M&Aの後継者問題、解決策は?(2)
後継者問題の解決策ということですが、これは日本の統計ですが、毎年7万社が後継者の不在で廃業しているそうです。本当かなと思う部分もあるのですが、きっとこれはアンケートで取っていると思うので、アンケート後継者不在というところに丸をすると、ここに入っているわけです。でも、会社をつぶした人は後継者不在というのと、経営が苦しかったからというのがあって、普通は経営者不在に丸を付けますよね。ですからこれは、本当は経営が苦しくて廃業をしているのではないかという気もしなくはないですけれども、統計上は毎年7万社が、後継者がいないという理由で廃業しているそうです。3分の1が正しかったとしても、2万社以上が後継者がいないと回答しています。
先ほどのM&Aのケースは、年間2000件です。3分の1の2万件のうちの10パーセントでもM&Aが成約したとしたら、今の統計上では、倍になってしまいます。で
すから、本当にM&Aが有効に活用されていないというネガティブな一つの数字なのかなと思っています。ある意味、ビジネスのチャンスというのは、まだまだあるはずです。たぶん、まだあるはずです。
これはまた日本の統計ですけれども、飲食店は変わりますよね。同じところに行っていても、コロコロ変わりますよね。数字で言うと、1年間で5万店飲食店が増えますけれども、6万店減っています。ですから、純減が1万件続いています。
中には減らずに同じところでずっと違う店舗がやっているというケースもあります。これです。M&Aをうまく使うと、下の囲みですが、アメリカでは80パーセント以上の企業が5年以内に廃業しています。日本もそうかもしれません。ただし、買収した場合は、5年以内に15パーセントしかつぶれていません。それは当たり前です。だって、お客さんが付いているか、お客さんが付かずにゼロからやっているかどうかだけですから。
もちろん、何回も繰り返しになりますが、買収金額によります。初めに借金をすごくして全然稼げないものを買ってしまったら、売り上げで利益が出ていても、借金を返さないとつぶれてしまうというのはあるかもしれませんけれども、金額さえ適正であればということです。
飲食は、たいていの場合、つぶれても飲食店ですよね。あれは居抜きの商売ができています。居抜き譲渡です。居抜きは分かりますか。分かると思いますけれども、飲食店はそれなりに設備が要りますよね。水回りも要るし、ガス周りもあるし、ガスバーナーとか、もろもろ要りますよね。大半の場合は賃貸者契約なので、スケルトンで借りて、厨房(ちゅうぼう)の設備や何かを全部やって、出ていくときにはスケルトンにしなければいけません。要は、原状回復しなければいけないわけです。ですから、コンクリート打ちっ放しの状態で借りていたとしたら、通常はコンクリート打ちっ放しで出ていかなければいけないわけです。でも、それは当然、お金がかかります。作るのにもお金がかかるし、出ていくときに全部取り払って出ていくのにもお金がかかります。当然、敷金10カ月や何カ月分は入れていると思いますが、そのうちの大半は、それで持っていかれて、なくなってしまうわけです。
でも、次に飲食店をやりたいという人がいたとしたら、壊した後にまた工事を入れて、また同じような厨房設備を作っていかなければいけないわけです。それはオーナーも、営業期間が短くなるので嫌なのです。工事の間は少しまけてくれみたいな交渉があったり、まけなかったとしても、次が決まるまでの間に賃料が取れないですよね。やっぱり嫌なのです。できれば1週間くらいで次が入ってきてくれるほうがいいし、出ていく人たちにとってみても、原状回復しなくても良ければ、敷金がほとんど返ってくるわけです。
逆に、今度入る方から見てみれば、もちろんうまくいかなかった店舗なので内装はある程度変えたりしなければいけないと思うのですけれども、水回りをゼロから作る必要があるかというと、飲食店の場合は、基本、ないわけです。ですから、居抜きの店舗の譲渡を専門にやっている業者がいるくらい、これは回っていっています。ですから、これはある程度マーケットが成り立っています。店舗の居抜き、特に飲食店の店舗の居抜きは成り立っています。
ただ、これは完全に不動産で、しかも賃貸案件の不動産の商売なので、不動産業務の方でないと、おそらく情報は取れないと思います。まじめにやると、宅建の免許なりがないと、お金を取っているところは違法です。1件、2件の口利き料みたいなのでさらっともらってしまう分にはいいと思いますけれども、看板を大々的に上げてやっていると、そのうちたたかれると思います。
あとは一般的に賃貸借の契約なので、手数料と1カ月分の賃料。飲食は30万円程度でしょうか。30万円分の家賃のお店であれば、これくらいの案件です。ですから、ビジネスの点で言うと、利益が出ていて、例えば1000万円で売れたとしたら手数料が30万円ということはないですよね。一般的には100万円くらい取るだろうということですし、あとは、居抜きというのはあくまでもコストセービングです。出ていく方は原状回復をしなくていいというコストセーブ、経費削減ができます。入る方は、ゼロから作らなくていいというコストセーブができるだけです。
