2015年度において、金融機関が協調融資でM&A目的の融資を倍増させた、と報道されています。記事では、低金利で企業は資金調達をしやすく、金融機関は新たな貸出先を増やしたい、という点が合致していると述べています。

ここで何点か注意するべきことがあります。

１つはこの融資は実態としてほとんど上場企業向けである、ということです。非上場企業が、M&A資金を融資でまかなうことが非常に稀であることは大きく変わっていません。

もう１つは金融機関のリスクです。M&Aに対する融資が増えるのは歓迎ですが、M&A資金として無担保で融資をするということは、実質的にはM&A後の業績を担保に資金を融資することと同義であり、M&A後にどれだけの事業計画を達成できるのかを判断して融資をする必要があります。その審査能力、経験が金融機関にどれだけあるのか、やや不安です。しかも協調融資ということは、融資の乗り合いですから、メインバンクがゴーサインを出せば、その他の金融機関もその融資に相乗りするわけです。実は独自の詳細な審査をできずにM&A資金への極めてリスクの高い融資をしてしまっている可能性もあるわけです。

万一、今後、回収不能が続くと今度はM&A資金融資がまったく実行されなくなってしまう可能性もあり、どうしてもそれは避けて欲しいと考えています。ここでやるべきは、目先の利益の獲得でなく、M&Aというリスクの高い投資に対する融資の審査ノウハウ、経験値を蓄積することなのだと思います。

大原 達朗 Tatsuaki Ohara@ohhara_cpa

Ｍ＆Ａ資金、協調融資で調達倍増　日本企業15年度２兆円超　　：日本経済新聞 https://t.co/rV2IYPI2ab

2016/04/17 06:46:34

 

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