M&Aのハウツー

M&A HARD THINGS

M&A HARD THINGS

今回は”M&A HARD THINGS” というタイトルで話をいたします。
つまりは様々な方がM&Aで苦労されているので、そのエッセンスをお伝えいたします。

1.アメリカの大型案件がいくつも失敗していると報道されている
最近もアメリカの大型案件のM&Aが失敗していると報道されています。“ファイザー”、“フォックス”、“コムキャスト”など、その他の会社が大型のM&Aの案件を実施しては、失敗を区繰り返しているということが新聞記事の報道です。

そもそも「M&Aの成功確率はどれぐらいか?」というと、経営コンサルタントの大前研一氏は「だいたい5%だ」とご本人の体験値(体感値)からお話しされています。100件のM&Aを行って5件ぐらい成功すればよいのでは?という事です。大前氏は、それだけ低い成功確率であるため「ある程度M&Aの数をこなすしかない」というようなことも良く仰っています。

別の話として、東京工業大学の井上教授が“日本のM&Aの成功確率はおよそ5割”であると、データからそのように主張されています。
私の感覚値では井上教授と大前氏の間ぐらいの“1割から2割ぐらい”は成功と言えるのでは?と感じております。いずれにしても、大半が成功するという事“ではない”というのが過去の経験則から言えそうです。

2.2014年におけるM&Aの成約件数は2,300件程度
つづいての話ですが、2014年において日本におけるM&Aの成約件数というのは2,300件ぐらいとのことです。
この内、5%しか成功しないとなると115件、10%で230件ですので、「M&Aはかなり大変なことになっているのでは?」ということが1つあります。
私は上手くいかないM&Aには比較的共通点があるのでは?と思っております。これからM&Aを実践される方は“基本的な事”は抑えておいて頂きたいと思います。
一番重要な事ですが、組織にとって「M&Aは何のためにしなければならないのか?」という事を改めて考え直して頂きたいと思います。

3.M&Aありきの組織では、M&Aが目的化する
私はM&Aそれ自体は良いが、それが目的となってはいけないと思っています。
何かをするために、例えば新市場の開拓するために、或いは新しいビジネスを始めるために、「ゼロから始めるよりも既存ですでに成立しているビジネスを買おう」とか、ユーザー数を一気に増やそうという事で、既に沢山のユーザーを抱えているサイトあるいは運営会社を買うというような目的が必ずあると思います。
但し、この事が現場に落ちてくる間に、トップマネジメントは明確な目標を持って意思決定をしたのかもしれませんが、組織が出来て、担当部長が出来て、担当者が出来て1年2年経ってくると、“M&Aをすることが目的”となってしまいます。 
皆さんは「そんな事あるの?」と思うかもしれませんが、大半の大企業はこのようになっています。“M&Aが目的となってはいけない!”これはトップマネジメントである皆さんがM&Aを考えていかないといけなく、現場に任せていては目的化してしまうのに決まっています。

現場のM&Aの担当者の気持ちになって考えてみてください。例えばM&Aの担当の長(担当部長)になったとします。1年経ち2年経ち、“買えた案件が1つもない。”とします。これは担当者だったら焦りますよね。これは会社が担当を「結論は1件買いました。」ということで評価すべきではなく、結果として1年間2年間動いてみたが、そもそもの目的に合った案件が出てこなかったのであれば、その時点でやむを得ないのです。

その段階で、M&Aの担当者(責任者)に責任を取らせるのではなくて、“何が悪かったのか?”と言う事を考えなければならない訳です。そもそも、皆さんが欲しがっているような案件は世の中に存在していないかもしれません。そんなに都合の良い案件は存在しないのかもしれない。
或いは、存在はしているがアプローチの仕方が間違っていた場合もあるかもしれません。典型的なアプローチの仕方の例は、M&Aの業者をネットでも電話でも良いですが片っ端から連絡をして「良い案件が有ったらもってこい」というのが“最悪のアプローチ”です。

