M&Aのハウツー

今後のM&Aマーケットはどうなるのか。

マーケットのことから先に申し上げてしまうと、まだまだ相当厳しいです。まさに潜在需要の状況です。絶対にM&Aを将来的にはやりたいと考えていらっしゃる方は多いはずだし、必要とされる方は多いはずですけれども、それがまだまだ顕在化していないです。片耳で聞きかじった方だけが何となく「M&Aをやれるよね」みたいなことでお問い合わせをしていただくとか、あるいは、よく分からないのに自分たちでM&Aのビジネスを始めてしまうといことがすごく多いです。
ですから、業界としてもっとM&Aの正しい姿というか、正しいとか悪いということはないのですが、本当の姿というのをお伝えして、このマーケットの育成にご協力いただける方が増えていければなと思っています。
M&Aというのは非常に有効なツールだと思っていまして、かつてこういう案件がありました。あまり細かいことは言えませんが、コンサル系のサービスです。あまり細かく言えないというのはややグレー系のビジネスで、胸を張ってこれが適法だと言えるかというと、「たぶん問題はないけれども、細かいところを突かれるかもしれない」というビジネスを極めて短期間に作り上げた方がいらっしゃいます。
その方というのは、そのビジネスを長くするつもりはないです。ビジネスの立ち上げが好きというか得意な方で、思いついてすぐに行動したら成果が出て、年間1億くらい利益を上げてしまいました。このビジネスは当然のことながら、すぐに売却されました。

M&Aを効率的にやるためには一つ条件があると思っていまして、売るほうも買うほうも、あらかじめ準備しないと駄目だということです。
今の日本の上場企業はM&Aはここでやっている2000件くらいやり続けていますけれども、皆さんは、何か記憶にあるところはありますか。「あそこのM&Aはすごくうまくいったよね」「あそこはすごい。あそこの会社はM&Aが超うまい」とか、あるいは、「あそことあそこの会社が一緒になってすごく良かったよね」というような記憶はありますか。たぶん、ないと思います。ありますか。「たぶんない」と誘導してしまってはいけないのですけれども、ここ数年間の日本のM&Aの中で、あの会社とあの会社が一緒になって、あるいは、どこかに買われてすごくうまくいったという事例はありますか。あまりないですよね。全然ないわけではないです。成功事例というのは探せばいくらかあって、M&Aが非常に得意な企業も、数は少ないですけれどもあります。
それは、理由がはっきりしています。自分たちから主体的にM&Aに取り組んでいないのです。われわれ業者から案件を持ち込んで、「それ、いいよね」と言ってから考え始めるのです。だからうまくいかないのです。

例えばですけれども、不動産並みに玉があればそれもあり得ると思います。「いい案件を、まずもってこい。その中からうちが収益がでている案件を選んだ後に詳しい資料をよこせ」というやり方もまだ成り立つと思います。ただ、M&Aの場合は、そもそも、そんなに玉がありません。
あとは、例えば不動産であれば角地であったりなかったりという部分もあると思いますけれども、同じ坪数のラーメン屋が隣にあって内装もすべて一緒だとすれば、基本、不動産の価値は一緒です。でも、これがビジネスだったら、全然違います。

片方は毎日行列ができています、片方は閑古鳥が鳴いていますと言ったら、全く別なわけじゃないですか。不動産と比較してみても、そんなに質が均一な玉が出てくるわけがないです。さらに言うと、不動産と比較するとまだまだマーケットができきっていないので、いい案件を持って来いと言ったら、たまたま自分がやりたいと思って、うちの会社はここが足りないと思っているところにはまる案件は、ほぼないです。はまると自分で思い込んだ案件しか買えないです。だから、うまくいかないのです。持ち込まれて「これはうちにとってみれば、今、安いかも。金も借りられるし、売り上げも上がるし、利益も上がるからいいかも」と買っている企業が大半です。だからうまくいきません。これは、中小企業もきっと同じです。
最近、結構問い合わせがあります。小金を持っているとお客さまのことを言ってはいけないですけれども、例えば個人で「2000万円くらい、余裕の資金があるので、それで利益があるような物件があったらもってこい」みたいな話がありますが、それはないです。

いえ、厳密に言えばあります。うちの売り案件でも2000万円以下で利益がちゃんと出ている店舗なりはあります。ただし、よく考えてみてください。2000万円ですから、自分で働かないと無理です。自分がお店を切り盛りすれば、十分に自分の所得というのは売却金額の回収も含めてできるというのはありますけれども、1000万円、2000万円ぐらいで、誰かに投げておいて利益が出るような案件はあるわけないじゃないですか。結構、そういう安易なご相談みたいなものがあります。

 そういう方は、たいてい、途中で消えていきます。言い方は悪いですが、雰囲気に酔っているだけです。最近僕は、自分の中で買う、買う詐欺という言葉を持っていますが、買うと言って絶対に買わないです。その買う、買う詐欺の方というのも、ある程度、件数をやっていると読めてきます。ある程度、読めてきます。
ですから、実際にビジネスをやろうと思ったら、そういう方にも気を付けていかなければいけないのですけれども、まだまだマーケットはそんな段階ではなくて、そういう方すらまだ少ないです。ですから、そういう方にももっとM&Aに興味を持っていただいて、潜在需要を顕在化していかないといけないというのが、今のM&Aマーケットの実情かと思います。
では、なぜ今まで大手のM&Aの関係の企業が商売をやってこられたのかというと、これは先取りになってしまいますが、マーケットというのは、こういう感じです。

これは売買金額で、M&Aをするとき、会社を買収するときにいくらで売買されるかというところを金額にしています。10億円以上と言っていますが、10億円以上のマーケットというのは、かつてのM&Aのマーケットの中で言うと小ぶりな案件です。相当小ぶりです。全然、すごく大きいという話ではないです。
かつては、本当にこの辺ばかりやっていました。100億円とか1千億円というところを、一発狙いでずっとやっていました。レコフという会社も、ずっとそこを狙ってやっていました。ただ、今はそんなに景気も良くないですし、そんな案件を次から次へと扱えるわけがないです。でも、M&Aというのは売り手にとっても買い手にとってもそれなりに意味があることではないかということで、日本M&Aセンターがこの辺を開拓するようになりました。ここまで来るのに20年間かかっています。

これから先は、もっともっと、こういった1億円とか、場合によっては1億円以下というところのマーケットを開拓していかなければと思います。たいていの場合、事業承継の一つの解決策としてM&Aというのは書かれていますけれども、マーケットがまだまだ育成できていませんので、このままだと交通事故に遭うか、宝くじに当たるくらいの確率でしかM&Aは起きていかないと思います。
ここのマーケットをきっちり作っていかないと、われわれの商売の話もありますが、本当に一般の方がM&Aを使ってうまく事業承継をするとか、あるいはエグジットを図るというところにたどり着きません。今は、こんな現状です。

「いや、私は聞いたことがあります。小さなマーケットで、人づてでやったところがあります」というのは、あると思います。でも、続いていないと思います。例えば、間を取りもった方が、その1件はたまたま自分のよく知っている人同士の間をつないでやったけれども、その次に2件、3件と続いていますかと言ったら、続いていません。別に悪いわけではなくて、仕組み化になっていないのです。市場ができていないのです。ですから、それを作っていかないといけないだろうなというのが私たち協会の認識で、協会を作ってきた経緯と起源になります。

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