決算書(PL、BS、CF)の読み方

6.実際のPLを比較してみましょう

 次は、実際にPL損益計算書の分析に入っていきたいと思います。BSのときと同じように数字をきっちりと並べていっていただきたいのです。ただBSと比較すると、円にはしづらいので、無理には円にしていただく必要はないかと思っています。すごくいい表現の方法があれば、皆さんやっていっていただいていいのですけれども、まず、分析対象となる企業と比較対象となる企業。これは、BSと同じように用意していただきたいのです。

 先ほどまで説明をしてきた項目を書き出してしておいて、そこに数字を入れてみると。右と左の会社を比較すると、売上高で1対5倍の差がありますので、かなり差があるのです。この状況で比較をしていても、右側の会社のほうが大きいということ以上、なかなか頭が働きませんので、やはり、ここの比率を入れていっていただきたいと思います。

 この比率というのは、何を基準にしているのかというと、売上高を基準にしてください。売上高が100パーセントになっていますので、売上高を100とした場合に何パーセント原価があるのかとか。売上総利益があるのかとか、販管費があるのか、営業利益があるのかとか、こういう出し方をしていっていただけるといいと思います。

 見ると、この2社、極端に数字を変えてはいるのですけれども、特徴がかなり出ているのです。最終の、この当期純利益と対する売り上げの比率、こういうのは、当期純利益、純利益率といいます。この経常利益と売上高の比率というのは、経常利益率といいます。同様に営業利益率、販管費率、売上総利益率、売上原価率というように、何とか律と黙っていった場合には、断りなく使った場合に、PLで言うと、売上高との比率になりますので、これからは、その言葉を使っていきたいと思います。

 この、最後の当期純利益率、6パーセントと7パーセント。1パーセントの違いがあるわけです。例えば、利益率が高いに越したことはないので1パーセントの違いがあるのですけれども、その1パーセントは一体、どこから出てきているのかなという観点で見ていくといいのかなと思います。 

 では、上で見ていくと、売上総利益率が全然違うのです。70パーセントと40パーセント。こちら側の会社のほうが圧倒的に高いのです。ただし、営業利益率に落ちていってみると、20パーセントと22パーセントで、右側の会社のほうが高いのです。これは、ビジネスモデルの違いによって十分あり得る話なのです。極端に言うと、製薬会社、もっと極端な企業は、化粧品の会社なのですけれども、化粧品の会社は売上原価率は非常に小さいのです。ものすごく高いです。ここが80パーセントとか90パーセントという会社もあるのです。ただし、広告戦略していかないと売れませんので、広告宣伝費の比率が非常に高いのです。結果として営業利益はそんなにもうかっているわけとか、ビジネスによっていろいろあるわけなのです。

 なので、まずは、どこの利益率、あるいはどこの経費の比率というのがお互いに違っていて、どういう特徴があるのかというのを、ここで、まず、チェックしていただきたいのです。今度は、BSと同じように、例えば、販管費の比率が50パーセント、18パーセントで全然違うわけなので、一体、何がどう違うのかということを、今度PLの細かい内訳を見ていくことによって、何が原因でこういう差が出ているのかというところを分析していっていただきたいのです。こんな流れになります。

 今、マークを付けたところが、利益率に関するところなのですけれども、こういったところを中心に、どこがどう違って、差が出てきているのかというのを、ここでピックアップするという作業をぜひしていただきたいなと思うのです。

 今、マークを付けた部分について、どんなところを見ていかなければいけないのか。視点を簡単に説明したいと思うのですけれども、売上総利益、粗利率の違いというのは、どこをどう確認するのか。ビジネスモデルの違いというのはあるのです。同様に見えても、実際やっていることが違うと。そのことによって、粗利率が全然違うというのはあるのですが、特にそういう部分は見当たらない、明らかに構成の違いだということであれば、ターゲットとしてるいい会社の粗利率というのを目標にビジネスをしていかなければいけないわけです。

 ここで、重要なのは、実際にやっている企業があるということなのです。絵に描いた餅ではなくて、すごくいい会社があって、すごく低い粗利率を実践している会社があるとすれば、できる方法がどこかにあるはずなのです。そのできる方法というのは一体何なのかという調査をして、実行に移していくということが、次の段階で非常に重要になってきます。

 営業利益ですけれども、当然営業利益利率の違いというのは、売上総利益率が違ってくれば、その結果というのは、そのまま下につながってきますので、それも影響してくるのですけれども、販管費をすごくたくさん使っている会社とあまり使ってない会社では、営業利益もかなり変わってきます。

 ビジネスモデルの違いによるものですと、粗利率と営業利益率の差をあまり追っていても仕方がなくて、初めから本業である営業利益率で一体どれくらいの差があるのかと、その原因は一体何なのかという見方をされていったほうがいいかなと思います。要するに、製造原価で幾ら使って、販管費のうちどんな項目で、どれくらい、片や稼いで、片や稼げてないのかという目の付け方をしていったほうがいいのかなと思っています。

 経常利益にいくと、営業利益率と経常利益率の違いということになるのですけれども、経常利益率が営業利益率と比較してすごく悪い場合というのは、その原因を押さえておいていたほうがいいのかなと思います。多くの場合ですけれども、支払いとかすごく多いのです、営業では稼いでいるのですけれども、借り入れがすごく多くて、利息をたくさん払っている。ですから、そこで経常利益は減っていってしまうというケースが多いと思います。

