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【書き起こししました】「スモールM&Aの現実をお伝えします~今、M&Aを成功させるために知っておくべき12の事実」

今日は2024年1月10日です。PBR1倍割れ企業が減ってきたことについて記事を書いたのですが、ひさしぶりに書き終わったあとに全部データが飛びました。もう1回書き直す気になれなかったので、3年前ほどの書き起こした動画セミナーの内容を再掲しますので、ご容赦ください。

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上記のコンテンツの書き起こしをしました。ご参考にしてください。長いです!覚悟してご覧ください。動画もあわせてどうぞ。

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こんにちは。
今日はスモールM&Aの現実をお伝えします。

今、M&Aを成功させるために知っておくべき12の事実というテーマでお話をしていきます。

なぜこのタイミングでこのテーマを選んだのかということですが、スモールM&A、個人M&A、マイクロM&A、要するに大企業だけではなく、中小企業や個人も含めたM&Aの業界というのは、ここ数年間で激変をしています。

いわゆるM&Aのマッチングプラットホームができただけではなくて、相当の案件数が日々掲載されるようになっていますし、実際に成約事例というのも相当出てきています。個人M&A、スモールM&Aに関する書籍もかなりの数が出てきていて、それを実際にご覧いただいて、実践されている方もたくさんいらっしゃいます。

M&Aの業者もかなり数が増えてきています。経産省、中小企業庁を中心とした国のサポートについても相当頑張っていただいているので、かなり環境が整ってきた。言い換えると、外堀が埋まってきた状態だなと強く感じます。ですから、今新型コロナウイルス の環境下ではありますけれども、スモールM&A、個人M&A、中小企業のM&Aに取り組んでいくにはとてもいい時期だと思っています。ただ足りないことがいくつかあるなと日々この業務に携わっていて感じる、また是非お伝えしたいことがあります。今日12のポイントという形でまとめましたので、是非皆さんに内容を確認していただき、皆さんのビジネスやM&Aの業務に活かしていただければと考えています。

早速内容に入っていきます。
最近このM&Aに関する動画も比較的頻度を上げてUPしています。今日のスライドの中には最近別の動画で取り上げているものもありますが、スモールM&Aの環境をとらえる意味では重要なものも含まれていますので、重複にはなりますけれども取りあげてご説明をしていきたいと思います。他の動画でも見たことあるな、他のセミナーでも聞いたことあるなと感じることがあるかもしれません。もしかしたら私以外の方も当然のように同じようなご説明をされているということがあってもいいと思っています。それだけ重要なことなのだろうなというふうに感じていただけるとありがたいです。

では、早速ですが、まず12のうちの1つ目。
M&Aアドバイザーという職業という職業があります。M&Aというのは、一般の企業の方にとってそんなに頻繁にあることではないと思います。特に、会社やビジネスを売るという方にとってみると、多くの方がそんなに経験することもないだろうし、あったとしても一生に一度の方が大半だと思います。なかには、二度三度四度と会社を作って売却をしていくというような強者もいらっしゃいますけれども、極めて限定された方だと思います。

買う方もそうですね。継続的に会社を買収して、会社をどんどん大きくされている方もいらっしゃいます。ただ、やはり全体の中ではごく一部で、仮に何回も会社を売ったり買ったりという経験をお持ちの方であったとしても、初めての経験の時というのはあるわけですね。その初めての時に、アドバイザーとして売りたい・買いたいという方についてアドバイスをしていくというのが、いわゆるM&Aアドバイザーという業務です。

簡単に「アドバイザー」と言ったり、よくあるのがこの表の右端にある「FA」ファイナンシャル・アドバイザーのことを略して「FA」というふうに言います。厳密な定義というのは、別にありません。というのは、FAに関しても、M&Aアドバイザーに関しても、公的な資格というのがありません。公的な資格がないということは、それを規定している業法というのがありません。公的な資格というのがどういうことか。例えば、弁護士なんかはわかりやすいです。弁護士というのは国が認定している資格です。で、その弁護士を認定するために、あるいは彼らを管理監督するために、弁護士法という業法があります。税理士も同じです。税理士も国が認定している国家資格です。税理士を管理監督するために税理士法という業法があります。

FA・M&Aアドバイザーには業法がありません。なので、明確な定義がないのです。弁護士や税理士には明確な定義がありますし、彼らはいわゆる独占業務です。言い換えると、弁護士や税理士の資格を持っていないとできませんよ、それは国が認めている免許の事業なのですから、というものがないんですね。なので、明確な定義がないのです。

一般的にどのように考えられているのかということと、もともとの語源「ファイナンシャル・アドバイザー」というからには、ファイナンスのアドバイスをしているはずなんです。それを私なりに分解して整理をしてみたのが、この表です。

左端に「マッチング」「アドバイス」「交渉」「買収資金調達」「手続」というのが、ものすごく大きく分けた時のM&Aの手続の項目です。M&Aアドバイザーやファイナンシャル・アドバイザーがやらなければいけない項目です。右端の「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」のところを見て頂くと、全部に丸がついています。「マッチング」とはどういうことかと言いますと、売りたいという方からご相談を頂いたら、買いたいという方を探してきて候補先と会わせることです。逆に、買いたいというご相談を受けた時に、売りたいと会社を探してくるということも、この中に含まれます。極端に言うと、ご自身で探してくると言う方はこの機能は必要ないですが、普通初めて会社の売買に取り組もうと考えた時に、なかなか自分の会社に適した買い手(買いたいという会社)、逆に売り手(売りたいという会社)を探すのは簡単ではないので、ここを専門家に頼みたいというニーズは間違いなくあると思います。

