経営者のための実践ファイナンス

DCF法を計算した際のワークシートについて

 続いては、DCF法を計算したときの実際のワークシートを見ていきたいと思います。詳細は、後ほどあらためてご説明します。どういうことをやっているのかという流れだけをご説明しますけれども、上の三つが、これが事業計画をベースに営業利益まで出しているということです。

 この営業利益から、フリー・キャッシュ・フロー、キャッシュ・フローへの調整項目として減価償却費を足す税金等の支払いを考慮し引く、設備投資等を引くと、運転投資等を引く、運転資本の増加をマイナスにする。もし減少している場合には、プラスするということになりますけれども、こういう先ほどまでしてきた調整計算をした結果、フリー・キャッシュ・フローという数字が出ます。この営業利益からキャッシュ・フローの数字に置き換えた後の数字が、このフリー・キャッシュ・フローという欄です。これと、先ほど説明した原価係数というのを足して、掛け算をして割引現在価値というのを計算していきます。

 ここの合計です。この一番下の欄の合計が、割引現在価値ということで、DCF法で算定した結果ということになります。詳細の計算方法は後ほどご説明します。

 その計算した割引現在価値合計に、手元の現金預金、厳密に言うと運転資本相当額というのは、ここから引くのですけれども、それと、非営業用途資産が、例えば、工場の設備などは、ここに該当しますというお話をしましたが、それを足して、企業価値を出します。この割引現在価値合計というのは、冒頭にご説明した事業価値のことです。事業価値に非営業価値の資産の価値を出して、企業価値です。借り入れが仮に、3億円あるとすれば、3億円を引いた金額というのが、株主価値ということになります。1株当たりの株が、もし、計算しようと思ったら、このときに、1万株を発行しているとすれば、この数字を1万株で割って結果3万3000円という形で1株幾らだという計算をするようになります。

 割引計算DCF法をするときに、すごく大事なことということで、事業計画の見極めの重要性というふうに、ここでは表現をしていますが、DCF法で会社価値を算定しようとした場合に、必要となる要素というのは、将来一体幾らもうかるかというフリー・キャッシュ・フローと、さっき説明した部分と割引率です。

 今まで、割引率というのは、算定方式も結構限定されているので、それほど恣意的な数値を作ることはできません。先ほどご説明したように、多少数字はいじられるのですけれども、そんなむちゃくちゃな数字というのは、分かっている方からするとできないのです。ですけれども、将来のキャッシュ・フローというのは、事業計画をバラ色にでっち上げてしまったら、ものすごい金額になるわけなのです。よほど、こちらの影響のほうが大きいのです。割引率と厳密に計算するということも、とても大事なことなのですけれども、それよりも、事業計画をどれだけ、精査できるのか、あるいは投資する立場からすれば、受け入れ可能な数値になっているか。あるいは、その数値を作る前提ができてるかどうかというところを見るほうが、非常に大事なのです。

 ファイナンスの専門家というのは、どちらかというと、その事業計画がもともとあって、それをベースに一体幾らの価値を付けるのかという感覚で、算定をしていくので、投資家目線なのです。実際は、経営者の多くのかたがたというのは、お金を出してもらう立場ですので、彼らにどれだけ納得度が高い事業計画というのを出していけるのかというのが、株価を上げるための施策になってくるということなのです。

 なので、このDCF計算をするときに、大事なことというのは、割引率ももちろん大事なんですけれども、よほど事業計画のほうが重要だということは、前提として押さえておいていただきたいと思います。

 少しだけ、内部利益率法についても触れておきたいと思います。
 この内部利益率法というのは、A案、B案、先ほども出した例なんですけれども、現在価値がゼロになるような利益率というのを算定する方法です。 
 この東証100して、その後、1年後、10、20、30、40、50というように稼ぐパターン。これは先ほどの例なのですけれども、このときに、エクセルで、この欄を指定してIRRという算式を使うと比率が出てくるのです。先に答えだけ言うと、12.01パーセント。B案は、19・07パーセントということになります。どっちのほうがいいのかというと、高いほうがいいです。高い割引率で割り引いて、結果ゼロで同じなわけですから、この割引率、利益率業が高いほうが評価は高いということになります。これも、絶対額全然、無視していますので、一つの目安にしかなりません。内部利益率が何パーセントだから、絶対やらなければいけないとかいうことは、なかなか難しいですので、これも参考までに使っていただきたいと思います。現在価値がゼロになる方法がどういうことかというと、先に12パーセントと答えが出ていますので、12パーセントで、原価係数を算定してみました。

 ここは、1年後は0.893となっていますけれども、どういうことかというと、割引率12パーセントなので、1.12分の1が0.893になっています。0.797というのは、1.12の二乗分の1です。以下同様に計算をしていますけれども、この原価係数とキャッシュ・フローを掛けた数字はここです。0.893掛ける10。四捨五入して9になっていますけれども、これを、ずっと1年目の投資額マイナス100と合算してゼロになるので、こういうことなのです。12パーセントで、現在価値を計算するとゼロになりますねと。B案の場合は、19パーセントで現在価値を計算するとトータルゼロになりますという計算をしているわけです。

 この計算を適当に当たりを付けてやると、すごく大変なので、計算自体はエクセルでやっていいと思います。ただ、どうやって計算して、どんな意味合いがあるのかという点だけを伝えておいてください。

 もう一つ、類似会社の比較法なのですけれども、これは、大変シンプルな例です。実際には、一つの会社でなかったり、一つの指標だけでなかったり、いろいろな類似の上場会社とか類似の指標というのを使って計算するのですけれども、考え方としては、こういうふうに計算をしていますねという例だと思ってください。

 何をしようとしているのかというとA社という会社の株価を算定したいのですというときに、同業のB社という会社が上場していますので、ここの株価を参考に計算してみませんかということなのです。

 B社の株価というのは、今、1950円、株価とかなりかかわり合いのある数字だと思われるのを使うのが通常なのですけれども、ここでは、1株当たりの税引き後利益というのを、その数字としてとっています。株価と1株当たりの税引き後の利益、1950割る130。これ、15ですが、これは株価倍率といったりしますが、これを使ってA社の株価を想定類推してみましょうというやり方です。

 A社の1株当たりの利益というのは200円なのです。この200円に、さっきB社の株価倍率である15倍というのを掛けてA社の株価を3000円だと算定しましょうということです。

 ざっくりしているのです。これも、どの会社を同業と比較するのかということとか、期間をどこに算定するのかということとか、何を株価に対する指標というふうに設定するのかによって数字はぶれてくるのです。ということなので、あくまでも参考値です。

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