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経営者が知っておくべき株式譲渡

こんにちは。
今日は「M&Aを検討する経営者が知っておくべき株式譲渡」というテーマでお話をしていきます。

はじめに、株式会社のスキーム、その方法の確認をしておきましょう。

株式譲渡では3者の関係する方、あるいは会社が出てきます。まず、売買の対象となっている会社を「対象会社」というふうに呼んでいます。

次に、買おうとしている方。これは個人の場合もありますし、法人の場合もありますけれども、対象会社を買おうとしている個人または法人のことを「買い手」というふうに呼びます。

「売り手」というのは、売ろうとしている会社そのものではなく、その株主です。オーナーである株主が、売り手ですので、ある会社を株式譲渡する場合、「対象会社」と「売り手」というのは別です。例えば、株式会社Aという会社だった場合、この売り手は株式会社Aではなくて、そこの株主になります。オーナー会社の場合というのは、株主が社長をやってらっしゃることが多いですので、オーナー会社の事業承継というような場合というのは「売り手」が代表取締役社長であって、かつ株主ということが多いですけれども、もちろんそれが分かれているというケースもあります。株式譲渡では「売り手」「買い手」「対象会社」この3者があるということは押さえておいていただきたいと思います。

取引は売り手と買い手の間で行われます。基本的には、株式を売り手から買い手に譲渡して、その対価としてキャッシュを支払う。こういう形が株式譲渡のスキームです。M&Aは、割合でいうとほとんどがこの株式譲渡のスキームになります。

念の為、事業譲渡のビデオ(http://ma-japan.info/archives/1320)も用意してありますので、詳しくはそちらもご参照いただきたいと思いますけれども、事業譲渡の場合というのは、売り手(対象会社)というふうになっていますけれども、会社の一部を直接買い手に売却しようという形になっていますので、事業を一部、対象会社の一部を切り取って買い手に移します。その対価の支払いは、会社に入ってくるということですね。例えば、会社の一部の資産を切り出して打ったのと同じような取引を事業譲渡と呼んでいます。

株式譲渡は、会社丸ごとその支配権を譲渡するというイメージだと思って下さい。

株式譲渡のメリットについてですけれども、全ての事業を一括で譲渡できます。会社丸ごとの売買という形になりますので、株式譲渡をしただけで、例えば従業員との雇用契約、これは契約しているのは対象会社ですので、株主が変わっても何にも変わりません。取引先との契約も全て会社との契約になりますから、事業譲渡とは異なって、全て会社に紐付いているものです。したがって、株式譲渡が成立した後に、特別新たに契約し直す必要はありません。

一方、事業譲渡の場合は、あくまでもオーナー、しかも契約対象となっている会社が買い手に変わってしまいますから、例えば従業員との雇用契約も結び直しをしなおす必要があります。例えばお店を賃貸で借りているとしても、契約する主体が変わってしまいますので、必ず賃貸借契約の巻き直しをしなければいけないということになります。取引先との基本契約も取引主体が変わってしまいますので、それを全て変えていかなければいけないというようなデメリットが事業譲渡にはあります。株式譲渡ではまとめて譲渡できる。これがメリットの一つです。

許認可も基本は会社に直接紐付いているものが多いですから、会社で取得した許認可については株式譲渡した場合は基本的には問題なく引き継げます。もちろん例外はありますので、個別具体的に検討しなければいけないですけれども、基本的に株式譲渡は引き継げます。ただ事業譲渡の場合は、そもそもその許認可を取っている会社が変わってしまいますので、これは新たに取り直しをしなければならないということになります。ですから、許認可が欲しくてM&Aを考えてらっしゃる場合は、基本的には株式譲渡で考えていかないと必要であった許認可が取れないということになってしまいます。

売り手に直接キャッシュが入り、税率も安いというのが株式譲渡のメリットその2です。

事業譲渡の場合は、事業を一部売りました、その売却したお金は会社に入ってきてしまいます。オーナーはまた会社とは別にありますので、会社からまたオーナーにお金を移さなきゃいけません。例えばこれを退職金で支払うことができれば、オーナー社長の給料は結構高くて、しかも長いこと社長をやってらっしゃれば税金は極めて低く済みます。しかし、まだ社長の給料もそれほど高くない、社長としてやっている期間も非常に短いということになると、退職金にかかる税金もそんなに安くありません。

さらに、そもそも会社に入ってきた事業譲渡による対価であるキャッシュ、これは法人税が普通にかかってしまいますので、利益がガツッと出ているとまず会社で法人税・住民税を支払わなければいけなくなります。そして今度は、オーナーである社長にお金を移す時にまた所得税を払わなければいけないという事になってしまって、結構お金が目減りしていってしまうことがあります。長いこと商売をやっていると、経営者である社長は会社に貸付をしているような形になっているというケースもありますから、それが結構あると、その貸付を返済するようなスキームを取ることができると税金がかからなくなったりもするのですが、基本的には事業譲渡はたくさん税金がかかってしまって、オーナーの手取りが減ってしまう可能性があるということは押さえておいていただきたいと思います。手続きも一旦会社に入って、それをオーナーに戻さなきゃいけないという面倒臭さ、煩雑さがあるということです。株式譲渡の場合は売り手と買い手が直接契約をしますので、オーナーに直接お金を入れることができます。そして、その税率も個人のオーナーの場合、20%強ですから、通常の法人税30%以上かかりますし、その後オーナーに配当なり、給与で支払をした場合には、さらに所得税もかかりますから、株式譲渡は事業譲渡と比較して、税金が安くすむといえます。これが事業譲渡のメリットです。

次に株式譲渡のデメリットについてです。会社まるごとの譲渡になりますので、手続きは楽といえば楽なのですが、帳簿にのっていない債務である簿外債務を引き継いでしまう可能性があります。分かりやすい簿外債務の例は残業代の未払いです。しかも会社を譲り受けた後の残業代の未払いが発覚するというケースが分かりやすいです。借入金も会社全体の譲受けですから、当然引き継ぐことになります。
そういうものを引き継ぎたくない場合には、事業譲渡を選択すればよいということになります。こうしたメリット、デメリットをしっかりと理解したうえで、スキームを決めていってください。

次に、大きい会社のM&Aの場合、過半数や2/3超の議決権をとっておけば、ほとんどのことが決められますので、子会社化するといっても、50%超、たとえば50.1%などの議決権だけをもっていることが多いのです。では、非上場会社同士のM&Aの場合で50%超の議決権を持っていれば、安泰かというとそうでもありません。1株でも株をもっている外部株主がいれば、株主総会を実際に開かないといけません。100%子会社の株主総会は実際にはほとんど書面決議で行われています。3%、5%を保有する株主が残っている場合、株主総会を実際に開催する必要があるのはもちろんのこと、会計帳簿の開示を求める帳簿閲覧権などもあります。これは大変です。嫌がらせには十分使えるのがこのような権利です。したがって、非上場会社を買収する場合には、100%完全買収することをお勧めしています。
気をつけなければならないのは、少数株主が残ってしまう場合です。注意をしておいてください。

このように株主譲渡にはメリット、デメリットがあります。デメリットの1つである簿外債務の危険性があったり、過去の財務に関する問題があったりする場合には、株式譲渡を使わずに事業譲渡を使う方法ももちろんあります。

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