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中部電力の不正問題――組織は不都合な情報に向き合えるか

中部電力の不正問題――組織は不都合な情報に向き合えるか

中部電力が、浜岡原子力発電所の減損などによって巨額の損失を計上します。日経新聞の報道によれば、データ不正問題を受けて再稼働審査の申請を取り下げ、投資回収の見通しが厳しくなったことが背景にあります。廃炉作業についても、実態と異なる報告があったとされています。

なぜ、このような問題が起きるのでしょうか。

 

本稿は、個別の不正の動機や指示系統を断定するものではありません。今回の報道を起点に、不正を生み、修正を難しくする組織の構造を考えます。

事業には目標や計画が必要です。しかし、計画と実態が食い違ったときに、どちらを動かすかで組織の行動は変わります。

本来は、事実に基づいて計画を見直します。追加の対策が必要なら予算をつけ、時間が足りなければ延期し、実現が難しければ中止を検討します。

 

ところが、計画の達成が動かせない前提になると、不都合な事実を報告すること自体が難しくなります。「この話をすると計画が止まる」「上はこの結論を望んでいる」。そうした空気を皆が読むようになれば、判断に必要な情報が上がらなくなったり、上がっても軽く扱われたりします。

経営トップが不正を指示しなくても、この構造は生まれます。

問題を報告した人が責められ、予定どおりと報告する人が評価される。そうした対応が重なれば、社員は何を伝え、何を伝えないほうがよいかを学習します。「不正をするな」という言葉より、不都合な報告をした人への扱いのほうが、組織に強い影響を与えます。

 

専門性の高い業務では、この問題がさらに見えにくくなります。担当部門から「技術的に問題ない」と説明されても、他部門や経営陣には、その妥当性を判断しにくいからです。

だからこそ、内部から疑義が示されたときに、当事者の説明だけで終わらせないことが重要です。必要に応じて独立した専門家に確認し、異論の根拠まで検討する。その手続きを確保することは、社外取締役を含む取締役会の重要な役割です。

 

社外役員に、すべての不正を見抜くことを求めるのは現実的ではありません。一方、重大な疑義を知ったときに、何を確認し、どのような対応を求めたかは、具体的に評価できます。不正の発生という結果だけでなく、監督として必要な行動を取ったかを見るべきです。

そして、経営トップには、不都合な情報を受け止めた後の判断が求められます。

正確に報告した結果、計画が遅れ、費用が増えることもあります。そのときに対応を決めるのが経営の仕事です。「何とかしろ」と現場に戻すだけでは、実態を改善するより、報告を整えることが優先されかねません。

 

中部電力の今回の問題で、こうした構造がどのように作用したのかは、事実関係に基づく検証が必要です。ただ、再発防止を考える際に問うべきことは明確です。不都合な情報が上がる仕組みがあり、その情報によって経営判断を変えられるかどうかです。

組織には、空気を理解していても、それを判断の根拠にしない人が必要です。しかし、その人が発言するだけでは足りません。

 

異論を面倒なものとして扱うのか。それとも、自分たちの判断を見直す材料として扱うのか。経営の姿勢が問われるのは、その場面です。

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