「マッチング」でA社から依頼を受けてBという会社を紹介して、円満解決、そのまま手続きに進みましょうというわけにはなかなかいきません。可能性がゼロとは言いませんけれども、やはり複数の候補先とあたって条件交渉をしていって、売り手・買い手にとってこの辺りがお互いに落とし所だろうというようなところを探っていかなければいけない。どういう相手と、どういうやり方で(これをスキームと言ったりします)M&Aをしていくべきなのかというアドバイス、あるいは、相手との金額や条件交渉等についてもFAに対しては求められています。もともとファイナンシャル・アドバイザーというのはファイナンスのアドバイザーですから、その非常に大切な機能として、買収資金の調達、買収する時にこういう資金調達の方法があるじゃないですかというアドバイス、投資銀行であれば場合によっては自分たちが資金を出すということも当然ありうると思いますが、そこも含めて最終的に資金の準備ができました、交渉が完了しました、条件が合致しました、じゃ、契約、デューデリジェンス、その他諸々の手続きをしていくという流れを全部を求められている、一般的にやると考えられているのがファイナンシャル・アドバイザーです。だから簡単にFAです、と名乗ることはなかなかできないのが本当のところなのです。

M&Aアドバイザーと言われている人と、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)の大きな違いは、M&Aアドバイザーは買収資金の調達まではやりません。というか、やれません、という点です。
もちろん気の利いた、あるいは人脈を持っているようなアドバイザーであれば、金融機関と紹介してくれたりというようなことはあると思いますけれども、主要な機能にはなっていない。ただし、それ以外の「マッチング」から「手続」までの機能は、M&Aアドバイザーに求められています。M&Aアドバイザーとして報酬を取るということになれば、少なくともこの「買収資金調達」以外の部分に関してはきちんとアドバイスできなければいけない。それができなければ、報酬を取れないんですね。報酬というのは、レーマン方式という方式で、これは大昔から決まっています。でもこれはFAの報酬なのです。買収資金の調達も含めた報酬の相場がレーマン方式です。次のページでレーマン方式については説明しますけれども、それにも関わらず、買収資金の調達はできませんということになると、本当にそれだけのバリューが皆さんが頼もうをしているアドバイザーにあるのかということは一度考えるべきなんじゃないかなと思います。それを考えるためには、FAとは何なのか、アドバイザーとは何なのか、それ以外の方は何をどうしてくれるんですかということを理解しておかないと判断することすらできないと思うのです。

次に行きましょう。
「ブローカー」
あえてブローカーというふうに言いますけれども、こういう方多いのです。何をしているのかと言いますと「マッチング」です。要するに、売りたいという方を見つけたので、あるいは相談を受けたので、買いたいという方に繋ぐ。基本的には以上終了です。ただこのブローカーという方が必要ないのかというと、僕はすごく大事だと思います。やはり、良い相手を見つけるということは非常に重要でかつ、難しいことです。なので、本当の意味で人脈、情報網を持っているような方に売りたい・買いたいという方を紹介してもらうことは何の問題もないです。ただし、M&Aのアドバイザーの業務というのはマッチングだけではなくて、手続きまでかなり広いのです。したがって、適正報酬という意味では、FAと比較してマッチング(相手を紹介する)だけのブローカーは低いのが当然だと思っています。ただ、ブローカーもFAもM&Aアドバイザーというのも今ごちゃ混ぜなんですね。その区別がほとんどできていなくて、M&Aの仕事やります、どういう契約にしましょうかという場面で、ネットで拾ったFA契約の雛形を使って契約をしてしまう。そうすると、ブローカーで基本的には案件しか紹介しませんよ、それしかできませんよというふうに考えられている方も、FA契約してしまっているのです。マッチングから手続きまでやりますというようなことが書いてある契約をしている。これ、ブローカーにとっても大きなリスクです。債務不履行ですから。契約書にやると書いてあることをやらずにお金を取ろうというふうにしているわけですから。ブローカー的な立場の方、アドバイザーという立場の方、FAという立場の方を使う方もよく理解をしておかなければいけないし、あなたは何をやってくれるのですか、どんなことをやってくれるのですか、それに対していくら払うべきなのですかというところを皆さんご自身で判断できるようになっていただきたいなと思っています。

もう一つ大事なこと。左端にある「専門家」について、ここではあえて分かりやすく「国家資格を持っている方」にしましょう。弁護士、税理士、公認会計士などの方ですけれども、彼らが得意とするのは一番下の「手続」です。条件が決まったので、株価算定の評価書を株主に説明するために出してもらいましょう、各種のデュー・ディリジェンスをやっていきましょう。当然ですが、契約書は非常に重要なものなので、再給契約書を弁護士に頼んで作ってもらいましょう、あるいはアドバイザーが作った契約書のドラフトを最終チェックしてもらいましょうというような手続に関することであって、マッチング、アドバイス、交渉、買収資金の調達というところは不得手な方が多いはずなのです。もちろん、弁護士で全部できる方というのは中にはいると思いますが、これは国家資格を持っている方、一般的な話をしています。ですから、弁護士に相談すればFAと同じようなことができるわけではないのです。中には弁護士でFAと同等か、それ以上の仕事ができる方はいます。いますけれども、それはごく一部です。一般的に言うと、こういう役割の中で、アドバイザーという名前が名刺に書いてある、自分はアドバイザーだと言っている方はたくさんいらっしゃるのですけれども、彼らのできるところ、強いところがどこなのかを、この表を見て是非考えていただきたい。で、丸投げしたらやっぱりコストは高くなるんですよ。アドバイザリー費というのが絶対に高くなる。なので、この中で自分たちにできることは一体何なのか、具体的に自分たちでやるべきことはどこなのかというところを一旦整理していただきたいと思います。これが今日の一つ目です。とても大事なことなので、少し丁寧にお話ししました。

次に行きます。
レーマン方式については次のページで説明しますと申し上げましたけれども、この表のことをレーマン方式といいます。「5億円以下の部分」について乗じる割合が5%というのはどういうことなのかというと、例えば2億円で株式の売買をしました。それについてアドバイザーにコンサルしてもらいました。報酬はいくらですか。2億円×5%の1,000万円というのがここの意味合いです。このレーマン方式のアドバイザリー報酬、これ以外を使っているというケースは非常に少ないです、ただし注意点がいくつかあります。一つ目は、最低報酬を設けている会社が大半です。

