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M&Aと新規事業の立ち上げ(2018年5月18日改訂版)

こんにちは。 今日は「M&Aと新規事業の立ち上げ」というテーマでお話をしていきます。 はじめに、M&Aで買収する場合とビジネスを新規で立ち上げる場合の比較を簡単にまとめてみました。 まず初期投資についてですが、M&A(買収)場合は初期投資が大きいです。新規で立ち上げるよりもM&Aの方が、はじめは結構かかるのですね。例えば、ある飲食店1店舗を作ろうとした時に、1,500万円で設備自体ができるとしましょう。買収すると、1,500万円以上かかることの方が多いです。それはもちろん、1,500万円相当の設備が既にあるわけですし、売上が既に立っている、場合によっては利益が出ているという前提で買収をするわけですから、はじめにまとまったお金が必要になるということはあります。 次に、事業計画の不確実性。要するに、この先の事業計画を立てていく時に、きちんと紙に書かなくてもいいんですけれども、新規の立ち上げというのはどうなるかわからないんですよね。当たり前です。売上が1円も立っていない状況から1ヶ月後、半年後、1年後、2年後、3年後、4年後、5年後…どれぐらいの売上になって、どれぐらいの利益が出ているのか、当然起業家であれば事前に検討しておく必要があるし、金融機関から資金調達しようと思ったら、あるいは投資家から資金調達しようと思ったら、事業計画なしに資金を出してくれる方というのは通常いません。そこで、事業計画を立てなくてはいけないわけですけれども、0から始める事業計画というのは、よく「鉛筆を舐める」という表現を使いますが、わからないんですよね。要は、不確実性が高いということです。もしかしたら上振れするかもしれないし、思ったより売れるかもしれない。ただ実際は期待したほど全然売れなかったというケースも非常に多い。新規立ち上げは、事業計画の不確実性がめちゃくちゃ高いんですよね。ただし、初期投資は少なくて済むわけです。 逆に、M&A買収をした場合に戻ります。初期投資は多いんですよ。もう既に営業できている会社を買うわけですから。ただし、事業計画の不確実性というのは低いです。買収M&Aの場合というのは、すでに動いている会社を買って事業をスタートするわけですから、昨日まで売上が立っているわけですよね。で、昨日までの1年間でどれぐらい売上が立っているのかという実績があるわけですので、この実績をベースに売上を立てることができるということになります。となると、この投資にいくら、買収するのにいくら投資していいのかという見積もりがしやすくなるはずなんですよ。一方で新規の立ち上げというのは、M&A買収と比較すると、初期投資の金額は小さいけれども、正直この先どうなるかさっぱりわからないというものに投資をしなければならないわけなので、リスクが高いというふうに言えます。じゃあ、M&Aで買収すれば必ず新規の立ち上げよりも成功確率が高いのかというとそんなことはなくて、唯一金額です。あくまでも買収にしても新規の立ち上げにしても投資なわけですので、M&Aの方がおそらく将来こうなるんじゃないかなという事業計画通り行く可能性は高いんですね。ただし、何度か申し上げている通り、初期投資の金額が高いわけですから、あまりにも高い金額でいくら良い会社を買っても投資は失敗じゃないですか。例えば、これから毎年100年間、毎年1億円ずつ稼げるような会社があったとしたら、皆さんどうします?すごくいい会社じゃないですか。でもこの会社を1,000億で買ったら、1億円を100年間だと100億円にしかなりませんからね。1,000億で買っちゃったら高掴みしすぎなわけですよ。投資としては失敗。ですから、値付けさえ間違えなければ、M&Aの方がリスクは低いと思います。 では、どんな人が買収M&Aに向いていて、どんな人が新規立ち上げに向いているのかというと、新規立ち上げは考えるよりも動く人です。事業計画云々というのを考えているよりも、とりあえずビジネスを始めてしまいましょう、結果出しちゃいましょうという人は新規立ち上げに向いています。なぜかというと、0から1を作るものなので、リスクはめちゃくちゃ高いわけですよ。事業計画をいつまでも立て続けている人というのは、今の時代なかなかビジネスを作りづらいです。全く考えなくていいと言うつもりはないですけれども、あんまり考えて悩んでいるようだったら、動いて結果を残してしまおうという方に向いています。 