【ビデオ】東芝と日立、会計的な見地で考える

今日は東芝と日立がテーマでした。期せずして東芝の激しい粉飾決算というのが昨日発表になったわけですが、実際に数字を見てみると、粉飾のことを全く抜きにしても、日立のほうが非常にいいですね。日立は業績があまり良くない、しばらく低迷していたという印象で捉えられていたのですが、粉飾する前の東芝の数値と比較しても、サイズが大きいのはもちろんですが、率も結構いいですよね。特徴的なのはセグメントですね。セグメントの数が圧倒的に日立のほうが多くて、セグメントはマネジメントアプローチなわけだから、要するに各々の事業にきっちりと損益責任を持っている責任者がたくさんいるということですよね。何か今の東芝のセグメントってざっくりなんですよね。実際は全然違うビジネスなのに、家電とエレベーターなどかなり混じっているセグメントというのがその他以外にもあって、そんな全然違うようなビジネスというのを本当に一人とか少数の経営者が損益責任をもってやっていけるのかというような疑問もあって、以前はそこまでバラバラじゃなかったと思うよ。明らかにそういう区分で損益管理するというのが非常に合理的と思われるセグメントだったと思うけど、ここ数年間の中でそれがだいぶ崩れてきてしまっているので、ある意味、まあ今にしてみれば数字を誤魔化すために都合のいいような組み合わせで損益責任を負わせる人を決めて、開示するセグメントもそういう風に分けていたのかなという気もします。ただ、色々な事業に広く薄くというか、あんまり薄くはないけど、分散して数字を誤魔化していたというところが、まあ間違いなく全社的な関与を示すし、期間も思ったより長いので、少なくとも2008年以降は今回の調査の対象となっているわけなので、6年以上この状況にあるという中で言うと、まあ経理の人は相当嫌だっただろうね。こんなことをやれば自分たちの責任も問われるということは6年も7年もやってきている中でおそらくタレこみがあったことは間違いない。まあ基本的に粉飾というのはタレこみじゃないとわからないので、トップが主導している粉飾に関しては。債務超過の状況であったとか、赤字続きで会社がつぶれそうだという状況ではないので、数字を誤魔化していてもキャッシュは足りなくならない。そこまでの状況であればキャッシュが足りなくなってすぐにわかっちゃうという部分があったのかもしれないですけど。
ただいずれにしても今回の件というのは、僕としては非常に残念です。非常に悲しいです。こんなに、何というか、一つ一つの状況を見てみれば粉飾でよくあるパターンだよね。見積りを高度に使わなければいけない進行基準の数値を誤魔化したり、在庫の評価を繰延べしたりだとか、売上の先取り、経費の繰延べ、みたいなわけなので、一つ一つの手法は極めてシンプルだけど、全体として組織ぐるみでこれだけ隠ぺいを続けてきたというのは非常にショックですね。もしかしたら同じような状況を抱えている戦々恐々としている会社はたくさんあるのじゃないかという不安もありますけども、どうですかね、これは。どう処分したらいいと思いますかね。まあもちろん今の段階では何も言えないけども、細かい調査をして、実際にトップが長期間に渡って、しかも数代の経営者に渡ってこれを続けていたということであれば、厳罰だろうね、これは。

会社も実態を把握していないのではないでしょうかね。二重帳簿みたいな感じではないので、会社も会社本来の業績はわかってなかったのではないでしょうか。

途中からわかんなくなっちゃったのではないかな。二重帳簿を大々的に作るわけにはいかないから、少数の人の頭の中にしかきっとなくて、まあ正直きつかっただろうね。それをやっている人たちっていうのはね。
まあ粉飾決算っていうのは、粉飾決算に関わった人を何人か知っているけど、まあ財務とか経理の人間。基本的に彼らは上から言われてやっているので、多くの場合はとりあえず抵抗するけど、抵抗することができず、ということで、彼らに聞くと、「バレてほしい」と。できれば。僕が聞いた人の話だと、監査でバレてほしい、監査で見つけてほしい、という感覚があって、ネタは仕込んでおいたらしいけど気付かれなかったらしい。最終的にその会社は資金が足りなくなっちゃって、会社が潰れちゃって、過去から粉飾していたってことがバレでしまったけど、東芝の場合はそこまで追い込まれていなかったので、タレこみがなかったらもうしばらくの間わからなかったかもしれないですね。これだけ厳しく金融庁とか公認会計士協会含めてチェックをしている中でこういう問題が起きたということは、非常に僕らの業界としては重く受け止めるべきかなと。チェックは厳しいんだよ。品質管理レビューとかすごく厳しいよ。その厳しいレビューに耐えられるように準備をしておくことは間違っていないし、僕らは非常にそれで勉強させてもらっている部分とか、緊張感をもってやれるというありがたい部分は非常にあるんだけど、でも一方で、そういうのが慣れちゃった大手の監査法人からすると、とりあえずこのチェックリストだけ残しておけばいいだろう、チェックされるものだけ残しておけばいいだろう、と極めて形式的な基準になってしまう。実際にレビューとか検査に来る人たちっていうのは、長いと言っても1か月くらいそこらでしょ。その中で年間とか数年間の監査業務を見るということになると、やっぱり形式チェックになるよね。こういう検討はしたか、こういうチェックはしたか、書類は残っていますか、というようなチェックになってしまうので、そこに行き過ぎているというのが、一つの問題かもね。それで今回の東芝の問題が起きたというように因果関係はそこまで明確には言えないけども、こういうことは、こんなに厳しくしても起きてしまうということは、厳しくする仕方ということに問題があったと考えた方がいいのではないかなと思います。せっかくみんな一生懸命やっているのに、結果としてこういう風な結果となってしまう、しかもそれが長期間に渡って判明しないというのは非常に残念だし、証券市場に対しても投資家の信頼感はなくなるし、監査法人に対する信頼感もまったくなくなるし。
ということで、まあ誰に対してもいいことはないので、こういうところというのは、監督・監視の在り方というところも含めて、一生懸命やっているけども正しい方向に一生懸命やっていくということをぜひ考えてほしいという気がします。