今日は中小、スモール、個人のM&Aのお話を中心にしていこうと思っているんですが、個人のM&Aは数百万円で普通に売買されます。例えば、200万円である事業を売却したとします。200万円の5%は10万円です。10万円の報酬で200万円の会社のアドバイス業務をやるかというと僕はできません。採算が合わないからです。できませんし、やりたくありません。なので、会社それぞれですが、最低報酬というのを設けます。それが50万円であったり、100万円であったり、500万円であったり、場合によっては2,000万円であったりというような最低報酬を設けることがあります。最低報酬2,000万円ですという会社と契約をしてしまって、例えば500万円をしたら、2,000万円の報酬を払わなくてはいけません。普通、売買する前に気付くので契約自体をしないと思いますけれども、最低報酬というのがあるのだということは注意しておいてください。通常HPとかに最低報酬は書いてあると思いますけれども、契約をする時によく注意してください。最低報酬というのは、アドバイザーをする会社からの皆さんに対する重要なメッセージなのです。どういうことかと言うと、最低報酬が表しているのは我々が中心に扱っているのは、その最低報酬をいただける以上の案件ですよということです。例えば、最低報酬が500万円ですということになると、うちは大体1億円で売買される案件を中心にやっています、ということです。1億円で売買する場合、1億円×5%の500万円がアドバイザーの報酬になります。なので、それ以下の案件をやってもいいですけれども、うちは1億円以上の案件を中心にやっているわけなので、例えば8,000万円で売却したとしても500万円はいただきますという考え方です。最低報酬2,000万円ということになれば、そのサイズがもっともっと大きくなるということなので、最低報酬から相手がどんなお客さんを相手にしているのかというところをしっかり見極めていただきたいなと思います。

もう一つ大事なことがここにはあって、このスライドの下の方に書いてあります。パーセンテージがありますよね。これ、何にかけるのかということについては会社によって全然違います。さっき例えば2億円の株式譲渡をした時に報酬はいくらですか、2億円×5%の1,000万じゃないですかとサラッと説明をいたしました。必ずしもそうではないのです。例えば、移動純資産、移動総資産なんていう金額をベースに計算されるケースがあります。その移動総資産も簿価であったり時価であったりということで、これまた変わってくるのです。売り手と買い手によっても違います。2020年の今この動画を撮っている時点で言うと、買い手の方が報酬が高くなるケースが多い。売り手の方が比較的報酬が少なくなるケースが多いです。具体的にお話ししますと、2億円で株式譲渡したケースを考えていきます。売り手の方は2億円で株式譲渡できたので、2億円が自分の懐に入っています。これに対しては、一般的には2億円×5%の1,000万円を報酬として取られます。これも会社によって違いますので注意していただきたいのですけれども、買い手は2億円ではなくて、例えば移動総資産。2億円で会社を買収しましたが、その会社のバランスシートを見ると総資産は10億円ありますということになると、10億円がこのパーセンテージをかけるベースになります。10億円の場合どうなるのかというと、5億円までが5%ですから、5億円×5%と、5億から10億までが4%ですから、5億×4%をたす。加重平均からすると4.5%になるはずなので、10億×4.5%の4,500万円かかるということになります。売り手は1,000万円の報酬、買い手は4,500万円の報酬を支払わないといけないというケースが多いです。これは当然FA契約やアドバイザリー契約をする時に、契約書には明記されていますし、基本的にはその説明はするはずですけれども、その報酬が皆さんにとって妥当なのかということはよく検証する必要があります。皆さんが買い手だとして、移動総資産にレーマン方式の金額をかけて、それはさすがに高すぎるじゃないの?もっと悪く言ってしまうとぼったくりなんじゃないの?と感じられたとするじゃないですか。これは人それぞれなので、感じる方もいらっしゃれば、感じない方もいらっしゃると思います。そこでぼったくりなんじゃないの?というふうに思ったらやめればいいんです。確かに良いものではあるんだけれども、あまりにも金額が高いのであればやめちゃえばいいんです。ただし、今そういった価格設定がされているということは、そのサービスを利用している方が世の中にはたくさんいるということです。だから、皆さんがただ高いな、これだとやっていられないなということだけで判断をしてしまうと、たぶん今バリバリにM&Aをやっている会社さんからすると、言い方は悪いですけれども厄介な客になってしまう可能性があります。そんなこと言うのだったら、うちのサービスを買ってくれるお客さんはたくさんいるので、他に行って頑張ってよとなってしまう可能性があります。問題は、特に買い手にとって何でそんなに高いFA報酬がスタンダードで多くの方が利用しているか、という点です。私はこれ、全然ぼったくりだとか思っていないです。ただ自分だったら使わないだろうなと思う時があります。移動総資産にかけてFA報酬を払わなければいけないとすれば、ちょっと高すぎるな。よっぽど買収金額を減額してくれるような交渉をしてくれるのであれば話は別だけどなというふうに思っています。これは、あくまでも個人の感想です。

次のスライドに行きます。
買い手のFA報酬が高いという背景を説明したいのですが、そもそもM&Aが成功する要因というのは、買い手が売り手よりも圧倒的に経営能力があることだと思っています。オーナーが変わって経営のやり方が変われば一気に価値が上がる、売上が上がる、利益が上がるという期待値が高い場合、そして、買収をした後に具体的に何をいつどうやるのかというイメージが買い手にはっきりある場合です。これは、買収した後にいわゆるシナジーというのがガンと出てきますから、売る前の会社よりもはるかに採算性が高くなる可能性が高い。将来のことなのでやってみないと分からないですけれども、買い手が明らかにそう考えているがベストだと信じています。すでに買収で実績を重ねている会社で言えば、今まで何件もやって成功事例もあるという状態です。

その反対に、良くないのが明らかに売り手に力がある場合です。売り手の経営者の力があって、買い手より明らかにその力がある場合というのは、結構リスクが高いです。しかし、やりようはあります。