一方で、M&A買収というのは、過去の実績を分析して、この先自分達だったらどういうふうにこのビジネスを変えていけるか、悪いところを直していけるか、より良いところを伸ばしていけるかということを考えて動く人の方が向いているんじゃないかな、というふうに思います。これから例えば、勤めている会社を辞めて起業しようという方はおそらくM&A買収の方が向いていると思うんです。長年勤められた方というのは、考える前に動くなんていう習慣はおそらくないんです。きちんと組織だった会社の中で、考える前に動いたら多分怒られます。失敗する可能性が増えてくるので。ですから、もう癖がついちゃってると思うんですね。しっかり考えて分析してから動きましょうという方にとってみると、0からビジネスを始めるよりも、M&A買収をする方が、リスクが低いというふうに言えるのではないかなと思います。 これは例えばのシミュレーションなので、金額は適当に入っています。M&Aの方がコストが低いというふうな結論になっていますけれども、数字は適当に入れていますので、ケースバイケースだと思ってください。一つのお店を立ち上げるといったところを考える方がわかりやすいかなと思いますので、ちょっと数字を入れてみました。 新規開業の場合、お店を借ります。敷金保証金に100万円かかります。店舗の中を改装、造作して、800万円かかるとします。初期投資は一見900万円で終わりそうに見えるんですけれども、ビジネスを始めていきなり黒字が出るということはまずないので、営業を開始してからしばらくは赤字、自分が給料を取れないところのお金を自分で用意しておかなければいけないんですよね。それが仮に1,000万円だとすると、1,900万円かかるんですね。事業を始める時というのは、ここが見えにくいんです。これって、いきなり1,000万円取られるわけではなくて、赤字が続いているからご自身の給料を取れない。場合によってははじめ資本金を1,000万円作ったけれども、900万円はすぐなくなっちゃうわけですから、会社に貸付けをしなくちゃいけないというようなケースで、意外とここの支出というのが企業には多いものなんです。完全に正確には読めませんけれども、漏れがちです。 一方で、M&A買収をした場合は、はじめにガツンと買収コストを負担しなければいけないので、例えば1,500万円かかったとします。ここで新規立ち上げの造作代金800万円と比較しがちなんですね。ここでこの会社を買収しようとすると1,500万円かかります。新規立ち上げの800万円の方がお得じゃないですかと。こう見えがちなのですけれども、営業開始後の赤字の部分、ここが抜け落ちているということがあるので、注意をして頂きたいと思います。 もちろん、我々のようなアドバイザーを使えば、仲介会社に手数料を払わなくてはいけませんから、ここのFeeというのはうちのFeeなわけですけれども、1,500万円の案件であれば、250万円頂くことになります。で、敷金保証金は同じように払わなくてはいけないというふうに考えると、1,850万円と1,900万円との比較になるわけです。これだったらM&Aの方がいいんじゃないですかという結論なのが、営業開始後の赤字の部分の金額がもっと小さければ新規開業の方がいいし、ここが、一番不確実性の高いところですよね。なので、この営業開始後の赤字の部分が読めない、ここが500万円なのか、1,000万円なのかさっぱりわからないという方は、もしかするとM&Aを選択して、いきなり赤字ではなくてそれなりに給料が出やすいという状況で起業をするというのもありなんではないかなと思います。 まとめますと、M&Aと新規開業のメリットとデメリットというのをしっかりと理解して、今回やるとどれくらいのコストがかかるのかというのを、はじめはこの表の程度で構わないと思いますので、しっかりシミュレーションして、ご自身でどちらを選択するのかというのを決めていただければいいのかなと思います。

そして、組織で新規事業としてM&Aに取り組むための重要な要素を2つ申し上げておきます。この2点を軽視していては、現場にただでさえ難易度の高いM&A、しかも新規事業の成功は難しいでしょう。経営トップの力がもっとも試される局面といってよいでしょう。

  • 必ず経営トップが責任をもって新規事業に取り組むことです。自社にとって経験のないことですからトップ以外にこの業務を担えません。
  • 買収を決める際には、買収後のマネジメントチームを決めて、彼らが何をすべきかということを買収前に決めておくこと。

本日は以上です。

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