 当期純利益に関してですけれども、スタートは当期純利益からでいいのですけれども、当期純利益率、あるいは当期純利益の差がどこから起きているのかということをピンポイントに分析するということはなかなか難しいので、売上総利益とか、営業利益とか、経常利益などの分析をされていったほうがいいのかなとご説明をしたいと思います。

 法人税に関して言うと、いろいろと申し上げたいところがあるのですけれども、少しテクニカルな部分がありますので、今回は、省略させていただきたいと思います。

 PL損益計算書のまとめに入っていきたいと思うのですけれども、この左側は、今までも何回もご説明してきた流れです。
 売上高、これは、売り上げの規模を確認するということと、他社との比較、業界内で、今どんな位置にあるのかという視点を持っていただけるといいのかなと思います。

 売上総利益については、売上総利益率をぜひ確認をしてください。売上総利益は高いに越したことはないです。
 販売費および一般管理費、内訳をぜひ見ていっていただきたいと。販管費は高い低いというところだけを議論していても意味がないので、一体その内訳を分析して、どこがコスト高でどこがこの企業はコストをきちんと押さえられているのかというところの分析をぜひしていっていただきたいと思います。

 営業利益にいっていただくと、営業利益率を確認してください。本業で一体どれくらい稼ぐ力があるのかというところを分析することは、すごく大事です。ものすごく大きな会社であっても、営業利益率がすごく低い会社というのがあるのです。いわゆる薄利多売のビジネスですけれども、これは、利益率が3パーセント、4パーセント変わったら、1兆円を売り上げていようが、営業赤字になってしまう会社というのがあるのです。なので、その対応力とか、過去にどうやって数字が動いてきて、それを挽回してきたのか、あるいは挽回できずに右肩下がりになってしまっているのかというところを把握するためには、3年とか5年ではなくて、10年とか20年間の推移をとって、かつて、どんな数字の動きをしていて、どんなことをやってきたのかという歴史を押さえておくことも、今後、見通そうと考えるのであれば、とても参考になると思います。そういう意味で長いスパンの数字をとってみるというのは、決して無駄なことではありません。

 営業外収益、営業外費用について、財務的な強さはある程度見ることができます。財務的に、外部企業に頼っている、借り入れをたくさんしているような企業であれば、当然多額の支払利息を計上してることになりますし、場合によっては、本業以外でかなり稼いでいるという企業もありますので、営業外収益とか、営業外費用でどんなものが上がっているのかというところをきちんと押さえておく必要があるのかと思います。

 特別利益、特別損失。妙なものが含まれていないかと、ここでは書いてあるのですけれども、あるのです。本当に、こんな費用が出たのとか、なんで多額な金額が特別損失になっているのということというのがありがちですので、特に、特別損失の内容については、よく内容を押さえておいていただいたほうがいいのかなと思います。

 最後、税金の部分なのですけれども、表面税率はと書いてあります。この表面税率は何かというと、法人税、住民税および事業税と、法人税と調整額を足していただいて、その金額と税金等調整前当期純利益を割った数字なのです。それを、表面税率というのですが、日本で言うと、大体40パーセント前後くらいになるはずなのです。40パーセントちょっと切るくらいになるはずなのですけれども、企業によっては、それを大幅に超過していたり、あるいは大幅にそれよりも低かったりというケースがあるのです。税務省略に長けているかどうかというのは、これを、低く抑えている会社というのは、とても、うまく税務戦略を立案して実行しているという可能性が高いわけです。例えば、海外の税率が非常に低い国で製造販売していると、全世界連結してトータルで見た場合も、日本の税率である40パーセント弱よりも当然低くなるわけです。逆に税率が高いところで、ビジネスをしているとか、税金はうまく使う、使わないという部分が結構あって、このお金を使ってしまうと税金を余計に取られるとか、税金をセーブできるとかという項目があるのです。そこを判定するためにも、先ほどご説明したような、表面税率というのを一応見ておいていただいて、日本の会社の目安は40パーセントですので、その40パーセントよりも大幅に上回ったり、大幅に下回ったりする場合というのは、その原因をチェックしておいたほうがいいのかなと思います。

 PLの分析の流れも、BSと基本的には一緒です。目に見えるような形でぜひ数字を並べていっていただきたい。そのためには、同業を比較対象としていただきたい。サイズが違うPLを比較する場合には絶対額だけを見ていても、やはり分析しづらいですので、ぜひ、比率で表現していただきたい。PLの場合は、売り上げを100パーセントとして比率を計算していただければ大丈夫です。最低2年、できれば、3年から5年以上、データが取れるのであれば、取れるだけ長期間にわたって数値の比較をぜひしていただきたいと思ってます。

 そこまで、いって初めて、販管費率が全然違うぞと、あるいは営業利益率が全然違うと。では、なぜ違いが起きているのかというところを、チェックするためにPLの内訳、損益決算書の内訳というのを、見ていっていただきたいのです。 

 例えば、広告宣伝費の比率が全然違いますということであれば、なぜ、その広告宣伝費の支払いの違いが出てくるのかと。これは、考えたり、次にPL以外のIR利率を調べたりしないと分からないのですけれども、そういったところにつなげていっていただけたらいいのかと思います。

 では、PLの流れ、分析の流れは以上とさせていただきます。

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