会社の規模が大きければ、新規事業を取り込んでいくとかいうような発想で、自分たちの会社にない能力・サービス・発想・技術を持っているという会社を買収するということはあるのですが、その場合であっても、ものすごい才能があるスタッフが揃っている、あるいはものすごく素晴らしいツールがある、ものすごく素晴らしいプロダクトやサービスがある。それは確かにうちでは敵わないけれども、うちには販路があるよ、営業力があるよ、物流網があるよと、だからめちゃくちゃ良いものなのだけど、自分たちでやっていてもそれ以上なかなか売れないじゃないですか、うちには圧倒的な販売力、物流力があるわけだから、一緒になったらかなりの確率で売上が増えていくだろう、というような状況はどうでしょう。これも経営力なのです。すべての面で買い手が上回っている必要ないのですが、売り手よりも明らかに優っている経営力、経営力というのは具体的に何なのかというのはさっきご説明しましたし、実際は案件によってケース・バイ・ケースですが、圧倒的な経営力がないと非常に失敗しやすい。で、これは案件のサイズが小さくなると余計この傾向があります。会社の組織がきちんとできている会社同士のM&Aであれば、そこまで心配する必要はありません。いわゆる上場会社同士のM&Aなどです。ただこれが個人とかスモールM&Aということになってくると、非常に個人に依存する部分というのが、組織ができている大企業や中堅企業を比較すると、めちゃくちゃ大きいんですよね。なので、圧倒的な経営力を持っているというのが、M&Aの成功要因の一つだと思っています。意外とそれがないのにもかかわらず案件を買収してしまっているという場合が結構多いです。自分はノウハウがなにもありません、現場に任せておいて何とかなるんじゃないんですかと思っている。よほど人心掌握に長けた方とか、現場とのコミュニケーションを重視する方でないと、お金だけ出して放ったらかしにされたら普通動きませんよ。なので、結果的にうまくいかないケースも多いです。一番まずいのは、自分にそのノウハウがないので、現場に働いている方に辞めますと言われたらもう終わり、というケースです。自分は代わりができないんですから。その業界に詳しくないので、その実務に長けた方を自分のよく信頼できる方、友人を通して採用できるかと言ったら、採用できないじゃないですか。だから結構しんどいのです。私はこの業界をもっともっと長い目で成長させていきたいと考えているので、将来のことはわかりませんけれども、売買する前にこれはどうやったってうまくいかないだろうなと思うような案件に関しては、あんまりお勧めしてないですし、紹介していないです。たたし、このスライドに書いてありますけれども、勘違い案件と言っている何となくできるんじゃない?この程度の金額であれば。といったノリで売買をするというケースも頻発しています。例えば、会社にキャッシュが3億円とか5億円あって2,000万円、3,000万円ぐらいなら、M&Aやったことないしやってみるか、それで2,000万円、3,000万円損したということであれば、会社全体としてはそんなに影響は少ないんですけれども、ただ実際現場で働いている方のモチベーション等々を考えるとたまったもんじゃないですよね。もちろん、一生懸命やりました。事前の見積りやシミュレーションではうまくいくと思っていたけれども、結果的にうまくいかなかったということであれば誰も責めることはできませんけれども、はじめからどう考えてもできないでしょというような案件、マッチングというのは結構多いんですね、そこを狙ったアドバイザーもおそらくいます。なので、皆さんは自分たちでどういう会社とくっついたらうまくいくのかということを考えて調べて行動できるような力をつけていただきたいなと思います。

今日の4つ目のテーマになりますけれども、ボジティブなワードではないのですが「三密」。距離的に近い、業種が近い、関係が近い。僕はこの3つの密というのがスモール、個人のM&Aの鍵だと思っています。あくまでも成功確率が高いという意味です。もちろん、ものすごく能力のある方は、距離的に遠くても、業種は離れていても大丈夫です。関係は密じゃないとなかなか難しいと思いますけれども。成約してうまくやっていけるんじゃないかと思います。会社のサイズが小さくなればなるほど、結構きついんです。

距離的な話をします。オーナー社長が立派な方で、社員5人で事業をやってらっしゃいます。事業承継したい、ですからオーナー社長は抜けられる予定です。5人の会社における社長の役割というのはとても大きくて、経営全般を見ているというのも当然ですけれども、経営者自身が実務も相当やっているはずです。例えば板金工場の社長でいらっしゃれば、資金繰り、経営、お客さんとのやりとり等々、経営全般に関する力があるということはもちろんのこと、板金の実務に関しても結構手を動かしてやられてる、技術力も一番あったりするケースって多いのじゃないかと思います。事業承継の案件なので、さすがに朝から晩まで現場に出て板金工場をやっているわけではないけれども、残る4人の社員の方の作業のチェック、アドバイスみたいなことをやっているケースというのは多いのじゃないかと思います。その一番重要な方が抜けてしまうわけなので、一般的にはどうしてもそこを補填しなければいけないわけですよ。だって5人でやっている会社の一番できる方が抜けてしまうわけですから。じゃあ例えばこの会社というのが長崎にあったとします。そして買いたいと言っている会社が東京であると。社長が抜けてしまうわけだから、社長の代わりを入れなければならない。本社はそこそこ大きくて、実務もできるし経営もできるという部長クラスが1人います。転勤もしてくれると言っている。そこまでの条件はなかなか揃わないと思いますが、まあ良い条件じゃないですか。そういう条件で長崎に転勤で、出向で行ってもらうとなったら、めちゃくちゃコストかかりますよね。この人の1年分の人件費は買った会社で持たなければなりません。社用での転勤になりますから、現地での生活費、家賃その他諸々ですね。東京への出張なども結構あると思います。軽く1,000万円くらい飛んでいってしまいます。5人でやっている会社に利益が1,000万円出ていたとしたら、めちゃくちゃ優良会社だと僕は思いますけれど、その1,000万円が飛んでしまうんですね。こうすると、売り手としては1,000万も利益が出ているのだから、まあ何千万円かで売れるんじゃないのというのはごもっともです。ですが買い手からすると、買ったら1,000万円経費がかかっちゃうから利益が飛んでしまうわけで、だから金額はほとんど出せません。これではさすがにマッチングしないんですよね。条件が合わないんですよね。なので、できれば近隣の方、長崎県の隣町あるいは隣の隣の市に会社があって、そこから車で1時間かけて通えますとなってくれば、買った会社の社長が午前中は当面毎日行きます、まあ午後でもいいんですが。そしてその4人のキャラクターのチェック、お客さんのチェック、あるいは場合によっては教育、その中でリーダーを育成するという作業が事実上持ち出しがほとんどなくてできますよね。そんなことをやろうと思ったら、同業じゃないとなかなか難しいんですよ。

