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廃業が多いからといってタダでビジネスは買えません

こんにちは。

今日は「廃業が多いからといってタダでビジネスは買えません」というテーマでお話をしたいと思います。

大廃業時代の足音ということで日経新聞にも記事になっています。

中小企業の廃業が増えている。後継者難から会社をたたむケースが多く、廃業する会社のおよそ5割が経常黒字という異様な状況だ。2025年に6割以上の経営者が70歳を超えるが、経済産業省の分析では現状で中小127万社で後継者不在の状態にある。優良技術の伝承へ事業承継を急がないと、日本の産業基盤は劣化する。「大廃業時代」を防ぐ手立てはあるか。

ということなんですね。

廃業する会社のおよそ5割が経常黒字というのは、私の感覚からするとちょっと多いです。おそらく実際は粉飾決算をしていて、実際は赤字なんだけれども黒字に見せかけている会社が、この5割のうちの半分以上あると思います。ですから私の感覚でいうと、廃業する会社の2〜3割は黒字の可能性がありますけれども、残りの2〜3割は見せかけ黒字で実際は赤字。その他の5割は見せかけも赤字という実態なんじゃないかなと思っています。

では、これだけ廃業するわけじゃないですか。利益が出ていても廃業してしまうわけなので、じゃあ、そのビジネスをタダで手に入れられるんじゃないかと考えられる方も少し多くなってきていますので、その点についてちょっと考えてみたいと思います。

廃業する会社を累計で分けてみると「儲かっているが廃業したい会社」 これは先ほどの記事に該当する会社ですね。で、私たちもよくあるなと感じているのが「儲かっていないので廃業したい会社」 で、最悪というか「法的整理、法律できちんと破産しましょうというような会社」大きく分けるとこの3つに分けられるかなと思っています。まぁ、良い、普通、悪いといった感じですけれども、皆さんが欲しいと考えられるのは「儲かっているが廃業したい会社」だと思うんですね。廃業しちゃうんだからタダでもいいじゃないですか、こういう発想だと思うんですけれども、儲かっている会社を買おうとしたらどうしても値段は高くなります。それは、廃業しようと思っている会社でも当然です。

では、なぜ高く売れる可能性があるのに廃業したい、しかも儲かっているじゃないですか、そんな会社があるんですかというと、ここの留意点のところに書いてあるんですけれども、その儲かっている理由がオーナー依存ということなんです。要するに、会社という体裁は整えていますけれども、会社イコール社長なんですね。ものすごくいい会社なんですけれども、社長が抜けてしまったら、例えば技術なのか営業なのか、そういった面でスコッと柱が抜けてしまって、社長がビジネスをやっている間は儲かっているんだけれども、社長が抜けてしまったら商売として立ち行かないという会社の場合は、いくら儲かっていて廃業したいと言っても、社長が抜けちゃったら商売はほとんど何もなくなっちゃいますので、買っても意味がないんですね。で、社長が抜けても商売が成り立つという場合はどうしても高くなってしまうということなので、なかなか「儲かっているけれども廃業したい企業」というのを安く手に入れることは難しいです。

廃業したいという企業の事業承継がありうるのはここ。「そんなに儲かっていないけれども廃業したい会社」だと思うんですね。この場合は、今あまり儲かっていませんから、買収金額は安いです。場合によってはタダ。タダで譲渡をすると、実際金銭のやり取りが帳簿につけられなくなってしまうので1円で譲渡したりするというケースがありますけれども、多くの場合、負債・借入金がありますので、1円で譲渡するけれども借入金は負債で引き取ってくださいねというケースです。ここが一番やりやすいと思うんですけれども、負債・借入れが多くなりすぎると、実際キャッシュアウトはないにしても返済していかなければいけないですし、中小企業ですとオーナーの債務保証、親会社の債務保証なんていうのは必須でしょうから、そのビジネスが上手くいかなかったら、結局その借入れを返済しなきゃいけないわけですね。ということになると、買う時には一気にキャッシュは出ていかないかもしれないけれども、将来的にはどんどんキャッシュが出ていってしまうというリスクがあります。

