経営者が知っておくべき事業再生
今日は、経営者が知っておくべき事業再生というテーマでお話を進めていきたいと思います。
『事業再生』という言葉なのですが、そもそも事業再生とは誰のためにやるのかということですが、事業再生は経営者のためにあるのではなくて、債権者のためにあります。
『債権者』とはどういう人を指すのかと言うと、“金融機関”お金を貸してくれている銀行・信用金庫(金融機関)、それとお客様と取引先様(これからお金を払わなければいけない取引先様)、これが債権者となります。
彼らのためにある制度・仕組みだと考えて頂いた方が良いと思います。
事業再生とは、どんな場合に実行されるのかと言うと、そのまま破綻するよりも(そのまま倒産させるよりも)、会社を継続させた方が債権者(例えば金融機関)に対して返済をより多くできる場合に『事業再生』が実行されます。
今潰してしまった方が、金融機関や取引先がお金取れる・回収ができると判断した場合、『事業再生」というのは実行されません。こういった面でも『事業再生』というものは、経営者のためというよりは、債権者のためにあると思って頂いた方が良いと思います。
言い方を変えると、このまま破綻するより会社を継続させたほうが、債権者にとっては返済額が増える場合にのみ『事業再生』が実行されると考えてください。
事業再生を専門にするコンサルタント「事業再生をメインにやっています」「事業再生をずっとやってきています」と言う風におっしゃられるコンサルタントの方は沢山いますが、彼らは誰のために動くのかと言うと、基本は債権者(特に銀行・金融機関)のために動きます。これはどういうことかと言うと、金融機関は銀行の中で「この会社、今のまま潰すよりも継続させた方が返済額が多くなりますよ」ということを担当者は提案して、銀行の行内・銀行の中で承認を取らないといけないのです。まあ簡単に言えば、稟議をあげて稟議の決裁を取れないと、この事業再生はできないわけです。では金融機関の担当者・営業の担当者、あるいは支店長クラスの方は、事業計画というのを作るのを手伝いますが、いざ銀行の中で手続きをしていこうとなった場合、「第三者のチェックを入れろ」というような要請が、銀行の中から出ます。一定の金額以上の融資をしている先の事業再生をしようとすると、場合によっては一部債務免除をしようといった形になり、銀行内の決裁が必要になってくるわけです。
その決裁の時に銀行の担当者だけではなく、第三者専門家のチェックを受けているかどうかを問われることがあります。そのチェックをするのが事業再生のコンサルタントの主な業務だと思ってください。ここに書いてあります事業再生コンサルタントの主な業務というのは、再生事業計画の立案をするのか、あるいは社内で作ったもの・金融機関の担当者の方が作ったものを精査していくというのが主な仕事だと思って頂ければいいかな?と思います。
もちろん事業再生のコンサルタントで本当に会社のビジネスを立て直す方もいらっしゃいますし、そういう実績をお持ちの方もいらっしゃいますけども、一般に言う事業再生コンサルタントというのはそういう会社のビジネスそのものを立て直しているわけではなくて、金融機関のための再生事業計画の立案または精査をしていると思って頂けるといいかなと思います。
ですので、多くの事業再生コンサルタントが会社の事業を立て直すことができるわけでは、そもそも無いというところをちょっと抑えておいて頂けるとよいと思います。
リスケ(リスケジュールの略)についてですが、要するに金融機関に予定通りお金を払わないで、支払い・弁済の計画を再調整すること、これをリスケジュールいわゆるリスケと言うのですけど、要するに「期限内に払えないのでもうちょっと返済期限を延ばしてください。」ということです。あるいは融資その他もろもろの条件変更などによって、経営者は経営を続けることができるケースが多いのです。会社を潰さずにしばらく経営をできる訳ですが、その前提としては、やはり説得力のある事業計画が必要となるわけです。「一時的にお金は返せないけど、1年後或いは2年後から向上します。そのためにはこういうリストラもやっていきます。ですから1年間・2年間待ってください。2年後からは返済を再開していきます」例えば、こんな事業計画が必要になってくるわけです。事業再生のコンサルタントと言うのは、その事業計画にそれなりの信頼性があるのか?あるいは一定の根拠があるのか?とか、リストラをするのであればその可能性がどれぐらい高いのか低いのか?と、そのようなチェックを行うというのが事業再生のコンサルタントあるいは、事業再生の多くの事業再生の実態だと思って頂ければよいと思います。
民事再生という言葉がありますが、民事再生は法的整理の一つです。ですから、法律的に会社が一旦潰れる方向になっていく訳ですが、民事再生の場合これが認可されると経営者がそのまま経営を続けられることがあります。会社が法的に破綻しているのにもかかわらず、経営者がそのまま経営を続けられる可能性があるのが民事再生です。
民事再生ではなくて、いわゆる『破産』これも法的整理の一つですが、こうなった場合は基本的に経営者は経営を続けていくことができません。だから民事再生というのは、一つ経営者にとってみると「認められる」のか「認められない」のかが、ご自分が「経営を続けられる」か「続けられない」かという点で非常に重要なポイントになってきます。
ただし、この民事再生というのはそう簡単に認可されるものではありません。認可をするのは裁判所になりますが、裁判所が民事再生を認可する時に何が必要になってくるかと言うと、多くの場合スポンサーが必要になってきます。
