サントリーHDが、ジムビームを扱うビーム社を160億ドルで買収し、買収後のビーム社とサントリーのスピリッツ事業をあわせた売上高は、43億ドルを超え、世界のプレミアムスピリッツ市場において第3位となると報道されている。

サントリーHDによるリリースはこちらだが、対象会社のビーム社の情報がほとんどないので、ビーム社の10-Kで財務状況を把握しておきたい。

大原 達朗 Tatsuaki Ohara@ohhara_cpa

サントリー、米「ジムビーム」を160億ドルで買収　：Ｍ＆Ａニュース ：企業 ：マーケット ：日本経済新聞 http://t.co/qL0jnfp0Y1

2014/01/14 06:13:12

2012年、１年前の数値になるが、概要は以下のとおり（１ドル＝１００円で換算）で、まとめてみると売上3,000億円、営業利益約570億円、税引後利益約380億円、営業CFが400億円程度の企業であり、この企業に1兆6ー7千億円を投じているのは、いかにも高い印象だ。

もちろん対象企業のビーム社は上場しており、株価があり、既存株主の保護のためにプレミアムをつける必要があり、この金額が公表前の同社の株価に２５％のプレミアムをつけた結果なので、資本市場的には異常なものでは決してない。

問題はサントリーが何を評価したのか、という点だ。

BSを見ると純資産が約4,600億円、そのうち重要なものが、のれん約2,500億円、その他無形資産約2,300億円。まちがいなく、こののれん、ブランドを買いにいったとみてよいだろう。

CFからも2012年度にM&Aをしていることが分かるようにジーム社もこれまでM&Aで成長してきているのが分かる。しかも、この企業を1兆6ー7千億円を投じるとサントリーはこのディールで1兆円以上ののれんないしは無形固定資産をかかえることになる。

この数値を正当化するために、かなり積極的な事業計画を準備しているはずであり、その事業計画を達成できない場合には減損によって、多額の損失を計上する可能性もある。このディールは先日上場したサントリー食品インターナショナルではなく、サントリーHDが実施するのがポイントだろう。

この会社は上場していないので、株主を常に意識する必要がなく、こういった思い切ったM&Aはやりやすい。一方でここでも述べたように子会社上場によって、資金調達をしているわけで、悪く言えばいいとこどり、逆にいえば合法的な範囲内で、資金調達をしつつ、リスクのあるM&Aもするという非常によく考えられた財務戦略をとっている例だ。

＊＊
まずはPLから。

売上　　　　約3,000億円
営業利益　　約570億円
税引後利益　約380億円

BSは以下のとおり。

総資産　約8,600億円
純資産　約4,600億円
借入　　約2,000億円

のれんが約2,500億円、その他無形資産が約2,300億円で現物資産は在庫が1,700億円程度で、あとは目立った資産はない。固定資産は780億円程度。

CFは以下のとおり。

営業CFは、年間400億円程度はでているが、2012年はM&Aで700億円程度キャッシュアウトがある。
　
 

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。