債務を引き継ぐためには、財務の実態が明確になっていないとなかなか難しいです。今いくらの債務があると明確で、これ以上の簿外債務というものがないということであれば計算はしやすいですけれども、儲かっていない企業というのは財務管理がきちんとされていないケースもありますので、その場合は債務ってよくわからないんですよ。確定できないというケースがあります。結構調べたんだけれども、この他にも何が出てくるかわからない。こういう状態では会社は引き継げませんので、事業譲渡とか株式分割とかいうような方法をとって、過去の債務と一旦切り離してフレッシュな状態でスタートできるという方法があります。その方法をとってやっていくということもあると思います。一部の融資というのは、その事業譲渡・会社分割であっても引き継いでいくという形になるのかなと思っています。

次に、このパターン「法的整理をする場合」 法的整理をするということは儲かっていないわけですね。債務が過多になっちゃっている状態で立ち行かなくなっちゃった状態です。潰れるという状況になっちゃったわけですから、そんなもの売れるのかという話なんですけれども、会社もいろんなことをやっている会社がありますよね。全体としては全然、儲かっていないんだけれども、一部の商売がちょっと儲かっているんだと。この商売については誰かに売ってしまおうというふうに考えなくもないと思うんです。特に、言い方は悪いんですけれども、どうせ倒産する会社なわけですから、今までお世話になった方にちょっと儲かっているビジネスだけをほとんどタダ同然で渡してしまおうということも考えなくもないと思うんですね。そういうパターンに当たると非常にラッキーではあるんですけれども、法的にきちんと会社を整理するということになると、最終的には、裁判所が関わってきます。裁判所が関わってくると、破産に至るまでのお金の動きをきちんとチェックします。お世話になった方にちょっと儲かっているビジネスだけをほとんどタダ同然で渡してしまうと、誰が損をしてしまうんですね。例えば銀行とか、他の債権者が損をしちゃうんですね。多少は会社にお金が残るはずじゃないですか。例えば、本来その商売は2,000万円の価値があるはずだと。だけど、Aさんにすごく世話になったので、Aさんにタダであげましたと。その2,000万円分は他の債権者が損をしてしまっているので、裁判所は後で取り消せるんですよ。Aさんだけが得をするのはまかり成らぬということで、後で取り消されてしまう可能性があります。なので、客観的にこの金額だったら問題ないだろうという金額をきちんとつけて、法的整理を受けている会社からは事業を引き取るというふうにしないと、後になって大変なことになりかねないという問題があるということです。

いくつかのパターンで説明しましたけれども、まず、儲かっているけれども廃業したいからといって、タダ同然でそのビジネスを引き取るということは非常に難しいということを理解していただければいいのかなというふうに思っています。

苦しい会社については、目先の資金の心配がなくなるというような状況でいうと、買う方としては、儲かっている会社よりは比較的低い条件で買える可能性が高くなってきます。ただ、今悪い状態の会社が多いですから、その悪い状態を好転できるという自信があれば、このM&Aは生きてくると思います。特に、中小企業の場合は、管理が行き届いていないがために業績が悪いというケースもたまにあります。大企業は管理が得意じゃないですか。ある意味、買い手である大きな会社にとってみると、当たり前の管理を当たり前にやるというだけで、だいぶコスト削減が実現できる、だったら十分利益が出るじゃないですかというような会社の場合には、今業績が悪くても思い切って攻めていくということは十分可能なんじゃないかなというふうに思います。その時にも、誰がいつどのように何をしていくのかという買った後の行動をしっかりと考えておけば、業績が悪い、あるいは廃業したいというというような会社から事業を買い取って成功させる確率は上がってくるんじゃないかなと思います。

本日の説明は以上になります。

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