責任を引き継いで適切に職務を行っているかも十分に確認できていないといいます。

そのため監査法人は、過去の不正がすべて洗い出され、決算に反映されたのか、まだ見つかっていない誤りが残っているのかを判断できませんでした。

二つ目は、減損損失と過年度の修正です。

ニデックは6,322億円の減損損失を計上しましたが、監査法人は一部について、減損額や計上時期が妥当かを判断するための証拠を得られませんでした。また、過年度の決算を修正する際に、当時入手できた情報に基づいて修正したのか、その後に判明した情報を過去にさかのぼって使っていないかについても、十分な証拠を確認できなかったとしています。

つまり、巨額の減損を計上したことだけでは、監査上の問題は解消しません。いくら損失を計上したかに加えて、その金額や計上時期を裏付ける資料があり、過去の修正が適切に行われたと確かめられる必要があります。

岸田社長の辞任との関係は、どこまで分かっているか

岸田光哉社長の辞任について、ニデックは、決算や過年度訂正の過程で、同氏に「財務報告に関し必ずしも適切とは言いかねる言動」があったと説明しました。

一方、監査報告書は、意見不表明の理由として、不正に関与した役職員への人事上の対応が未完了であることや、減損・過年度修正の妥当性を確認できる証拠が不足していることを挙げています。しかし、報告書は岸田氏の名前を挙げておらず、同氏の言動と、監査法人が確認できなかった事項との直接の関係も説明していません。

したがって、岸田氏の辞任が意見不表明を招いた、あるいは同氏が監査報告書で問題とされた役職員に該当すると断定することはできません。両者が財務報告をめぐる問題として関係している可能性はありますが、そこから先は推察です。

数字を出すことと、数字を確かめられること

今回の意見不表明は、会社が決算数値を発表したかどうかの問題ではありません。発表された数値について、監査法人が、その網羅性や妥当性を裏付ける証拠を得られたかどうかの問題です。

不正の修正が完了したと確認できるか。減損額と計上時期を裏付けられるか。過年度の修正が当時の情報に基づいていると確かめられるか。監査報告書が示しているのは、これらの点を監査法人が確認できなかったという事実です。

赤字の大きさは決算の結果です。意見不表明が示すのは、その決算を信頼できるか判断するための土台が、まだ整っていないということです。

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