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アンソロピックの巨額赤字から考える、「利益」を読む力

アンソロピックの巨額赤字から考える、「利益」を読む力

同じ会社が、ある数字では巨額の赤字、別の数字では黒字になる。どちらかが間違っていると思うかもしれませんが、何を利益の計算に含めるかによって、両方が成り立ちます。

ウォール・ストリート・ジャーナルの2026年10月28日付記事によると、AI開発企業アンソロピックの上半期の純損失は807億ドルでした。一方、一定の費用や損失を除いた「調整後純利益」は27億ドルの黒字だったといいます。

巨額赤字でも、現金を失ったとは限らない

この大きな差の主因は、資金調達で発行した転換証券などの評価損です。アンソロピックの企業価値が上がると、投資家が持つ証券の価値も上がります。その証券が同社の会計上、時価評価する負債として扱われるため、評価額の上昇が損失になったということです。

つまり、事業でそれだけの現金を失ったわけではありません。 事業の稼ぐ力を見たいのであれば、この評価損を除いて考えることには合理性があります。

一方、出資者であるアマゾンやアルファベット側では、投資価値の上昇が利益として計上されます。記事が指摘するのは、アンソロピックの評価損は利益指標から除くのに、出資者側の評価益は残すという、分析上の取り扱いの違いです。

損失は外し、利益は残す。それでは、数字が都合よく見えてしまいます。

まずは、利益の中身をざっくり読む

ただし、ここで「調整後利益は信用できない」と決めつける必要はありません。会計基準に基づく利益にも、事業で稼いだ利益と投資の評価益などが混在しています。大切なのは、どの数字が正しいかを名前だけで判断せず、その中身を読むことです。

まずは、ざっくりでよいのです。本業で稼いだのか。持っている投資の値段が上がったのか。現金の支出を伴う費用なのか。評価額が変わったことで生じた損失なのか。この違いを押さえるだけでも、数字の見え方は変わります。

ただし、ざっくり捉えることと、用語を曖昧に使うことは違います。

EBITDAは、手元に残る現金ではない

例えば、企業の説明やM&Aでよく使われる「EBITDA」という指標があります。利息、税金、減価償却費、無形資産の償却費を差し引く前の利益を意味します。

減価償却費は、設備などの購入代金を使う期間に分けて費用にするものです。その期の現金支出と一致しないため、これを利益に足し戻したEBITDAは、事業の稼ぐ力を見る手がかりになります。

しかし、EBITDAは、そのまま手元に残る現金ではありません。 設備を買えば現金は出ていきます。売上が増えても代金をまだ回収していなければ、現金は入ってきません。借入金の元本返済も、EBITDAには反映されません。

「EBITDAが大きいから資金に余裕がある」とは限らないのです。さらに「調整後EBITDA」であれば、追加で何を除外したのかも確認する必要があります。

アンソロピックも、記事によれば、調整後純利益の計算で評価損だけでなく株式報酬費用を除いています。株式報酬は現金払いでなくても、人に働いてもらうための対価です。現金が出ていないことと、負担がないことは同じではありません。

数字を使う側にも、言葉への責任がある

企業ごとに事業や資金調達の形が違う以上、すべての分析を一つの利益指標にそろえるのは難しいでしょう。だからこそ、数字を使う側が読めるようになることが大切です。

すべての会計処理を覚える必要はありません。ただ、自分が使う指標については、何を含み、何を含まないのかを説明できるようにする。「利益が増えた」「稼ぐ力がある」と言うなら、何を根拠にそう判断したのかを明確にする。

数字を大づかみに読む。そのうえで、使う言葉には責任を持つ。

今回の記事から学ぶべきことは、そこにあると思います。

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