企業業績分析

東京電力決算の前提

東京電力の決算について、今でも話題にのぼることがある。
監査法人がOKを出しているが、本当にOKなのか?大丈夫なのか?という点については多くの識者の語るところにお任せして、この東電決算の前提となっているポイントについて申し上げたい。

その前に一言だけ申し上げると、監査法人のOKを出した=会社がOK、ということではなく、あくまでも監査法人のOK=決算書がその会社の状態を適正に示している、ということだけはお間違えないようにしていただきたい。

東京電力の平成23年3月期有価証券報告書の末尾には監査報告書がしっかりとついている。かなりの追記事項があり、監査人が相当な気をつかっていることがよくわかるので、ぜひご覧いただきたい。
結論は適正意見、要するにいろいろあって、将来に不確定な要素はあるが、この決算は妥当に東電の状況を示している、というものである。ここまでの監査の苦労は相当なものであると思われ、関係者には心より敬意を示したい。

さて、有価証券報告書のP.62「災害損失引当金」の会計方針に気になる記載がある。ここが今回の決算のポイントだろう。この金額の多寡により、債務超過になるかどうかの大きな決定要因となりうるからだ。1点気になる前提がある。長いが重要な部分なので引用させていただく。

~~~~~~~~以下、引用(太字は筆者追加)~~~~~~~~

a 原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等
の安全性の確保等に要する費用または損失 
 福島第一原子力発電所の事故の収束に向
け、原子炉及び使用済燃料プールの安定的冷
却状態を確立し、放射性物質を抑制するため
の費用または損失を計上しており、その具体
的な内容は、燃料域上部までの格納容器への
注水、原子炉熱交換機能の回復、使用済燃料
プールへの注水、放射性物質で汚染された水
(滞留水)の保管・除染処理、原子炉等から
の燃料取出し等に係る見積額である。 
 これらのうち、平成23年5月17日に公表し
た「福島第一原子力発電所・事故の収束に向
けた道筋」における当面の取組みのロードマ
ップに掲げた目標であるステップ1(放射線
量が着実に減少傾向となっている)及びステ
ップ2(放射性物質の放出が管理され、放射
線量が大幅に抑えられている)に係る費用ま
たは損失については、具体的な目標期間と
個々の対策の内容に基づく見積額を計上して
いる。 
 一方、具体的なロードマップを示していな
い中長期的課題に係る費用または損失につい
ては、工事等の具体的な内容を現時点では想
定できず、通常の見積りが困難であることか
ら、海外原子力発電所事故における実績額に
基づく概算額を計上している。 

~~~~~~~~引用終わり(太字は筆者追加)~~~~~~~~
 
決算、ひいてはこの災害損失引当金の前提となっているのが、以下の太字の部分。要するに「原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用または損失」についてはとくに中長期にかかる方針が何も決まっておらず、現時点では海外の事故、おそらくスリーマイル、チェルノブイリ、を参考に見積もり計上をしている、ということである。

この点、監査的にはまったく正しい。今回の件は、国と東電がしっかり将来の方向性を見極めて、それにかかる費用があれば適正に見積がされていることをチェックするのが監査である。当然このような監査手続は相当気を遣ってやっているはずであり、監査手続に問題が起きるとは考えにくい。

問題があるとすれば、その前提。中長期の方向性を決めていないことが問題。ここを決めてしまうと東電の決算がヘタをすると債務超過に陥ってしまう可能性があったのではないか。もちろん、上記記載のとおり 現時点では海外の事故、おそらくスリーマイル、チェルノブイリ、を参考に見積もり計上をしているのだが、両者と福島第一原発は場所も時代も原発の方式も何もかも違う。どこまで適正な見積ができるかは?がつく。この点を国が決めていない→見積もりできないが、何も引当計上しないわけにはいかない→海外事例を参考にできるだけのことはやった、という流れだが、どこまで正確な見積もりができているかは微妙だろう。

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