事業承継について

事業承継を考えるにあたって【第1回】

「事業承継」という単語を聞いて、皆さんはどのようなことを想像されますか?御子息への社長交代、相続税への対応をどう考えるのか、漠然とした不安をお持ちになるのではないでしょうか。実は昨年、経営承継円滑化法という法律ができて、いろいろな面でこの事業承継を円滑化させようと国が対策を始めています。

なぜ今、国が力を入れているのか言うと、全国の多くの社長がそろそろ代替りを考えなければならない時期に来ているからです。日本の特に中小企業の社長は現在、60 歳前後の方が多いのです。実態として、代替わりを検討する企業が多くなり、国が具体的な施策を打ってきていますので、さまざまなところでこの事業承継に関する記事や講演がされています。しかし、その内容はどうしても専門的な手続に関することが多く、実際に事業承継を考えなければならない経営者の皆さんにわかりづらいものになっている、という話をよく聞きます。そこで、3回にわたり「事業承継」について経営者の皆さんに知っておいていただきたいことをできる限りわかりやすく説明をしていきたいと思います。

まず、「事業承継」とは何でしょうか?ちょっと難しいのですが、「財産権」、「経営権」、そして「人材」を社長である皆さんから、どなたかに譲り渡すことです。戦国時代においては、「城」を次の誰に任すかを決めておくことにほかなりません。NHKの大河ドラマ「天地人」では、上杉謙信が次の当主を決めておかなかったばかりに、影虎と景勝の争いになりました。

それでは、「財産権」からご説明します。「財産権」とは会社の株式などのことです。会社にはいろいろな財産があります。たとえば本社や工場、または店舗などの土地、建物、預金もあるでしょうし、在庫をかなり持っていらっしゃる会社もあるでしょう。言うまでもなく、これらは会社の「財産」です。社長のものではありません。しかし、社長の多くはご自分の会社の株式をお持ちのはずです。この株式というのは、難しく言うと、株式会社の社員たる地位」を表しています。ここでいう「社員」とは法律的な言い方で分かりづらいのですが」いわゆる「従業員」ではなくて、「オーナー」、「所有者」のことを指します。結局、株式を持っているということは会社のオーナー、所有者であることになります。社長がお一人で株式を全部持っていれば、会社の財産も結局は社長のものになりますし、株主が他にもいらっしゃれば、会社の財産は株主皆さんのものということになります。そして、この株式には価値があり、ご子息をはじめとしたどなたかに譲り渡そうとすると、税金がかかることになります。それゆえ、多くの方がまず気にされるのが、この「財産権」の譲渡という点になるでしょう。ドラマ「天地人」では「春日山城」を影虎、景勝、どちらに譲るかということです。

次に「経営権」ですが、これまた重要です。会社の株式を適正な手続を持って、適正な税金を払って譲り渡せば、会社の財産は譲り渡すことができます。しかし、経営そのものを譲るには時間がかかります。形式的には代表取締役を譲る、株式についても少なくとも50%以上、できれば3分の2以上を譲り渡すことが重要です。こういった形式的なこともしっかり固めておかないと、結局会社を譲り受けた方が自分の思うとおりの経営意思決定ができないので、十分に配慮をしておかなければなりません。さらに形式的なものに加えて、社内の役員、従業員との信頼関係をしっかりと構築する必要があります。これをきちんと構築するまでに時間がかかるようであれば、前社長は相談役のような形で会社に残り、信頼関係がしっかりできるようになるまで、サポートすることも考えられます。一方で出すぎてしまうと、いつまでも後継者が一人立ちできませんので、そこはぜひ我慢強く取り組んでください。上杉謙信が存在のうちは影虎、景勝どちらが当主となっても、家老以下の武士たちは言うことを聞かなかったでしょう。

そして最後に「人材」の譲渡についてです。会社の財産と経営を引き継ぐからには、当然、役員、従業員といった「人材」を引き継ぐことになります。創業者の方々は従業員の方々、そして家族の生活を守るということを命がけで実行してきたはずです。経営者を引き継ぐには、この心意気、そして実行力、その結果、彼らからの信頼を引き継がなければ、長期間にわたる会社経営を引き継ぐことは難しくなります。ドラマ「天地人」では、影虎と直江兼継が上杉謙信の意志を引き継ぎ、上杉家を守っていき、戦国、江戸初等の荒波をくぐりぬけていきます。

このように事業承継とは、単なる「相続」の問題では済まないことがたくさんあるのです。次回は、事業承継を考えるにあたり具体的にどんな準備をしておくべきかについて、具体的に説明を続けていきます。

(平成21年4月30日発行 ほうじん佐久への寄稿記事より)

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