ソフトバンクによるイー・アクセス株の譲渡の意味と背景
なんどかこのブログでもとりあげているとおり、いよいよソフトバンクが株式交換で買収したばかりのイー・アクセスの株式を売却、という報道がされている。
報道によると、2,200億円の価値のあるイー・アクセス株の議決権の3分の2を10億円で11社に売却し、議決権については3分の1しか有さない形にした。このことによって、総務省から指摘された問題を回避する姿勢をみせてわけである。その背景と、議決権比率を下げても何の意味もないことはすでに、ここでも述べた。
結論からいって、ソフトバンクはイー・アクセス株の99.5%を持ち続けるので、イー・アクセスが儲かればそれはほぼすべてソフトバンクの利益となる。
要するに、これは経済的には意味のない取引である。しかし、総務省からいわれのないクレームを受けるくらいであれば、形式的に指示にしたがったようなポーズをとってしまおうというソフトバンクの大人の対応だ。総務省はそもそも意味のない指摘をしていたわけで、おとなしくいうことを聞いたソフトバンクをこれ以上責めることはもうできない。本件に関しては珍しく大人の対応をとったソフトバンクの圧勝、ということになる。
○イー・アクセス株売却発表 ソフトバンク、役員も追加派遣
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD170JQ_X10C13A1TJ0000/
***以下、引用***
ソフトバンクは17日、イー・アクセスの議決権株の66.71%を海外通信機器メーカーや国内リース11社に同日付で売却したと発表した。売却総額は約10億円とみられる。総務省の電波割当時の指針に沿いイー・アクセスへの出資比率を下げると共に、通信機器メーカーなどと連携し日米で通信網整備を加速する。
売却に先立ちソフトバンクは約2200億円相当のイー・アクセス全株を約0.7%の議決権株と約99.3%の議決権の無い株に分割。売却した議決権株は全株の0.5%でソフトバンクは全株の99.5%を持ち続ける。ただ議決権ベースのソフトバンクの保有比率は33.29%になる。業績への影響は軽微という。
売却先は韓国サムスン電子子会社やスウェーデンのエリクソングループなど海外通信機器メーカー5社と、オリックスや芙蓉総合リースなど国内リース6社。
ソフトバンクは同日、株式を売却した芙蓉総合から綾部収治専務取締役をイー・アクセスの取締役に迎えた。同時にソフトバンクモバイルの藤原和彦取締役も新たにイー・アクセス取締役に就任。同社取締役7人のうちソフトバンク側の取締役は3人になった。
***引用、ここまで***
もう、1点、議決権もない株をどうして11社が買うことになったのか、彼等に経済的合理性があったのか、という点について確認しておく。そもそもどの会社がこの株を引き受けたのか、という点はソフトバンクのリリースで確認しておく。
今回の株引受先は、アルカテル、ノキア、サムソン、リース会社、、、ソフトバンクモバイルとのビジネスで相当なボリュームの取引がある企業ばかりで、平均1会社1億円いかない投資であればすぐにでも回収できてしまうレベルの投資である。よって、受け手としても経済合理性が十分ある取引である。
しかし、繰り返しになるが、このスキームを組んで、実施するまでには担当者や弁護士の時間、関係各社の人的資源、その他をかなりつかっているはずで、本来はしなくてもよい余計なことを大人のソフトバンクがせざるを得なかった、とまとめておく。
○子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ
http://www.softbank.co.jp/ja/design_set/data/news/press/2013/20130117_01/pdf/20130117_01.pdf
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