もちろん、やった方がいいです。居抜きができるのに、わざわざ一度壊して作る不合理、非経済的なことをやる必要はないですけれども、本来であれば利益が出ている間に会社の譲渡あるいはビジネスの譲渡というのをしていったほうが、ここで言う開廃業率への貢献。業界でどんどんお店がつぶれていって、トータルでは純減で1万店ずつ飲食店が減っているようなものも、徐々になくなっていくのかなと思います。先ほど申し上げたような下のアメリカの事例も、そ
のうちの一つのExampleだと思っていただければということです。
ですから、まだまだこの辺はうまく使い切れていないのかと思います。その原因も、いつも会社を買ったり、いつでも会社を売れるような状況になっていないというのが一つの大きな原因だと思います。苦しくなってから考えるので手遅れなのです。常に考えているから、もしこの先厳しいかもしれないと思ったときに、まだ利益が出ている状態で売りに出すということが可能になります。考えていなければ、苦しいから考えます。でも、苦しいものを買う人はいません。多くの場合、買いたい人というのは、もうかっているから買いたいのです。そこでアンマッチが起きてしまっています。売りたいと思っている方は、今の苦境から抜け出したいから売りたいと思っています。買いたい人は、そんなものは要りません。常にM&Aを、いつでもM&AにReadyになっている、準備ができているということがすごく大事だと思っています。
不動産もそうです。中古の不動産というのは、以前に比べればだいぶん流通するようになってきていますけれども、持ち家の方で、家がいつでも売れるようにと思って実際に行動されている方は少ないですよね。でも、アメリカ人は常にそうです。チャンスがあれば売ってやろうと思っているので、常に準備をしています。「お客さんを連れて明日行く」と言ったら、すぐに見せられるぐらいの状況にしているケースが多いです。
あとは、アメリカ人は日曜大工をやる印象がありますよね。実際にやっていると思うのですけれども、あれも趣味でやっているだけではなくて、やはり売ります。不動産の価値を毀損(きそん)させないために自分で手を加えていって価値を維持するみたいな部分もあります。ですから、そのメンタリティだと思います。実際はへたくそな人が塗って毀損(きそん)している場合もあるかもしれないですけれども、いつでも売れる、いつでも買えるというメンタリティは、とても大事だと思います。ですから、皆さんもお客さまにそういうアドバイスを、今から始めるというのが大事かもしれません。
これはいいと思ってもやはり中身がぐちゃぐちゃで、経営関係が分からないような状況だと、これだと危ないから買えないといって、最後の最後の段階で成約しないことというのは、結構あります。買うほうからしたら、リスクがはっきりしないわけですから、そうですよね。「このお取引先との基本契約は、どうなっているの」「口約束です」「今から結んでもらえば」「いや・・・」「うちに替わったらどうなるの」「いや・・・」ですよね。でも、メーンのお客さんが「いや・・・」では、商売は買えません。そこは絶対に続けてもらわないと、常に、事前に準備をしておくということは、本当に大事だと思います。
このスライドは、先ほど来ご説明しているところのまとめかと思いますが、やはりうまく使えば、そして適正価格でやれば非常に社会的意義といのは大きいのかなと思います。ただ、適正価格ではないというケースが今まで多いので、あまりポジティブな印象がないのかなというのが、今までのまとめです。
これは先ほど見ていただいたスライドですけれども、要するに、1億円以下とは限りません。下のほうをマーケットとして作っていかないと、事業承継とか広い意味での雇用維持という目的は達成できないのかなと思います。実際に、今、この辺というのがあまりできていないわけです。なぜなら、そんなにもうからないですし、ロケーションもバラバラなので営業をしていくのも結構大変だからというのが、今のM&Aのマーケットなのかと思います。ですから、われわれは各拠点にいろいろな仲間を増やしていって、その方々にやっていただきたいと思っています。
拠点というのは、そういう意味では、事業所を作ったりということではありません。いろいろな地域に皆さまのようなお仲間がいらっしゃって、そこで実際に行われた案件のやりとりを通じることによって、日本中どこでもM&Aが普通に行われるという状況を作っていかないと、実際にはこの問題は解決できないのかと思います。
本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。M&A仲介・アドバイザーを事業としたい方・既にされている方へ | |||
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