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ニデックの違法配当、問われるのは粉飾を見抜けたか

ニデックの違法配当、問われるのは粉飾を見抜けたか

ニデックが、2025年3月期までの5期連続で、配当や自社株買いの総額が会社法上の分配可能額を超えていたと公表しました。日本経済新聞によると、過去の決算修正を反映した超過額は5年間で約2,400億円に上ります。

この問題を「取締役が違法な配当を決めた」とだけ捉えると、責任の所在を見誤ります。

修正前の決算数値では判定できない

分配可能額は、会社の純資産などをもとに計算されます。ニデックでは、過去の会計処理を修正した結果、単体の純資産が毀損し、過去の配当や自社株買いが分配可能額を超えていたことが明らかになりました。

重要なのは、修正前の決算数値を見ている限り、分配可能額を超えているかどうかを判定できなかったという点です。粉飾がなければ分配可能額は不足していなかったのであれば、違法配当の直接の原因は、配当の判断ではなく、配当の根拠となった財務数値を歪めた粉飾決算にあります。

したがって、取締役や監査法人の責任を考える際の中心的な論点は、配当時に分配可能額の計算を誤ったかどうかだけではありません。粉飾決算を防げたのか、あるいは発見できたのか。そこに善管注意義務を果たしたかどうかの問題があります。

組織的な粉飾を見抜く難しさ

組織的に仕組まれた粉飾では、証拠や説明資料そのものが偽造・改変されることがあります。監査法人や社外役員は、会社が用意した資料を検証しますが、捜査機関のような強制調査権は持っていません。取引先や従業員に対して、強制的に資料を提出させたり、事情を聴いたりできるわけではありません。

もちろん、異常な兆候を放置した、必要な確認を省いた、経営者の説明に疑いがあるのに追及しなかったという事実があれば、責任が問われることはあり得ます。

しかし、粉飾が発覚したという結果だけで、監査法人や社外役員が見抜くべきだったと判断するのは適切ではありません。問われるべきなのは、当時どのような情報があり、どのような調査手段を持ち、必要な注意を尽くしていたかです。

制度を厳しくすればよいのか

悪質な粉飾を見逃さないために、監査手続きや社外役員の確認義務を厳しくする考え方はあります。一方で、そのための制度を一律に強化すれば、企業に継続的なコストがかかります。

年に数件発生する極めて悪質な粉飾を防ぐために、すべての企業に広範な調査や追加手続きを求めることが、経済合理的かどうかは別に検討しなければなりません。制度を強化すれば不正の発見可能性は高まるかもしれませんが、費用に見合う効果があるのか、企業活動への負担が過大にならないかも問われます。

今回の違法配当についても、約2,400億円という金額の大きさだけで、取締役や監査法人の責任が決まるわけではありません。粉飾を誰が主導し、当時どのような兆候があり、役員や監査法人がどこまで把握できたのか。責任は、そうした事実に基づいて判断されるべきです。

重大な粉飾を許さないことと、発見できなかった人に無限定の責任を負わせないこと。その両方を成り立たせる線引きが、今回問われています。

※本稿は、日本経済新聞の2026年10月16日付記事を起点に、違法配当の責任と制度設計について考察したものです。

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