飲食店を50店舗やってらっしゃる社長がいたとして、経営力は確かにありますが、実務はできないのですよね。そうなってくると、業種も近い「密」である必要であるかなと考えています。もちろんこれだけが全てではないのですが、成功確率が高いという意味、再現性が高いという意味で言うと、この三密の条件というのは非常に大事だと思っています。距離的にも近くて業種も近いような業種の売りたい先や買いたい先を探すのに、一番適した人は誰なんだっていう話なんです。僕は皆さんだと思います。どんなに大きいM&Aのアドバイザリーの会社であったとしても、全国の全ての業種、全てのサイズについて案件情報を持っているわけではないです。特に、サイズが小さくなればなるほど、はっきり言って業者にとってみればあまり儲かりませんから、なかなか本格的に動かないはずなんですよ。ついでに言えば、小さい会社というのは経営管理もちょっといい加減なところも多いので、アドバイザリー業務をやろうと思うと大変なんです。レーマン方式に当てはめてみると報酬も安い。だからやらないんですよ。だとすれば、自分たちで相手を探すという選択肢を持たなければ、M&Aなんていうのはうまくいくはずがないですよね。なので、自分たちで売りたい・買いたい会社を探しましょうねというのは一つのメッセージなんですけれども、もちろんそれと並行して、案件を紹介してくれる会社、アドバイザリー会社、これ金融機関も含みます。金融機関も特に地場の事業承継の案件、相談なんていうのは、彼らは情報を持っているはずですので、あるいは、インターネットのマッチングサイトも含めて、そこから情報を取ることも当然やります。プラスα自分たちでもどんな会社がいいのかな、どんな会社だったら売ってくれるのかな、あるいは、業界団体その他等々で、同業者、それに近い経営者同士のコミュニケーションってあるはずなんですよ。そういったところで探りを入れていく。あの会社はいい会社だ、明らかに技術もある、お客さんもついている。でも社長はもう70代後半のはずだよねと。いつかは代わらなきゃいけない、事業承継しなきゃいけない。でも、自分たちが知る限り明らかな後継者というのは見当たらない。これは、彼らも探してるはずなのです。頭のどこかで後継者を探さなきゃいけないなと思っているのだけれども、具体的に何をしていいかわからないわけなので、行動になかなか移せない。自分たちで情報をとっていくということをしっかりとやって行かなければいけないと思っています。これが4つ目の項目です。

三密のM&Aを幅広く実行するために、必要な要素は2つあると思っています。1つは、まず自分たちが知識をつけることです。M&Aについて何も知らないなら、業者に丸投げしなければいけなくなってきます。でも、やっぱりそんなに大量のコストは使えない。そうすると、安いところを探すことになる。安いところを選ぶ、しかも自分たちは何をしてくれるのかよくわからないということになると、成果は出にくいです。なので、いい業者を使う、探すという観点であったとしても、M&Aって何なのかな、M&Aって具体的にどんなことやるのかなということを、どこかでしっかりと学習していただく、情報を取っていただく必要はあるのかなと思います。で、あくまでもそれは勉強なので、それだけでは僕は不十分だと思います。勉強はして欲しいのですが。勉強した後、あの会社に関心があって交渉してみたいと具体的にどうやったらいいの?あるいは、もう話をしてみたら思った以上に相手の社長が乗ってきたと。これから先どうやって交渉していけばいいんだ?一体何をすればいいんだ?というようなことを相談できるネットワーク。多分この2つが必要なんじゃないかなと思っています。私が今やっている「日本M&Aアドバイザー協会」というのは、この2つを提供していますので、是非「日本M&Aアドバイザー協会」というキーワードで検索して、その情報は取っていただきたいなと思います。もちろん、我々の協会だけでなくて、よそのネットワークでも全く問題ないです。情報をきちんと取る。それを相談できるネットワークであるということであれば、我々の協会が絶対ではありませんので、良く調べて吟味していただきたいなと思います。せっかくこの動画を見ていただいた方は、まずうちの協会のことを調べていただけるとありがたいなというふうに思います。

では、次です。
冒頭にお話しした専門家からFAの表です。マッチングから手続までの機能があるんですが、自分たちでできることって何なんだろうなということなんです。マッチングから手続まで全て同じ業者に任せるべきなのでしょうか。一般的にいうと、これ全部任せないと契約をしてくれません。なぜかというと、それだけいい売り案件が少ないのです。なので、いい売り案件がきたと、ああこれうち関心あるな、業績も悪くないし、経営管理もしっかりできているし引継ぎしやすそうだというような会社の情報って滅多にないのが実状です。そういう情報が来た時に、一生懸命探している会社であればあるほど、その情報がどれだけ価値があるというのがわかるのです。なので、報酬が多少高くても、待っていたってこないよと。今まで2年、3年間いろんな業者に声掛けて相手を探していたけれど見つからない。今回千載一遇のチャンスなのだからやらなければいけないということで、高い報酬を払って買収に動くという会社が多いのはある意味当然なのです。ただ、それは売りたい・買いたいという情報をタダだと思って待ってるだけだからです。であれば、何年かに一度、ああこれは千載一遇のチャンスだなというように来る案件をやっぱり多少コストがかかっても買収しにいかないと、買収という目的を達成できなくなってしまう。自分たちで動くということがまず大事だと思います。したがって、マッチングに関しては、先ほどから何度も申し上げているように、自分たちで探すということも含めて検討するべきだと思います。で、順番にこの後のスライドで説明していきますけれども、アドバイス業務、これうち会社の本当の味方って誰なんだと観点で説明をしていきたいと思います。交渉、買収資金の調達、手続というところも、次のスライドで一つ一つ説明をしていきたいと思います。

