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楽天とヘルシングの提携に感じる違和感

楽天とヘルシングの提携に感じる違和感

楽天グループが、ドイツの防衛スタートアップであるヘルシングと提携します。ヘルシングの攻撃型ドローンを陸上自衛隊に提案し、日本国内での量産化も視野に入れるということです。

防衛分野における日独連携、AI搭載ドローン、国産化。いずれも現在の政策テーマに合致しています。ニュースとしては非常に目を引きます。

しかし、現時点で公表されている情報を見る限り、楽天とヘルシングの提携には、事業上の必然性があまり感じられません。

楽天には、攻撃型ドローンを開発する技術があるわけではありません。防衛装備品を量産する製造能力も、防衛省向けの大規模な納入実績もありません。携帯電話事業を中心に大きな投資負担を抱えており、防衛分野に巨額の資金を投じられる状況でもありません。

楽天が持っているものとして挙げられるのは、通信事業、民生用ドローンの運用経験、防衛省との通信実証や災害時の協定、そして政府・行政との接点です。しかし、これらは攻撃型ドローンを自衛隊に納入し、国内で量産するための中核能力とは異なります。

仮にヘルシングが日本で防衛ドローンを展開したいのであれば、三菱重工、川崎重工、NEC、東芝、あるいは伊藤忠、丸紅などの総合商社と提携したほうが、製造、調達、政府営業、保守、既存の防衛サプライチェーンという点で合理的に見えます。

それにもかかわらず、なぜ楽天なのでしょうか。

現時点では、楽天がヘルシングにとって不可欠な存在だからというより、両社の広報上の思惑が一致したと考えるほうが自然ではないでしょうか。

楽天にとっては、「防衛」「AI」「ドイツ」「国産化」という政策性と成長性のあるテーマを一度に取り込むことができます。携帯電話事業の赤字を抱えるなかで、楽天が単なるEC・金融・通信の会社ではなく、国家インフラや安全保障にも関わる企業であるという印象を形成できます。

ヘルシングにとっても、日本市場への参入を発表し、日本政府や自衛隊との接点を持つことは意味があります。日本で実証試験を行う計画を示せば、アジア太平洋地域における事業展開の足場にもなります。

ただし、ヘルシングはすでにウクライナへの供給やドイツ連邦軍への納入を進め、巨額の資金調達も実施しています。楽天から資金や技術を得る必要性は高くありません。

ヘルシングが楽天に期待しているとすれば、技術や資金ではなく、日本政府への入口、日本市場での窓口、国内企業との接続でしょう。

逆に言えば、楽天はヘルシングにとって「日本への入口」の一つにすぎない可能性があります。楽天でなければならないというより、楽天でもよいという程度の関係に見えます。

楽天側も、現段階では防衛ドローン事業の実態を獲得したわけではありません。実証試験を行うとしても、実際の製造を誰が担うのか、通信・管制システムを誰が納入するのか、調達契約の主体は誰なのか、楽天がどのように収益を得るのかは明らかではありません。

国内量産を実現するには、最終的に防衛大手、電機メーカー、部品メーカー、商社、通信会社などを巻き込む必要があります。その段階で楽天がどの位置を占めるのかは、まだ見えていません。

したがって、現時点でこの提携を「楽天が防衛ドローン事業に参入した」と評価するのは早いでしょう。

実態としては、楽天が防衛・AI・国産化という成長ストーリーを得て、ヘルシングが日本市場への接点を得るという、広報上の相互利用に近いのではないでしょうか。

今後注目すべきなのは、提携そのものではなく、具体的な実行主体と資金の流れです。

誰が製造するのでしょうか。誰が開発費を負担するのでしょうか。誰が防衛省と契約するのでしょうか。楽天は売上と利益のどこを得るのでしょうか。既存の防衛企業は参加するのでしょうか。

これらが明らかにならない限り、今回の発表から楽天の事業価値を評価することはできません。

現状では、防衛事業の開始というより、防衛事業に関与していることを示すための提携発表という性格が強いように見えます。

戦略提携のニュースは派手ですが、事業の必然性はまだ確認できません。

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