本当に役立つ「月次決算データの見方と使い方」

8.月次決算と年度決算の違い

 月次決算は先述したとおり、年度決算のように会社法や税法などの制度に縛られたものではない。したがって、まずどんな決算を組むかを自社で決定しなければならない。月次決算は問題解決手法の問題の発見、見直しのフェーズで変化の兆しをタイムリーに把握することが重要な目的であることを述べた。変化の兆しをどうやったらタイムリーに把握することができるのか?このためにはまずどんな数値を管理する必要があるのか、という点を明らかにする必要がある。一体どんな数値を管理、把握しておくべきだろうか?最悪のケースから考えていこう。会社がどうなったら、つぶれるのだろうか?赤字が続いたら?債務超過になったら?それは違う。読者の皆さんもご承知の通り、資金があれば会社はつぶれない。したがってお金の管理をすることが絶対必要である。では資金の源泉はどこにあるのか?これは間違いなく会社のあげる利益である。

 短期的には金融機関からの借入、資産売却、支払・回収期間の変更などで資金調達は可能である。しかし、これらはあくまでも一時的なものであるし、そもそも利益を出し、将来資金を獲得できると思うから金融機関も融資をするわけであるし、資産について過去に利益を出していたからこそただいま現在、会社が保有しているわけである。したがって、一番重要な点は利益であり、その結果、獲得できる資金となる。当然のことながら、利益は売上と費用から構成されるため、長い眼で見ればこれをきちんと把握しなければならない。問題はどこまで管理するか、という点にある。たしかに月次決算については、法制度で決められているわけではないので、精度を落とすことはできる。しかし、売上、仕入に関してはその後の支払、回収にもかかわってくるため、たとえば千円単位でざっくり計算しよう、ということはすべきでない。あとで円単位への調整が必要となり、かえって効率は悪くなってしまうからである。一方で月次決算はスピード勝負である。したがって、バランスをとることが必要である。売上、仕入に関してはあまり月次決算については省略することはできない。それでは省略できるものは何か?

 P/Lから考えていくと、仕入以外の費用についてはどうであろうか?これについては多少、月ズレがあっても税務会計ではないから問題はない。しかし、ここで金額の大きい経費が月ズレをしては変化を見逃しかねない。ここでは経費計上もしっかりしておかなければならない。これとスピードのバランスを図るためには一定のルールを作る必要がある。例えば月初3営業日以内に、売上伝票、支払伝票などを提出しなければ売上計上や仕入計上、ひいては支払、回収処理しないというルールにしてしまうのがよい。こういったやり方は営業現場などの反論があることがあるが、これを説得するにはそれだけの付加価値を皆さんが出せるかにかかっている。単にルールを作って、決算書ととってつけたような経営指標の羅列の月次決算を組んでいるだけでは、ただでさえ忙しい営業などの事業部門を説得することはできないはずだ。

 次にB/S項目について考えてみる。固定資産などの売買や除却については売買が生じた時点で前倒しの処理ができるはずだ。決算時以外にできることは早めに処理をしてしまうことが月次決算早期化のコツである。また、減価償却費は特に定率法の場合に処理が面倒だが、年間の減価償却費を計算しておき、これを12カ月で割った金額を使えばよい。誤差は年度決算で処理をすることになる。また期中で新規取得や売却、除却などが予定されている場合は、年間の減価償却費算定の際に考慮することになる。そして、前払費用、未収収益などのいわゆる経過勘定については、やる気になれば月次決算の事前に算定することができる。継続的に支払などがある場合には、月次決算では支払、回収ベースで金額を集計しておき、本決算時にのみ集計をするという方法もとることができる。ここでの判断基準は、手間とスピードと業績の変化の兆しを発見するという月次決算の目的の1つを達成できるかのバランスである。実務的に重要な部分であるので、表にまとめてみると以下にようになる。

月次決算で省略できるか 対応策(例)
売上、売掛金 × 締日を決めてそれ以降の精算を禁止する
仕入、買掛金 × 締日を決めてそれ以降の精算を禁止する
その他経費 × 締日を決めてそれ以降の精算を禁止する
固定資産計上 月次決算前にできるかぎり処理
減価償却費 月次決算前にできるかぎり処理
経過勘定項目 × 年次決算のみで処理し、月次決算では支払、回収ベースで処理
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