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買い手が何を見て買収を決めるか

本記事は、改めて大切な内容ですので、一部加筆・修正を加え、再掲します。

M&Aにおいて、買い手がどのようにして“買う”か“買わない”のかを判断するのか?
何を見て買収を決めるのか?というテーマについてです。

初めに一番重要なことですが、買い手は何を見て判断をしようとしているかというと、このビジネス(会社)を買って“将来いくら稼げるのか”です。
買い手(自分)が、これから投資しようとしている金額よりも“将来稼げる金額の方が大きい”といった場合には、“買う(買収する)”わけです。
例えば、1億円で投資しようとした時に、「1億円はどうひっくり返っても稼げそうもない」案件でしたら、誰も投資しませんよね?
そのような訳で、買い手は「いったい将来いくら稼げるのか?」といことに注目しています。
ただし、「いったい将来いくら稼げるのだろう?」と考えた際に、過去の実績は無視できないわけです。今までどれぐらい売上を上げていて、利益を稼いでいたのかといが、将来を予測する時には、重要なポイントとなります。
例えば、皆さんが将来のトヨタの売上・利益を見積もろうとした時に、やはり過去の実績を参考にすると思います。
これから先の自動車業界の環境やトヨタ自身の競争力とか、様々なことを考慮して将来「トヨタはいくら儲けるのか?」と考えると思います。
トヨタはとても大きな会社(企業)ですが、このような考え方は会社の大小を問わず、過去の実績を見て、事業計画を立てていくことになります。
買い手の目線で言うと、“過去の実績”の中で「売上が本当に実在しているのですか?」というのは、規模の大小を問わず必ず確認します。
規模の大きい会社(例えば上場会社)を買収しようとするときは、売上の実在性というのはあまり気にしてはいません。そのような会社が売上を粉飾しているというのは、よほどのことが無い限り考えられません。買い手は、もちろん最後には必ず確認をしますが、初めから疑ってかかるといったことはありません。
但し、上場企業では無いような、いわゆる中小企業などを買収しようとした時に、当然過去の実績のPL(損益計算書)を見てはいるのですが、「売上が本当にあるのか?」ということは重点的に見ます。
弊社がメインで扱っているような“中小規模M&Aの案件”でも、「売上が本当にあるのか」というのは、買い手は入金を含めてかなり慎重にチェックされています。
過去に売上がどれぐらいあったというのは、将来の売上を見積もる際にとても重要な要素ですので、買い手はそれだけは厳しく見るようにしています。

次に、見込の経費についてですが、将来の経費というのは、買い手が“買った後に変わる”ということがポイントです。
例えば、現在は全く儲かっていないという会社があるとします。でも、買おうとしている会社は、「自社ならもっと利益出せるよね」と思うことが多いのです。
そのような場合、理由は「人件費が高すぎる」(本来なら正社員じゃなくて契約社員やパート社員でできる仕事を、この会社は正社員にさせているから利益が上がらないのだ)などと買い手が判断した場合、買い手は買収後に「今は正社員で人件費が3000万円かかっているが、このうち半分の人員をパートに変えたら、人件費はいくらになるだろう?」という見込みの経費を計算しているのです。

そのようなこともあり、買い手は過去の経費については、それほど重要視していません。本当に売上が実在していて、買い手は自分が買収(購入)した場合には、運営方法を変更するため、変更した後にどれぐらい経費が発生する(減らせる)のかを試算しているのです。それ上で“いったいいくら利益が残るのか”或いは、“やっぱり利益が残らないのか”と判断をしているのです。買い手は、そういう点を見ています。

いずれにしても買い手は、“過去の実績”をベースに、事業や会社を見ているのでは無く、自らの目線で“将来いったい、いくら稼げるのか?”という点を見ています。
そのため、売り手の“過去の売上”に信憑性が無い場合は、その時点で売り手の信用は無くなってしまいます。数値を誤魔化してはいけない理由がここにあります。M&Aの交渉中に信頼関係をなくすということは破談に直結します。

そのようなわけで、売り手としては少なくとも売上にデタラメで信憑性が低い数字が入っているようなことは避けなければいけません。
経費についても、デタラメだと買い手は不安になります。M&Aの取引では、売り手と買い手の信頼関係が崩れてしまうと、ブレーク(途中で破談)してしまいます。
ですので、売り手・買い手はお互いに信頼関係を損なわないようにして頂きたいと思います。

次に高値で売却を考えている時に、“どのようなことをすれば高値で売却ができるのか”についてお話したいと思います。
ここでは“ストーリーを付けて(描いて)高値売却”書いていますが、売り手は事業計画の中で将来「うちの会社はこれだけ稼げるんだ」というストーリを描く必要があります。

例えば、「営業拠点を増やします」とか、「マーケティングの方法を変えます」とか、「現在、○○のようなコスト削減の方法を取り組んでいます」というストーリーを描いて、「これを実現すれば、これだけ利益が上がっていきます」といった絵を描くのです。
しかし、買い手側も将来の稼ぐストーリを描き切れない場合も多々あります。

