オリンパスの科学事業を4,000億円規模で売却する先がベインなどのファンドである理由はそれが金融取引であるからで、事業取引との違いを明確にしておく必要があります。

以下の日経の記事から引用します。これが4,000億円ということは、営業利益から30％相当の税金相当を控除したとして、20年分の利益相当での取引になります。

＊＊＊以下、引用＊＊＊
オリンパスの科学事業は、大学や企業の研究機関向けに工業用顕微鏡や非破壊検査機器を手がける。生物顕微鏡のシェアは世界2位で、工業用顕微鏡は半導体や自動車部品、航空機エンジンの検査に使われ、工業用製品の生産現場では欠かせない製品だ。

22年4～6月期の科学事業は半導体不足や中国のロックダウンの影響から、営業損益が16億円の赤字（前年同期は18億円の黒字）となった。生産面で影響がでているが「受注残は積み上がっている」として、23年3月期の売上高は1450億円、営業利益は265億円を見込んでいる。
＊＊＊引用、ここまで＊＊＊

そしてこれを買うのがファンドということです。ファンドは当然買収後のexitをして、投資を回収する必要があります。
当然リスクマネーですので、投資時には相当の利回りが期待されていないといけません。青写真としては５年間以内の２倍以上売却できるなどの見通しがあっておかしくありません。

上場させるのは１つのオプションでしょう。その過程で、同業の買収をして、規模拡大もあるはずです。さらに投資もして、価値をあげるのです。もちろん、その間ファンドは対象会社の経営に参加しますが、それは一時的で、これは金融取引なのです。資金を調達し、その価値をあげて、自分たちの取り分はもちろん、出資者に返す、そういうモデルです。

一方で事業会社が買収をする場合には、こうした資金回収の方法は難しく、買収した資金は、その事業で回収していかないといけません。時間もかかりますし、日々業務、業績を改善させていかないといけません。一部の天才経営者でなければ、多くの場合にはよく知っている事業を、ブラッシュアップ、より改善していける力のある企業が買収していかないと、金融取引のように急に価値が増えることはないのです。

そのM&Aが金融取引なのか、事業取引なのか、実態をよく見極めておくことはとても大切なことです。

オリンパス科学事業売却、ベインキャピタル軸に　4000億円規模: 日本経済新聞 https://t.co/jebTlv2gEp

— 大原 達朗 Tatsuaki Ohara (@ohhara_cpa) August 23, 2022

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