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AIが求人を探し、人間が仕事をつくる

AIが求人を探し、人間が仕事をつくる

転職仲介で、AIによる全自動化を見直す動きが出ています。パーソルイノベーションは、現場職向けの転職支援でAI中心の仲介を試験運用しましたが、キャリアアドバイザーが介在した方が転職決定率は高く、異業種に転職した人の初年度年収も100万〜150万円高かったといいます。

リクルートエージェントも、AI推薦に任せていた求人提案にアドバイザーを必ず介在させる形に見直しました。記事によると、アドバイザーが提案した求人から転職し、年収が1割以上上がった人の割合は、AI推薦より8ポイント高かったそうです。

もちろん、これらの数字だけで「人間の方が優れている」と一般化はできません。支援対象や求人の種類が異なる可能性があり、アドバイザーの介在が結果の差を生んだとまでは断定できないからです。それでも、AI中心の運用を進めた企業が人の介在を戻している事実は、何が人間の仕事なのかを考える材料になります。

AIが照合できるのは、定義された仕事

AIは、求職者の経歴や希望条件と求人情報を照合し、合致度の高い候補を素早く提示できます。職務内容、必要なスキル、責任範囲、評価基準が明確で、求職者の能力も把握できていれば、求人と人材のマッチングはデータ処理に近づきます。

ジョブ型が十分に整い、仕事の中身が明確に定義されているなら、AIが力を発揮しやすい。候補者が多くても、基準に沿って比較し、条件に合う人を選べるからです。

しかし、現実の求人票は必ずしも仕事を明確に定義していません。企業自身が「何を任せたいのか」「どんな能力が必要なのか」を整理できていないこともあります。JD(職務記述書)が曖昧なままでは、AIは書かれた条件に合う人を探せても、そもそも何を基準にマッチングすべきかを決めにくいのです。

人間は、曖昧さの中から仕事と可能性を読む

アドバイザーは、求人票の文言だけでなく、企業が採用する背景や現場の課題を聞きます。求職者についても、本人が話す希望条件だけでなく、経験の中で何をしてきたのか、何に迷っているのかを確かめます。

そこで、企業が求める仕事と求職者の経験を、求人票に書かれた条件だけでは見つからない形で結び直すことがあります。異業種への転職なら、前職の経験を別の仕事で生かせる可能性を示し、本人が「自分には無理だ」と考えていた選択肢を、検討できる選択肢に変える。本人が応募を迷えば、その不安に向き合い、企業との条件交渉も支援する。記事に描かれている人間の役割は、単に求人を紹介することではありません。

この点で、人間の強みは「AIより本音を聞ける」というだけではないでしょう。企業と求職者の双方に残る曖昧さを解釈し、まだ言葉になっていない仕事や能力を仮説として描き、双方が判断できる形にすることです。

ジョブ型が完成すれば、AIが勝つ

この構造から考えると、ジョブ型が進み、職務や能力、評価基準が明確になるほど、AIの優位は大きくなります。仕事が定義されれば、AIはその定義に沿って候補者を探せる。企業側の採用要件を言語化し、求職者側のスキルもデータ化できれば、人間が担っていた照合や推薦の多くは自動化されていくでしょう。

逆に、JDが曖昧で、企業も求職者も自分のニーズや可能性を十分に言語化できていない場面では、人間の介在価値が高まります。人間は、完成した基準に沿って選ぶだけでなく、基準そのものを一緒に見つけるからです。

ただし、曖昧さが人間の仕事として残り続ければよいわけではありません。曖昧な求人は採用のミスマッチや非効率を生みます。アドバイザーが企業の採用背景を聞き、必要な仕事や能力を明確にできれば、その知見をJDに反映し、次回からはAIがより正確に候補を探せるようになります。

人間が曖昧さを整理し、仕事を定義する。その定義された仕事をAIが効率よくマッチングする。人とAIの役割は、このように移っていくはずです。

この記事が示すのは、AIに人間が勝ったという単純な話ではありません。仕事の定義が明確ならAIが勝つ。仕事の定義そのものが曖昧なとき、人間がその曖昧さを解き、求人と人材の双方に新しい意味を与える。 人間の価値は、AIが処理するための条件をつくるところにあります。

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