まず、自分たちで「良い案件」を探せないのでしょうかという論点です。この「良い案件」というのが結構曲者で、「良い案件」って定義できますか?意外と難しいんですよ。で、「良い案件」というのは、めちゃくちゃ抽象的な表現なので、まずそもそも自分で自分の会社に何が必要なのかというのを調べ抜きましたか?考え抜きましたか?そのために、自分の業界、あるいは新規事業を取りにいこうと思ったら、その業界を本気で分析していますか?もっと大事なことは、社長は関わっていますか?経営トップです。M&Aというのは、売るにせよ、買うにせよ、極めて重要な経営判断です。しかも、不確実性はめちゃくちゃ高いです。この会社を買ったら100%成功するなんていう保証は100%ないです。将来を見通さなければいけない。しかも、自分たちに圧倒的な経営力があって、買おうとしている会社を変えていかなければいけない。発想もめちゃくちゃ必要ですし、ものすごく分析をした、発想をした、チェックもした、デュー・ディリジェンスもしたと言ったって、当初の想定通りに動かないことだらけです。だって今まで縁もゆかりもない会社を買って、そこの人たちを使って経営していくわけですよ。簡単なわけありません。だからこそ、経営トップが関わっていないとうまくいくわけないのです。なので、社長が動かないと「良い案件」なんて探せません。そもそもうちの会社にとっての「良い案件」という定義ができません。じゃあ、そういうような準備ができている会社であれば、明確な買収ターゲットや予算が決まっていますか?こういう会社が欲しい、予算はここまで、で、意思決定はこういう形でします、しかもそれ公開してますか?できればインターネットのHPにも載せてしまった方がいいと思います。今そ。のM&Aのマッチングサイトをやっているような会社でも、うちの会社はこういう会社ですと、この先こんなことを考えています、だからこんな会社があったら買収したい、どんどんうちのアドバイザーに言ってきてくれというような露出の仕方をしているサービスも出てきています。中には、インターネットのHPに買収の報酬を載せているようなところもあります。業界内であの会社は買収に実績があるということになると、直接買ってくれませんかという相談もきます。あるいは、いわゆるブローカー的な立場の方々が、あの会社は今まで何件も買ってうまくいってると。案件紹介しろよと。これはアドバイザーも同じですが、というふうになってきます。これは買いたいという方にとってのお話なのですけれども、まず自分たちで明確な買収ターゲットや予算などを決めます。で、それを積極的に外にもアピールしていかないと。で、それによって向こうからも来るという門戸を開いておかなければいけないと思います。で、こんなことをやるのであれば、経営トップが関わっていないとなかなか難しいです。現場に丸投げしてできる仕事ではないのじゃないかなと僕は感じています。

次、8番目になります。
「本当のウチ」皆さんの会社にとっての話になりますが、本当の味方とは誰なのか。顧問弁護士、顧問税理士は確実に皆さんの会社の味方なのです。間違いありません。では、彼らにM&A、買収の相談をしておけば万全なのか。これは、ケース・バイ・ケースです。一般的に優秀な弁護士・税理士の方というのは、リスク管理に強い。弁護士というのは、会社に損をさせない。税理士というのも基本的にそうです。損をさせないというのが、彼らのファンクションだと思っています。なので、優秀な方であればあるほど、買収いいんじゃないんですか、でもこんな点、こんな点、こんな点にリスクがありますよね、社長どうしますか。というような話をおそらくしてくるはずです。優秀な皆さんの本当の見方の専門家の多くの方というのはですね。で、「ウチ」(皆さんの会社)を思って反対をすることもあるはずです。と書いてありますが、顧問の先生にこの会社買収したほうがいいかな?と相談して、やめておいた方がいいんじゃないですか、あるいは、こんなリスクがあるけれども大丈夫ですか?と言われてやめてしまう。これは結果的にこれで良いということもあると思うんですけれども、これだけだと足りないんですよ。だって、彼らはリスク管理の専門ですから、社長のことを考えて、こんなリスクもあるよ、気をつけてやらないというふうに、良かれと思ってアドバイスをくれています。M&Aというのはリスクだらけですから、大抵の場合これは正しいんです。じゃ、なんでやるんですか?そうは言ったって、確かにリスクはあるけれども、今のまま事業を続けていったところで、10年後にうちの会社があるかどうかはわからない。そんな会社たくさんあると思うんですよ。だから、規模をとっていかなければいけない。少し領域を増やしていかなければいけない。販路を広げていかなければいけない。扱える商材を増やしていかなければいけない。その一つの手段として、今回のM&Aを考えています。要は、上振れ要因がたくさんあるんですよ。で、これだけ可能性がある、業績が上振れする要因があるので、買収を考えていると。だから、先生たちの意見も聞きたい。マイナス要因はどれだけあるのか、トータルでプラスであればちょっと抽象的ですけれどもちょっとイメージを持って頂きたいので、あえて抽象的に話すと、トータルでプラスであれば買収すると意思決定していいんじゃないですかということです。なので、顧問の先生は間違いなく味方なんですよ。味方なんですが、M&A、買収を検討するという感覚で言うと、ちょっと論点がずれてしまうということが多いです。なので、そこだけ注意しておいて頂きたいと思います。

