これは実は、マイクロM&Aに限らず、すべてのM&Aに共通している項目です。

M&Aの成功＝売り手、買い手が納得して、取引が成功する状態、と今回は定義させてください。この場合、売り手がこのまま経営を続けていったとして、どのくらいの価値があるのか、という試算がまず重要になります。個人事業でやられている方はどのくらいの価値がつくと考えられますでしょうか。所得が税金負担後の500万円だとすれば、少なくとも３年分、できれば５年分くらいの価値はつけたいはずです。仕事と収入がなくなってしまうので、当然でしょう。

その値段を出せる方はどんな方なのでしょうか。上の例でいうと、2500万円を皆さんのビジネスにつけて、買い取ってくれる方です。もちろんお金をもっている方、会社なのでしょうが、それだけではありません。2,500万円の投資をするわけですから、それ以上、稼ぐ見込みがないと出すはずがありません。

すごく当たり前のことを述べていますが、実際にはこの見込みをまったくせずに買収をしてしまう方も少なくありません。成功の鍵は当たり前のことを当たり前にすることだ、ということはしっかり頭に叩き込んでください。

話を戻して、個人事業で500万円の所得のビジネスを2,500万円で売ることはとても大変です。仮に、オーナーであるあなたが何もしないで、500万円の所得をとっているのであれば、多少は値段がつきますが、そうでなく、店に出て実務をバリバリやっている場合、買った方は誰か店長をさせなければなりません。その場合には当然人件費がかかります。したがって、買う方からすると、年間500万円の利益ではなく、そこから店長の給料を引いた100万円とか200万円の利益にしかなりません。いったいいくらで売買されるのか、というバリュエーションの話は別の機会に詳しく説明をしますので、この辺でいったんやめておきましょう。

売り手がこのまま経営を続けていったとして場合の価値＜買い手が買収していったあとの価値

にならないと、理屈上はM&Aは成立しません。これが意外と難しいのです。とくにマイクロM&Aでは、オーナー＝ビジネスの価値になっているケースも多く、オーナーがいなくなるとむしろ価値がさがってしまうケースが多いのです。

それでは、どうすればその状態でも売れるのか、あるいはどういう案件を買えば成功確率があがるのか、次回少し突っ込んでお話をしていきます。

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。