IPOを実現したいスタートアップ経営者のためのセミナー

そもそも上場すると何が変わるのか?

 IPOの会社の実態ということですが、上場すると何が変わるのかというのが、まず皆さんとお話ししたい論点の一つ目です。上場すると、何が変わると思いますか。

-- 社会的信用が上がる。

大原 社会的信用が上がる。他にありますか。上場すると何が変わるのか。皆さんが、上場を少しでも考えていらっしゃるとすれば、何のために上場したいのですか。格好良いからですか。飲み屋でモテるからですか。それも上場していない会社よりは確実にあるかもしれないですね。でも理由としては弱すぎますね。そのためには大変過ぎます。他に、何かありますか。ぜひ教えてください。

-- 株を売りたいから。

大原 株を売りたいから。どうして株を売りたいのですか。

-- 市場の金が調達できるから。

大原 会社にですか?

-- 会社に。

大原 会社にお金が欲しいから。それもあるでしょうね。会社にお金が入ってくるということですね。上場すると何が変わるか。それはそうですね。顕著な例で言いますと、上場してお金が入ってきて会社が変わったというと、最近で言えばGREEですね。今は少し右肩下がりになってしまってリストラを進めているようで、フェーズが変わってきてしまいましたが、mixiに全く追いつけなかったGREEが上場して資金が大きくとれましたね。少なくとも40億円ぐらい資金調達しているはずです。そのお金で何をしたかというと、いろいろなことをされたと思いますが、外から見て明らかなのはテレビ広告を大量に打ったことです。皆さんも一般消費者として、ゴールデンタイムにGREEのゲームのコマーシャルはしばらく流れていたという記憶がおありかと思います。あれは、年間8億円から10億円掛かります。それくらいの予算を今持っていますと、1年間を通してゴールデンタイムで多くの日本人が、GREEのコマーシャル見たことあるよ、というぐらいの広告を出せます。上場前のGREEには、そこまでのお金はありませんでした。結果が出るかどうか分からないものに対して10億円弱の予算を組むということはできませんでした。上場してお金が入ってきたので、それを広告予算として使うことができたのです。そのことによって、ユーザー数が増えて、換金が相当増えて、収益が上がっていったということです。ですから、上場して資金調達をするというのは、確かに非常に大きなポイントであると思います。
 それについて言いますと、上場するとお金が入ってくることは間違いないのですが、上場してお金が入ってきたものの、その使い道がないという会社も結構あります。今、生中継中なので、どの会社かというのはさすがに言いづらいのですが。良い会社のことは言えるのですが。そういう会社は、探すと結構あります。上場して40億円、50億円、あるいは100億円資金調達しました。それがずっと残っているのです。なぜかと言うと、会社がもうかっているのです。設備投資する目的もそれ程ないのです。普通に活動していれば運転資金が出てきて、しっかり利益が出せるのです。40億円、50億円稼いでも投資する先がないというような会社も中にはあります。いずれにしても、資金調達をしたいということは、間違いなく上場する目的の一つであると思います。
 その他にありますか。お金が欲しい、飲み屋でモテる、それ以外に考えられることは何でしょう。大丈夫です、皆さん映っていませんから、心配しないでください。社会的信用と資金調達が出ました。他に出ませんか。それくらいであれば、上場しなくてもいいのではないですか。皆さん、上場したいと思わないのではないですか。誰もが上場したいと思っているはずです。

-- 採用コストが下がる。

大原 採用コストが下がる。そうですね。特に管理部門で、良い人材が採りやすくなるということは間違いありません。営業や開発という直接部門では、特に優秀な方は自分で会社を変えてやるという感覚がありますので、会社が小さくて自分が活躍すると会社の結果が変わるというような会社に入りがちです。もっとできる人は、自分でビジネスを始めてしまいますが。これが管理部門ではなかなか難しいのです。いわゆる、できる管理部門の方々というのは、会社の業績の数字はよく分かりますので、自分がいくら頑張ったとしても売上が上がらない、利益が上がらないことが分かります。そうしますと、どうしても安定した会社に入りたがります。当然ですね。自分が活躍できるところはどこかというと、目先の金で苦労しているような会社に行っても大して活躍できないですから。もちろん、銀行との交渉がうまい方であれば活躍はできるかもしれませんが、そのような大変な仕事をしている割には給料が少ない。会社にお金がないことは自分が一番よく分かっていますから。特に間接部門は、上場すると圧倒的に人が入りやすくなってきます。結果として、採用コストが下がるということもあると思います。お金をそこまではたかなくても、上場会社なのか上場会社ではないのかというところで言えば、上場会社は人材が採りやすくなると思います。会社の信用力はそれなりにありますので、そういう意味では採用コストが下がるというポイントはあると思います。
 他に何かありますか。上場すると何が変わるか。では、質問を変えましょう。上場すると何が変わるのか。今、良い点ばかり考えていただいていますが、悪い点は何か思いつきますか。良い点はまだあっていいのですが、良い点があまり出てこないようですので。「上場しなければ良かったのに」と思う点です。

-- 関連取引ができなくなる。

大原 関連取引ができなくなる。関連取引というと、どういうことですか。

-- 役員が他の会社をやることができなくなる。

大原 そうですね。やるのにとても面倒になりなす。全部公表しなければなりません。ですから、実質的にはできなくなる。とてもやりづらくなる、というのは間違いありません。

-- IRのコストが掛かってコスト高になる。

大原 IRというのはInvestor Relations、要するに投資家に対していろいろな情報を出さなければいけないということが決まっています。これが面倒くさいです。これも後で皆さんに見ていただきますが、適時開示項目というのがありまして、要するに何かあったらタイムリーに公表しなさいという項目があります。何かあると、全部公表しなければなりません。例えば、部長以上の人事を変えたら公表しなければなりません。M&Aをしたら公表しなければなりません。どこかの設備投資をしようと思ったら、公表しなければなりません。自分たちがやっている手の内を、外に出さねばなりません。それは投資家にとってはとても大事です。これからまとまった設備投資をする。どこからお金を持ってくるか、お金を借りる。そういうことを全部開示しないといけません。当然のことながら、3カ月に1回は業績発表しなければなりません。最近もうかっているのか、もうかっていないのか、3カ月ごとに皆さんに知れ渡ってしまいます。先ほどMBOの話がありましたが、特に今の日本の会社で、思い切って構造改革をしようと思ったら、リストラは避けられません。リストラは人を切るだけではありません。拠点の統廃合や仕組みを変えるなど、いろいろなことがあります。当然お金が掛かります。そうすると赤字になります。しかもそれは一瞬で終わることはなかなかできず、しばらく続きます。1年に1回の公表であれば2期連続赤字ぐらいで済むところが、3カ月に1回公表しなければなりませんので、2年赤字ですと8期連続赤字になります。それはかなりインパクトが大きく、株主が騒ぎ出したり、総会の実施が大変になったり、ライバル会社に自分のやっていることが全部知られたりということがあります。ですから、上場すると、自社の手の内をかなりのボリュームで開示しなければならないというデメリットがあります。大きい会社で上場していない会社というと、例えばそこにあるヨドバシカメラは上場していません。ですから、正直何をやっているのかよく分かりません。いくらもうかっているか、よく分かりません。でも、ライバルであるヤマダ電機、エディオン、ビックカメラというのはみんな上場していますので、調子が悪くなると全部その数字が出て、大丈夫なのかと騒ぎ出して、合従連衡をしていかなければなりません。落ち着いて経営ができなくなってくるというのが、上場をやめる、MBOをしたいという会社が増えてきた理由の一つだと思います。

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