“良い案件の定義がない。”皆さんの会社によっていったい何が良い案件なのか定義が無ければ、業者は案件を持っていきようも有りません。
我々の経験則上ですが、「良い案件が有れば持って来い」と仰った会社や個人は買ってくれません。なぜならば“買う事が目的”だからです。
何が欲しいのか?という事を明確にするのが、M&Aで失敗しないための大きな前提となると思ってください。

4.誰が経営するのか?
次にある程度話が進みました。「M&Aをします。」となったとしますが、“いったいその買収する会社や事業を誰が経営するのでしょうか?”
M&Aの担当部署(窓口)は経営企画になっていることが多いと思います。但し、買収をした後に実際に経営企画の担当者が経営をするということは、あまり聞いたことがありません。
実際に経営するのは“事業部門のどなたか”となります。実際に経営する事業部門の方(担当者の方)は、実はM&Aが晴天の霹靂であるという事が多いです。
事業部門の方にM&Aが決まるまで、大した情報を知らされることが無く、M&Aが決まりました。「あなたが経営者です。明日から経営してください。」
「経営というのはそんなに簡単なものだったのか?」と思わざるを得ないような状況が、かなり多くの企業で行われているのが現実です。
そのような現実の中では、M&Aの成功確率が低いというのは“やむを得ない”のではというのが私の感想です。

5.シナジーってなんだ?
怖いのが“シナジー”という言葉です。シナジー効果というのはM&Aを語るのに、切っても切り離せない言葉だと思います。
「シナジーっていったい何なんだ?」というと「“1 + 1 =3”になるようなことです。」と仰る方がいるかもしれませんが、“1+1=3”というのはイメージとしては良く分かりますが、みなさんは具体的に1+1=3になったことを見たことが有りますでしょうか?

“1 + 1 =3”になるからシナジーがあって、M&Aをするのだといった抽象的な考え方では、シナジーは出てこないです。具体的にどんなビジネスとどんなビジネスを組み合わせるので、結果として例えば“販路が広がる”とか“取扱いの商材が増える”とか、或いは“ユーザーさえ獲得できればうちには売る商品がある”など、具体的な戦略や戦術が見えていなければ、AとBを組み合わせても2では無く3の効果などは出てきません。

ですので、この会社を買うのに「シナジーがあるから買いましょう」といった抽象的な話しで進めていてはダメなのです。シナジーという言葉は安易に使うべきでは無く、いったい具体的にダレがどうやっていくら使って、結果として成果が出ることを見込んでいるのかというのをしっかりと考え頂かないと、成功は覚束無いと思って頂いて良いと思います。

今回、私が説明したことは極めてシンプルな事で、みなさんにとっても「そんなこと当たり前でしょ」と思われることばかりだったと思います。但し、組織の中でM&Aを始めようということになると、このような事が良く起こってしまうのです。
特にトップマネジメントの方、或いはM&Aの責任者をされる方にとって見れば、改めてこういう事を,一生懸命している最中(プロセスの中)で、M&Aが目的化してしまうのです。
そもそも、M&Aは“何かを達成するための手段である”と言う事を忘れないでおいてもらいたいと思います。

6.相手の立場になって考えられるか?
M&Aの交渉を進めていく中で良く考えて頂きたいことに、“相手の立場に立って物事を考えられているのか?”ということがあります。
“売りたい”という方(売り手)が例えば「1億円投資をしたので、それを回収したい」と言い、「1億円でないと売りたくない」としたとします。
しかし、買い手は過去の投資について事業評価はされません。「いったい将来このビジネスは、どれだけの期待値があるのか?」と要するに「将来どれだけ稼げるのか?」という所で会社や事業の価値が決まります。
いくら売り手が1億円の投資をしたからと言って、将来の利益やキャッシュフローが1円も見込めないものであれば、売却価格は1円にもなりません。
これは買い手の立場になってみればすぐにわかると思います。会社や事業を“売ろう”とされている方は、一度冷静になって買い手の立場になってみて頂ければと思います。