戦略コンサルというのは味方になり得ますけれども、戦略の丸投げというのはやめた方がいいと思います。戦略を決めるというのは皆さんの仕事ですから。例えば、この業界に出ていきたい。でも知見がない。だから、この業界の分析をしてくれというような戦略コンサルというのはコンサルタントに頼むことは、僕は全然ありだと思っています。そうではなくて、うちの会社どうしていいのか全然わからない、とりあえずM&Aがしたい、どうしたらいいかなというふうに戦略コンサルに丸投げをすると。今ものすごく馬鹿そうに言ってますけれども、表現の仕方が違いますが、側から見るとそういうふうにコンサル使っているとしか思えないケースというのは結構ありますよ。社長が知らないだけで。なので、やはり社長が関わっていないと、自分が中心となってスタッフを使って買収、売却を考えていかないとダメだと思います。で、大事なことは、弁護士・税理士・コンサルタント・アドバイザーも含めてなんですけれども、まず本当にウチの味方になる方を探さないといけないんですが、その味方をコントロールできる力というのが必要です。さっき言ったように、弁護士から悪いことばかり言われると。でも彼らの仕事はそういうことなので、言い方は悪いですけれども、それを跳ね返せるような上振れ要因、これだけ可能性があるんだと、リスクがあるのは先生方に言われてよくわかったと。でも、トータルで考えてやるべきなんだと。先生たちも理解してくれると。それでも気をつけておかなければいけないリスクって一体何があるんだと、あるいは、契約で一体どういうものを入れなければいけないだろうと、税金を払うときにどういうことに注意しなければいけないんだろうと、脱税になったら困りますからね。契約違反になったら困りますからね。というようなことを、オーナー社長が中心となってコントロールできなければいけないと思います。もちろん、弁護士よりも法律の知識をつけろということではありません。それはたぶんそれは無理です。そうではなくて、ビジネスを進めて発展させていくためにM&Aをやっているわけなので、その目的のために彼らの力を借りると。そういう力を作っていくということが大事だと思います。一番いいのは、弁護士・税理士等でそういったバランス感覚も含めてアドバイスできる方がいるとベストなんですけれども、これは結構難しくて、巡りあわせの観点もあるかなと思います。なので、きちんと皆さんの味方である専門家、アドバイザーも含めて、意思決定者である社長がコントロールできるように知識をつける。で、困ったというときに相談できる相手を作っておくということが、ここでのポイントかなと思っています。

交渉に行きます。
「交渉を弁護士に任せるべきなのか」ということです。代理人として、弁護士は適任だと思います。ただ、利益相反そのものを調整できる弁護士に巡り会うことは、弁護士の性質上難しいと思います。どういうことかと言うと、弁護士の多くはリスク管理、リスクを抑えることの専門家であって、ポテンシャルを何倍にも伸ばす、可能性があるのでそこに突っ込んでいってビジネスをガーンと伸ばすということについてはあまり得意ではありません。もちろん、そのバランスを両方をも持っているというバリバリの弁護士も探せばいるんでしょうけれども、たぶん報酬がめちゃくちゃ高いです。それだけできれば当たり前なんですけれども。一般的にいうと、そのリスクをきちんと抑えていただけるという方が弁護士の意見を聞いて、バランスをとって相手と交渉していくということが必要になってくると思います。なので、ご自身が中心となって交渉できればいいし、弁護士からリスクの話を聞いて、相手の要望を聞いて、自分たちが落とし込める落とし所を考えて交渉していくということができるといいんじゃないかなと思っています。そこが、通常アドバイザーがやることなんですよ、我々も当然弁護士にも取引の中で関わっていただくんですけれども、弁護士は基本的に片方についています。買い手であれば、買い手の利益のことを考えて、彼らは発言してくるし、指摘をしてきます。ただ、買い手のメリットになることは、売り手のデメリットになりますから、それをずっと主張し続けているだけだと結局交渉になりません。そこで、そこのバランスをとったアドバイスをしていくというのが、アドバイザーの業務なんですけれども、ご自身がそのバランスをとって交渉していくというのも一つのやり方だと思います、なぜかというと、アドバイザーを使うとコストがかかりすぎると。うちではアドバイザーに払うコストもないし。M&Aの交渉の代理人として弁護士を使うコストもないということであれば、自分たちでそういうバランスを取れるようになっていくということでもいいし、当事者同士で交渉している中でどうしても条件交渉が揉めてしまったと。で、そこに弁護士を代理人として入れるという交渉の仕方もあると思います。いずれにしても、ご自身たちで交渉できるような力とか情報を持っていた上でアドバイザーを使う、あるいは、一部だけ弁護士に出て行ってもらうというやり方をしないと、コストがめちゃくちゃかかってしまいますということです。ここは大事なことなので、アドバイザリーフィーをしっかり払って、優秀なアドバイザーにやってもらう。そこに弁護士にサポートをしてもらうということでももちろん構いませんし、M&Aの大堂はそういうふうに進んでいます。ただし、個人・スモールM&Aということで、そこまでのコストはかけられないとなったら、自分たちがある程度の交渉、あるいは交渉の管理みたいなところを専門家の代替していかないとできなくなってしまうと。その点は注意をしておいて頂きたいというふうに思っています。

で、次に資金調達。
資金調達は金融機関の本業ですから、今はちょっと景気がかなり厳しい状態になっていますので、買収資金の融資はやると思いますが、優先順位は下がると思います。ただ、金融機関の本業ですから、金融機関に任せていいと思うんです。一方で、金融機関もM&Aのアドバイザリー業務をやっています。金融機関は自分たちの融資先の情報を企業の内部の方を除けば一番持っていると思っていいと思います。金融機関は、M&Aをするには最強なんですよ。ただし、融資先同士で売り買いが成立するという前提です。ついでに、資金の融資もできるじゃないですか。なので、とても有利なんです。ただ、お金も貸しますよと。この会社買収したらどうですか?と信用している銀行に言われる。これをあまりやりすぎると、「優越的地位の濫用」と言って、銀行もそれやりすぎだよねと監督される可能性もあって、そのジレンマに悩んでいるというところもあるんです。で、先ほど申し上げたように、金融機関というのは、お金を貸して回収していくわけなので、当然情報を相当持っていますから、その中でマッチングができるなら最強です。でもそこを外れてしまうと弱くなってしまう。さらに、金融機関の都合から考えると、自分の融資先で業績がすばらしい安定している会社がありますと。一方で、あまり業績が良くない会社がありますと。その業績が悪い会社というのは、もしかしたら貸倒になる可能性がある。貸倒というのは、貸したお金が返ってこないということですけれども、それは困りますよね。財務的に余裕のある会社に買収してもらえれば、その会社が実際に例えば保証するとか、その会社にお金を貸して、また子会社として親子ローンでお金を貸してもらうというようなこともできるので、自分たちの回収可能性が高くなります。金融機関なので、そういうことを考えても当然です。というような事情のもとに、案件を紹介してくることもあります。もちろん、そんなのうちはやる意味ないからと断ればいいだけの話なんですけれども、金融機関は金融機関で自分たちの都合がありますので、そういうことも含めて理解しておくことも大事なのかなと感じています。

