ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」で登場した民事再生を会計士が解説してみる。
『民事再生』と言えば、ドラマのルーズヴェルト・ゲームで、青島製作所の細川社長(唐沢敏明)に対して、笹井専務(江口洋介)が「うちの会社は、もう民事再生しかないのではないか?」と迫るシーンが、記憶に新しいところですけれど、『民事再生』というのはどの会社にもできるものではありません。もちろん危機に瀕したもうすぐ潰れてしまいそうな会社が採るべき方法ではあるのですが、どんな会社でも出来る訳ではないのです。
では、どんな会社ならできるのかという例を挙げてみたいと思います。
例えば、全体として赤字10億円です。借金が100億円あります。この会社もうお金がもちませんとなった段階で、普通の会社は潰れて(破産して)終わりです。
債権者(お金を貸している金融機関とか、取引先)というのは、このまま潰れると一銭も回収できないのが通常のはずです。ただ例外的に全体で見ると大赤字なのですが、一部だけ黒字の部門(部分)があるといったケースは考えられますし、比較的有ります。大きな会社であれば、殆ど赤字だけどこの部門だけは儲かっている。或いはリストラをして借金を減らして利息を減らして、従業員を減らしてリストラをしまくれば、多少の利益は見込める事業部門があることがあります。こういう場合に『民事再生』が検討されることがあります。
例えば黒字を1億円あげている部門で、これから5年間で3億円返します。これを再生計画と言うのですが、この再生計画に十分な実現可能性があれば、裁判所はこの再生計画を認めます。
その代り、債券者はこれから5年間で3億円回収できるのです。今潰れてしまうと1円も回収できないわけです。もちろん、もともと100億円貸している内の1円も返ってこないのか、3億円返ってくるのかというのは、金額的には大したことではないかもしれませんが、1円も回収できないよりは、5年間で3億円回収した方がいいだろうと、金融機関や取引先も考えることが多いです。
その前提となった再生計画を裁判所が認可した場合に、『民事再生』というのが許可されます。その場合、この会社は残ります。もちろん赤字の部門は全部閉鎖(クローズ)して、売却をするなり、ただ潰すなり、色々なことをして無くしていきます。この100億円の借金も一旦チャラにしてもらいます。その代りに新たに3億円は返します。と言うような計画を立てて、このまま潰れるよりも少しでもお金が回収できますというような段階になって初めて『民事再生』というのが認可されます。ただしその場合も、残った黒字1億円の会社ですがお金が全然ない状態です。1億円の利益を出そうと思えば、いくらか運転資金が必要になるので、お金が一銭もないと、この部門(会社)は一年間で1億円を稼ぐことができません。
どうしてもお金が必要になってきます。ではそこにお金を出してくれるのは誰なのかと言うと『スポンサー』です。この100億円は免除してもらいますが、会社にお金が入ってくるわけではないので、会社が生きていくために、取引先にお金を払わなければいけないし、従業員にも給料を支払わなければならないですね。どうしても、そのようなお金が一定以上必要となってくるわけです。そのお金を入れるのがスポンサーです。
この債務免除(100億円の借金チャラにしてくれること)後の再生計画(5年間で3億円返済いたします。本来はもっと細かく決められた計画になります)を実行するための資金を出すのがスポンサーです。スポンサーは新しい会社(赤字の部分を切り捨てた黒字の会社)の株主になることが多いです。ではなぜ、スポンサーはこんな所にお金を出すのですか?と言うと、100億円の借金が無くなりますから、ちゃんと経営すれば利益が出るはずです。スポンサーのグループ全体としても利益になるし、新会社の再生が上手くいった場合、どこかの会社に売却して、将来的にまとまったお金をスポンサーが手に入れることができる可能性があるという意味でスポンサーになる企業が多いです。
もちろんきちんと利益を出せる事業がある場合に限られますので、どこを見ても利益がでそうな事業が無い場合は、この『民事再生』というのは認可されることはありません。
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