M&Aでは、一般的に売り手よりも買い手の方が規模が大きい会社であることが多いです。大きな会社であれば、企画部門のような専門の部署のが、「うちは将来どうやって稼いでいくのか?」とテキパキと将来の絵を描いているように思えるかもしれませんが、案外そのようなことはありません。
そのような訳で、売り手側から「将来、うち(売り手)はこういう施策を取って設けていきます」という絵を、買い手に提示してあげた上で買い手側には、その絵を叩いてもらうということになります。
「いくらなんでも、見込みが甘いんしゃないですか?」という点については、「確かに硬く(厳しく)見積もるとそこまでは難しいか」となり、売上のベースを下げてみるとか調整をして、価格交渉を客観的に進めていくこと可能になります。
売り手はこのようなストーリーを描かずに、「1億円で売りたいです」と言っても、買い手が「7,000万だったらいい」と言われたら、全く交渉にならなくなってしまいます。

売り手は売却金額を1億円に決めたのなら、「なぜ1億円になったのか」という根拠を作っておかなければいけません。その根拠は「将来1億円以上稼ぐため。根拠は事業計画です」となれば問題無いのです。
現在では、事業計画はエクセルで作成するのが一般的ですので、エクセルに数字を入力していけば、それなりの事業計画が作成することができます。そのため、売り手が1億円で売却したいのなら、1億円になるような事業計画を作成するのは簡単なのです。しかしながら、そのような事業計画は誰もあてにしていない訳です。
なぜ、「その事業計画が実現可能なのか?」となった場合、将来のことですから勿論やってみなければ分かりませんが、「現在より売上が○○%上がります。」或いは「コストが○○分下がります」などと、具体的な施策を一つ一つ積み上げていく事業計画を作成していく必要があります。

稀に売り手から「うちの会社いくらで買ってもらえるか、聞いてもらえませんか?」といったオファーを頂くことがあります。しかし、弊社の経験上そのような場合は100%売れません。
買い手に取っては、売り手目線での“会社がいくらなら妥当か”というのは知ったことではないのです。
売り手は「うちの会社はこれだけ儲かる」というストーリーと根拠を持っている会社は、買い手にとっては“ノドから手が出るほど欲しい”案件(会社、事業)なのです。
ですので、売り手の皆さんは事業計画をしっかり作っていくことが、“高値売却”を狙う場合のポイントとなります。
勿論、売り手様自身で事業計画などを作成するのが難しい場合などは、アドバイザーと協力しながら、そのストーリーと事業計画とバリュエーションの基礎資料を作成していけば問題が無いことです。
現時点では、このような“サービスが行えるアドバイザー”と“出来ないアドバイザー”(だいたい○○万円ぐらいの値段ならつくのではないですか?とザックリとしか回答や説明しかできないアドバイザー)とは、力の差が歴然です。
売り手の皆さんは、“そのようなサービスが行えるアドバイザー”か、はたまた“出来ないアドバイザー”なのか、是非会って・話をして、判断をして頂きたいと思います。

反対に、そのようなサービスが売り手側(売り手・売り手のアドバイザー)では全く出来ない場合(例えば売り手の管理レベルや企画部門の能力が高くない場合)には、価格を含めて交渉は買い手の主導となってしまいます。
売り手の管理能力企画能力が低くて、先に述べたような“将来の絵”が全く描けない場合には、買い手がその絵を描かざるをえなくなります。
買い手にもそのような絵を描ける人は、殆んどいません。そのため売り手の過去の売上(実績)をベースにします。そのうえで、これから先にどれぐらいの経費が掛かるのかを試算しながら、「○○千万円だったら投資してもよいかな?」、「○○千万円までだったら投資しよう」といった中で金額を算出します。
その上、買い手は“そのようなこと”を売り手側には絶対に伝えません。売り手はこれから買い手の会社が「これまでの延長上でこれからの事業計画はどのようになるのですか?それで金額を決めましょう。」と提案してきます。
一方で、売り手はその裏では、「自社ならコスト削減や拡販ができる」と思っていることを売り手には伝えません。そうなると、買い手はどんどん得になっていく訳です。

そうではなくて、売り手の方から「こういう施策があり、そちら(売り手)の力を借りなくてもうち(買い手)の独力で施策(戦略)を打っていけます。だからこれだけ売上が伸びます」といった絵を売り手主導で描いていかないと、買い手の管理能力が高い(いわゆる頭の良い)人たちに、交渉を押されて売却条件(金額)がどんどん悪くなっていってしまいます。このようなことが傾向として多々あります。
よって売り手の方は、このようなことに“きちんと”協力してもらえるアドバイザーとタッグを組んで、“売り手主導”でストーリー・事業計画を作成して、「この金額分の価値は、うちにはあるんですよ」ということを、売り手に示す流れを作っていく必要があります。
買い手は事業計画を見て、「将来いったいいくら稼ぐのか?」というのを見ています。また、売り手側からすれば「うちは将来これぐらい稼げます。理由はこれです」といった形で買い手に提示できると、売り手の皆さんには有利に交渉を進めることができると思います。 

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。
                                                                                                                                                     
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