「正解を知っている人」と「総論しか語らない人」は、なぜ危険なのか

「正解を知っている人」と「総論しか語らない人」は、なぜ危険なのか
私は、自分が正解を知っていると思い込んでいる人が苦手です。
もちろん、判断に自信を持つこと自体が悪いわけではありません。問題は、自分の結論を疑わず、前提が変わっても判断を修正しないことです。
しかし、危険なのはそれだけではありません。
反対に、総論ばかりを語り、各論に入らない人も危険です。
「本質が重要です」
「長期的な視点が必要です」
「全体最適で考えるべきです」
「柔軟な対応が求められます」
いずれも間違いではありません。むしろ、反論しにくい正しい言葉です。
ただし、これらを語るだけでは判断になっていません。
何を、誰が、いつまでに実行するのか。どの前提に立っているのか。何を優先し、何を捨てるのか。どの数値を達成すれば成功なのか。うまくいかなかった場合、どの時点で方針を変えるのか。
そこまで落とし込まれて、初めて総論は判断になります。
問題は抽象度の扱い方にある
「自分が正解を知っている人」と「総論しか語らない人」は、正反対に見えます。
前者は各論に入り込み、自分の答えを押し通します。
後者は抽象論にとどまり、具体的な判断を避けます。
しかし、両者には共通点があります。
それは、自分の考えを検証可能な形に置かないことです。
正解を知っていると思い込む人は、反対意見や反証を受け入れません。自分の仮説を事実として扱います。
一方、総論しか語らない人は、具体化しないことで反証を避けます。抽象度が高いため、どのような結果になっても、後から説明をつけることができます。
「全体最適を目指した結果です」
「環境変化が想定以上でした」
「現場との連携が不十分でした」
このような説明は、もっともらしく聞こえます。しかし、事前に具体的な仮説や数値を置いていなければ、検証のしようがありません。
判断には、総論と各論の往復が必要です
判断は、総論だけでも、各論だけでも成立しません。
総論は方向を示します。各論は実行可能性を確認します。
たとえば、「海外展開を進める」という総論があるとします。
それだけでは、まだ方針にすぎません。
どの国に進出するのか。なぜその国なのか。顧客は誰か。現地企業を買収するのか、自社で進出するのか。投資額はいくらか。何年で黒字化するのか。撤退基準は何か。
ここまで具体化して、ようやく判断になります。
そして、実行結果を見て、必要であれば総論に戻る。
「そもそも海外展開の目的は何だったのか」
「この市場を選んだ前提は正しかったのか」
「成長ではなく、撤退が合理的ではないか」
このように、総論と各論を往復する必要があります。
総論しか語らない人は評論家になります。各論しか語らない人は作業者になります。
経営に必要なのは、両者を往復できる人です。
判断OSで確認すべきこと
判断をするときには、少なくとも次の点を明確にする必要があります。
-
目的は何か
-
事実と仮説は何か
-
どの前提に依存しているか
-
他にどのような選択肢があるか
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何を優先し、何を捨てるか
-
成功をどの数値で測るか
-
何が起きたら判断を修正するか
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最終的に誰が責任を持つか
「本質が重要だ」と言うのであれば、その本質を具体的な行動に変換しなければなりません。
「柔軟に対応する」と言うのであれば、どの条件で何を変更するのかを決めなければなりません。
「全体最適を目指す」と言うのであれば、何と何のトレードオフを、どの基準で調整するのかを示す必要があります。
抽象論は、具体論に変換されて初めて価値を持ちます。
結論を持つことと、正解を思い込むことは違う
不確実な状況では、判断をしなければなりません。
「まだわかりません」と言い続けているだけでは、何も進みません。現時点での最善案を置き、実行することは必要です。
ただし、それは「自分が正解を知っている」ということではありません。
望ましいのは、
現時点ではこの仮説が最善だと考える。ただし、この条件が変われば判断を見直す。
という姿勢です。
そして、その判断を具体的な行動、数値、期限、責任者に落とし込むことです。
正解を知っていると思い込む人も、総論だけを語る人も、判断をしているように見えて、実際には判断の責任から逃げています。
判断できる人とは、総論と各論を往復し、仮説を明示し、実行し、結果を受けて修正できる人です。
必要なのは、正解を持っていることではありません。
検証可能な仮説を持ち、必要であれば捨てられることです。
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