11個目です。
コンプライアンス、遵法手続、これはもうプロに任せるべきだと思います。
・契約書の作成レビュー
・登記
・各種手続
これについては、我々がフルパッケージでアドバイザリー業務をいただいたお客様に対しても、僕らはやりません。契約書のドラフトは言われれば作ります。言われない場合もありますけれども。で、そのドラフトをベースに最終的なチェックをしてもらうのは弁護士です。そのことを「契約書のレビュー」と言いますけれども。また不動産の移動が伴った場合、あるいは役員の変更が伴った場合、その他諸々、陶器に関する手続は司法書士の方にお願いします。その他、許認可に関する手続も諸々ありますけれども、これは各々のプロに我々も委託します。皆さんがアドバイザーを使う、使わない、あるいは使うとしても限定的に使うというやり方をする場合でも、これらの役割というのはその筋のプロに任せるべきだと思います。これはほぼ一択です。登記とかは自分で何件もやったことがあるという経験があるんだったら、ご自身でやるという手もあると思いますけれども、そうでない場合、ミスも結構起きがちですので、ここは僕はプロに頼むところなんじゃないかなと思います。手続というところですね。

最後です。
情報の価値を理解して頂きたいなと思います。タダより高いものはないとよく言われますけれども、今事業承継に関しては、引継ぎ支援センターがかなり頑張っています。去年1,000件近く成約案件があったんですけれども、これ結構驚いています。相当な伸び率です。官のサービスは本当にありがたいです。これによって、譲渡先が見つかった方が年間で1,000件近くいるわけですからすごく大きい。ただ、タダですよね。タダには限界があります。これ、国の予算でやってるわけですから、ここから先10倍、100倍に件数を増やしていかなければいけない時に、国はずっとそのお金を持ち続けることは僕はできないと思います。限界があるので、情報にはある程度お金を出すべきなんじゃないかなと思っています。
で、「成功報酬の本当の意味を知る」ということなんですけれども、成功報酬というのはなぜ成功報酬が成り立つのか。一つは、成功するのが難しい話だからなんです。確度が低いので、売れたら買えたら報酬くださいね。ただし難しいことなので、もし売れたり買えたりしたら結構お金いただきますよというのが成功報酬です。で、我々アドバイザーの立場からすると、成功報酬って一銭ももらってないわけですから、やりたくなければ途中でやめればいいんです。これすごく悪い言い方をしてますけど。成功報酬の中で優先順位をどうしてもつけなければいけないですね。例えば、今私が10件同時進行で案件をやっていますと。全部成功報酬ですといった時にどこから手をつけるのか。高く売れるところ、あるいは、早く売れるところ、その可能性が高いところからやらざるを得ないです。売れないとお金になりませんから。というように、業者の方は考えていますので、本当の意味で自分たちのために動いてもらいたいのであれば、着手金を払って彼らに動いてもらうという手を取るのも一つの手だと思います。それも情報の価値を認めるということの一つなんじゃないかなと思います。できるプロを使うというのはどうしてもお金をかかりますので、無尽蔵な予算は誰にもないわけじゃないですか。となってくると、まず自分自身が会社を売るって何をしなきゃいけないの?会社を買うって一体何をしなきゃいけないの?相手を探すためにはどんなことをしなきゃいけないんだ?で、実際やり方はわかった、実際やってみた、でもさ、リストを作ったけれど、この次はどうすればいいの?というような状況になった時の相談相手を作っておくということが、僕は大事なんじゃないかなと思います。今のM&Aの業界で一番の問題というのは、いわゆる優良な売り案件が少ないということなんです。優良な売り案件を持っているところは報酬が取れるんです。それだけ希少価値が高いわけですから、当たり前のことなんですよ。その原因の一つは、ご自身たちで動いている会社じゃない会社は、そこからお金で情報を買うしかないじゃないですか。というところで、コスト高になってしまっているということなので、ご自身たちでもうちの業界はどうなっているのかということを含めて調査をして、売りたい買いたい会社を具体的に、もうこんな会社っていうイメージを作ることが大事なんですけれども、こんな会社のイメージができたら、もう例えば田中製鉄所とか、鈴木製紙とか、そういうイメージです。個別にこの会社を買収できないかというようなリストを作る。そこのキーパーソンにどういうふうにコンタクトを取れるのかを考えてみる。ということをしていく必要があると考えています。M&Aのアドバイザリー会社もみんな頑張っていますから、売ってくれそうな、買ってくれそうな会社にはむちゃくちゃアプローチしているわけですよ。ですから、一定程度以上の年齢の経営者の方、一定程度のサイズの会社の方の会社あるいは自宅にはDMがめちゃくちゃ届いているんですよね。また来たかとある意味、辟易とするぐらいアプローチは来てるんです。実際に訪問して営業することもあると思います。で、情報はある意味待っているだけでは過多になってしまいますけれども、それってあくまで売り込み話じゃないですか。自分たちが主体的になって、どこの会社と一緒になっていきたい、どの会社を買収して一緒になりたい、こういうことを考えて具体的にリストアップして動かしていく。そのために、M&A全体の知識、相談できるネットワークを作っていくということは、僕は大事なんじゃないかなと思っています。

最後は参考までにですが、日本M&Aアドバイザー協会については先ほどご説明した通りです。で、本ですね。「この1冊でわかる!M&Aプロセスとポイント」という本も、これは6年前に発行して、今25刷になっています。これは、M&Aを初めてやる方向けの本なので、一定以上の知識がある方にとってみるとちょっと物足りないかもしれませんが、取っ掛かりとしてこの本で情報をとっていただくことも大事なんじゃないかなと思っています。この8月4日に新しい本を出します。これはいわゆるスモールM&Aの本ですけれども、ちょっとまだこの動画を収録している時点では収録前ですが、こちらもぜひ参考にして頂きたいなと思います。

今日、1時間強のオンラインセミナーになりましたが、結構重要なお話をしたと思っています。現状のスモールM&Aの概括、概要と、それに対して自分たちが売りたい買いたいを実現するために、しかもコストをそんなにかけられないという制約条件の中でやるべきこと、12個、比較的詳しめに説明したつもりですので、ぜひ参考にしていただければなと思います。

それではこれで終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。
                                                                                                                                                                                                  
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