スターマー辞任が映し出す成熟社会の壁

成功の次のExitを誰も知らない
スターマー辞任が映し出す成熟社会の壁
英国のスターマー首相が辞任を表明しました。
EU離脱(Brexit)を決めた2016年以降、英国では10年間で6人の首相が退陣しています。
キャメロン、メイ、ジョンソン、トラス、スナク、そしてスターマー。
能力不足だったのでしょうか。
私はそうは思いません。
むしろ問題は、その誰もが英国の「次のExit」を示せなかったことにあります。
EU離脱を支持した英国民は、
「EUを離れれば生活が良くなる」
と期待しました。
しかし現実は違いました。
移民問題は残り、
経済成長は低迷し、
財政は厳しさを増しました。
すると国民は次の救世主を探します。
ジョンソンに期待し、
トラスに期待し、
スターマーに期待する。
しかし期待は失望に変わり、また次の首相を探す。
これは英国だけの問題ではありません。
日本も同じ構造を抱えています。
戦後日本のExitは明確でした。
「豊かな先進国になる」
です。
所得を増やし、
インフラを整備し、
世界有数の経済大国になる。
この目標はおおむね達成されました。
しかしその後、
私たちは次のExitを定義できていません。
人口を維持することが目的なのでしょうか。
GDPを増やすことが目的なのでしょうか。
株価を上げることが目的なのでしょうか。
どれも重要ですが、それ自体は目的ではなく結果です。
企業も同じです。
上場する。
売上を伸ばす。
業界トップになる。
ここまではわかりやすい。
しかし達成した後、
何を目指すのか。
多くの成熟企業がそこで迷います。
最近上場したGOも興味深い事例です。
現在の成功要因はドライバーと利用者をつなぐプラットフォームです。
しかし自動運転が普及すると、
その成功要因そのものが不要になる可能性があります。
GOは
「タクシー配車会社」
なのか、
それとも
「移動インフラ企業」
なのか。
定義によって未来は大きく変わります。
AIも同じです。
先日発表されたLeiden Declarationでは、数学者たちがAIの脅威について議論しました。
彼らが恐れているのは、
AIが証明を書くことではありません。
本当に恐れているのは、
「何が良い数学なのか」
という評価軸が失われることです。
これまで難しかったことが、
AIによって簡単になります。
すると人類は新しい問いに直面します。
「何を評価するのか」
です。
これは政治も企業も教育も同じです。
これまでのOSは、
成長することでした。
しかし、ある程度成功した後、
何を目指すのか。
その答えを私たちはまだ持っていません。
英国で起きていることは、
単なる首相交代ではありません。
成熟社会が初めて直面した
「成功後のExit」
の模索です。
そして日本は、
その問題を世界で最も早く経験している国の一つです。
人口減少も、
財政問題も、
移民論争も、
AIも、
本質的には同じ問いにつながっています。
成功する方法は知っている。
しかし成功した後に何を目指すかは、まだ誰も知らない。
私は、これこそが21世紀の最大の経営課題であり、国家課題だと思います。
Nobody Knows the Next Exit After Success
What Starmer’s Resignation Reveals About Mature Societies
British Prime Minister Keir Starmer has announced his resignation.
Since the 2016 Brexit referendum, the United Kingdom has seen six prime ministers leave office within ten years:
Cameron, May, Johnson, Truss, Sunak, and now Starmer.
Were they all incompetent?
I do not believe so.
The real problem is that none of them could define Britain’s next Exit.
Many voters supported Brexit because they believed that leaving the European Union would improve their lives.
The reality proved far more complicated.
Immigration pressures remained.
Economic growth stagnated.
Public finances deteriorated.
As disappointment grew, voters searched for another savior.
Johnson was expected to deliver.
Then Truss.
Then Starmer.
Each arrived with expectations.
Each eventually became a target of frustration.
This pattern is not unique to Britain.
Japan faces a similar challenge.
Postwar Japan had a clear Exit:
“To become a prosperous advanced nation.”
The country increased incomes, built infrastructure, and became one of the world’s largest economies.
That mission was largely accomplished.
What came next?
No clear answer emerged.
Is the objective to maintain population?
To maximize GDP?
To increase stock prices?
These are important indicators, but they are outcomes, not purposes.
The same challenge exists in business.
The goals are initially straightforward:
Go public.
Grow revenue.
Become a market leader.
But what happens after those goals are achieved?
Many mature companies struggle to answer that question.
Consider GO, the recently listed taxi platform.
Today its success depends on connecting drivers and passengers.
Yet widespread autonomous driving could eventually eliminate the need for that very network.
Is GO a taxi-dispatch company?
Or is it an urban mobility infrastructure company?
The answer will determine its future.
AI presents the same dilemma.
The recently published Leiden Declaration on Artificial Intelligence and Mathematics is often interpreted as a warning about AI-generated proofs.
That is not the central concern.
The deeper concern is the loss of a shared framework for determining what constitutes good mathematics.
As AI makes previously difficult tasks easier, a new question emerges:
What should we value?
The same question applies to politics, business, and education.
The operating system of the twentieth century was growth.
Growth solved problems.
Growth created opportunities.
Growth provided direction.
But once a society becomes successful, a new challenge appears:
What comes after success?
We do not yet have a convincing answer.
What is happening in Britain is not simply another leadership crisis.
It is an early confrontation with the problem of defining an Exit after success.
Japan may be one of the first countries forced to tackle that challenge directly.
Population decline, fiscal sustainability, immigration debates, and AI are not separate issues.
They are manifestations of the same underlying question.
We know how to become successful.
What we do not yet know is what to pursue after success has been achieved.
That, in my view, is one of the defining management and policy challenges of the twenty-first century.
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