要するにどっかの会社がお金を出してくれるということです。会社が潰れかかっているとは、お金はありません。民事再生の過程で通常は金融機関・取引先に債務免除を求めます。それでも運転資金が足りないという場合がほとんどですので、債務免除をしてもらい、会社の負担は軽くなりました。でも、お金はたりないのでそのお金は第三者が出してくれます。そのような条件が揃ってはじめて民事再生というのが認められるといったケースが殆どです。では、そのスポンサーってどうやって探すのですか?という話ですが、これは結構意外と難しく、M&Aの買い手の探しと全く同じになります。「こういうビジネスで、債務は一時的に軽くなって資金としてこれだけ必要になってきます。だれかこれだけお金を出してくださる方いらっしゃいませんか?」という具合です。
まあ、大きな会社の例で言えば、ウイルコムが民事再生の認可を受けてスポンサーになったのがソフトバンクです。民事再生計画というのを出して、裁判所がそれを認可すると、民事再生計画を予定通りクリアすると民事再生の続きというのは終了となります。その後、普通の会社に戻るわけです。その普通の会社に戻った後(ウイルコムは民事再生計画を当初の予定よりも早くクリアをして、早くお金を返して通常の一般の会社になった)、ソフトバンクの子会社になった。このような流れになってきます。
民事再生というのは経営者にとってみると、
1つ目「自分が経営を続けられるかもしれないという可能性がある」
2つ目「ある一定数の魅力が無いと、スポンサーとしての資金の出し手がつかない」
この点に注意しておく必要があるということです。
経営者が経営を継続できない場合に、会社がどうなるのか?自分がどうなるのか?従業員の方はどうなるのか?ということについて、少しお話をしておきたいと思います。
会社が法的に潰れたからと言って、経営者の方の命が取られるといったことは一切ありません。
実際はどうなっているのかと言うと、手に職のある経営者の方々というのは、こういった法的整理が済んだ後に通常の会社で働いています。しかも、結構な戦力として働いています。
法的に破産するような会社の場合、社長の仕事というのは殆んど資金繰りの仕事となってしまいます。金融機関取引先に「支払いを待ってくれ」とか、或いはお客様から少しでも早く資金を回収してきたり、或いは従業員の給料が遅配(給料が払えずに)して、そのリスケジュールです。
要するに25日に払わなければいけない給料を、翌月の10日まで待ってくれ。それでモチベーションの下がる従業員さんをなんとか働かせて、しばらくビジネス・仕事を続けてもらったりだとか、殆ど資金繰りに関する仕事だけになってしまう訳です。整理がついてしまえば、そういった資金繰りの仕事が一切無くなるので、まあ営業が専任(営業を得意)であった社長というのは、他の会社に入って営業をバリバリやるというようなことは以外とあります。当然、破綻をしてしまった経営者の方々と言うのは、破綻した後「ここでバリバリやってるぜ」なんて、明るく他の方に喋らないので殆ど表には出てきませんが、キチンとした基盤・バックグラウンドがある経営者と言うのは、破綻後もしっかりと働いているといったケースが非常に多いです。
ここに3つの制度のことが書いてあります。これは会社が破綻した後の事、そこをカバーするための制度のことです。
一つ目の『未払賃金立替制度』というのは、会社が破綻するそういう瀬戸際になってくると、一生懸命働いた従業員の方々に給料を払えていないといったケースが多いですね。この内の一部を公的に負担してくれるというのが『未払賃金立替制度』です。これは早めに「もうこれ以上、会社が続かないです」といった段階でギブアップをすれば、従業員の方々に未払いになっていた賃金・給与を立替えて払ってくれる制度です。
2つ目、『自由財産制度』これはですね経営者にとって重要なことなのですけど、破産したからと言って(個人も破産するケースもありますが)全ての財産を持っていかれるわけではないんですね。もちろん破綻した後、仕事を再開できるまで多少時間がかかりますので、それまでの間、生活できる分だけの資金(財産)は持っておいて良いという制度が法律で定められています。
ですから、会社が無くなりました。個人補償をしていたので個人も破産しました。その段階で1円手元に無いということまでは、法的に無いのです。そういった所も知っておいていただけたらなと思います。
3つ目、『否認対象行為』というのがあって、もう会社が破綻しちゃうから「お世話になったここの会社の社長さんだけには迷惑をかけたくない」といった特定の債権者にお金を返しちゃうというケースというのが結構あるのですね。「30年間うちを支えてくれた会社(社長さん)なので、そこだけには取敢えず迷惑を掛けたくない」というのがあって、取敢えずそこには先に払ってしまい、他の債権者には払わない。基本的に債権者は平等なのですけども、このように特定の個人であったり特定の会社に、優先してお金を(殆ど残っていないお金を)返済してしまうというようなことをすると、他の債権者は不利(不平等)になります。こういうことがあった場合、後で裁判所が取下げを命じることがあります。それを『否認対象行為』と言っています。会社が法的に破綻するということは(法的にではなく私的に破綻するような場合も)結構あることなのです。ですので、みなさんが通常心配されるようなことは、ある程度法的にカバーされている部分があります。会社が潰れてもみなさん自身の命が取られたりとか、生活が完全に破綻しないように、できる限り制度というのが準備されているので、その辺りの基本的な知識とか情報とかはお持ちになっていた方がいいのかなと思っています。
今申し上げたことは、『いのちを守る経営術』という言葉で検索して頂けますと、私が以前にプレジデントオンラインに寄稿させて頂いた記事がございますので、是非ご興味があればこちらの方も検索してお読み頂ければなと思っています。『経営者が知っておくべき事業再生』ということについて、簡単ではありますが基本的な知識として、是非持っておいて頂きたいと思います。
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