7.きちんと経営すれば、利益が出るのでその前提で買ってほしい
まず「きちんと経営していないのは、どなたでしょうか?」それは、売り手である皆さんなのです。
これは非常に乱暴な言い方かもしれませんが、私はもう聞き飽きました。どれだけの経営者の方々からこの言葉を聞いたでしょうか。この場合も自分の事ではなくて、相手の立場に立って「もしみなさんの会社を買うとしたら、どのように判断するのか?」と考え見てください。「1億円投資してきたから、1億円で買ってほしい」、「キチンと経営すれば、2000万円利益が出るはずなので、それを前提に価値を付けてもらいたい」と言ったとしても、買い手は「まずは、キチンと経営してください」と言うに決まっていますよね。
是非、相手の立場に立って考えられるかというポイントも抑えて押させておいてもらいたいと思います。
極めて当たり前のことを言ってきましたが、M&Aをやっていく中で“当たり前のことが当たり前ではなくなっていくという事が現実ですので、改めてこのような事を押さえて頂きたいと思います。

具体的にはこのようなことの積み重ねで、多くの方が会社や事業を売却するのを断念したり、買収するのを断念したりしています。
中には買収した後にやはり上手くいかなかったというケースも沢山出ています。悪いことは日本人は隠したがるため、話が外に出てきません。さすがにM&Aというのは、情報機密を守るということが大事ですので、個別具体的な情報が出てきませんし、我々も出すことができません。しかし、根底に流れる基本的な要素というのは、今、お伝えした内容でカバーしているはずですので、それほど難しい話しではないのです。
M&Aは特別だと考えるのではなく、当たり前のことを当たり前にやっていく、このことを改めて抑えておいて頂きたいと思います。

8.簡単に改善できる企業は大赤字、経営が難しい企業は大黒字で高くて当然
これは結構ポイントとなることなのですが、「良い会社を安く買おう」というのは難しいです。簡単に改善できる企業は大赤字で債務過多の場合が多いです。
要するに当たり前のことを当たり前に出来ていなくなっている会社ですので、こういう会社は業績が悪い訳です。業績が悪い会社は、普通は売却金額が安いです。あるいは「タダでも良いから引き取ってほしい」という事になります。
素晴らしい経営者がいらっしゃって、黒字で財政状態も良いといった会社は売却される時には高くて当然なのです。このような会社を買収しようとした際に、買収する会社が良く言う事に「デューディリジェンスをしました。すごい良い会社です。なぜならば社長が素晴らしい。」という所までは良いのですが「社長そのまま経営してください」と言うのです。
いったいあなたの会社(買い手)は何をするのですか?と私は言いたいのです。勿論、買収する(買い手)に様々な技術があるとか、あるいは極めて優れた営業部を持っている。一方、売りたい会社(売り手)は、技術力はあり製品は素晴らしいが営業が弱い。
このようなマッチングはあると思いますが、そうではなく新規事業を始めようとM&Aをしよう。良い会社を見つけた。社長も素晴らしい。買収後も引き続き社長に経営を任せる。「これはM&Aをする意味があるのでしょうか?」良く考えて頂きたいです。
それに、皆さんがいったい何のためにM&Aをするのか?という事を改めて考えて頂きたいです。

最後に「いったいあなたは何がしたいのか?」皆さんの会社は何をするためにM&Aをするのか?それにキチンとした答えが出るのであれば、おそらくM&Aで失敗は無いと思います。
こんな単純な質問に対して、明確な答えが出ないと言うのであれば、そのM&Aの将来は暗い物になってしまうかもしれません。
極めてシンプルで当たり前のことを当たり前にやるという事を念頭に置いておいて頂きたいと思います。

本誌は、M&Aを売り手、買い手、アドバイザーが三方良し、となるのが当たり前の世界の実現を目指しています。そのためには当事者が正しい情報を得て、安心して相談のできる場が必要です。その実現に向けて本誌は、日本M&Aアドバイザー協会で、以下のサービスやセミナーを提供しております。
                                                                                                                                                                                                  
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